コロナ禍スペイン。世界的に知られたバルセロナのラ・ラムブラ通りが荒涼とした「砂漠」化

HARBOR BUSINESS Online / 2020年11月26日 15時31分

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10月30日のラ・ラムブラ通り。コロナの影響で昼夜問わず人がごった返していた世界一有名なストリートがこの状態である (Photo by Joan Valls/Urbanandsport/NurPhoto via Getty Images)

◆ゴーストタウンのようになった「世界的に有名な通り」

 世界で最も有名で、昼夜を問わず人通りが多い通りの一つ、バルセロナのラ・ラムブラ(La Rambla)通り。

 この世界的に知られた通りが、コロナパンデミックの影響で砂漠のようになっている。コロナパンデミックの影響で、この通りに面しているおよそ800軒にものぼるバル、レストラン、土産物店などは、ひっそりと静まり返り、シャッターを下ろしている店が目立つようになってしまった。

 観光客の激減に加えてバルとレストランが営業停止になっているのが追い打ちをかけるかのようになおさら人通りを少なくしている。

 この通りで働いている人はおよそ1万人いる。彼らの今後の職場への復帰が懸念される。何れは活気を取り戻すはずではあるが、それがいつになるのか誰にもわからない。活気を取り戻すまでに職場が存在しているか全く不透明でもある。

◆かつては1日30万人が行き交っていた

 地元電子紙『El Nacional』(11月22日付)が掲載した2013年の統計によると、ラ・ラムブラ通りは年間で延べ1億人から1億2000万人が通行していたそうだ。即ち、一日に延べ30万人が通行していることになる。それがこれまで1万人の雇用を支えて来た源だ。

 現在それが“砂漠化“している。何しろ、昨年だとスペインへの外国からの訪問客は8400万人で、しかも、外国からの訪問客の多くが必ずバルセロナを訪問している。今年はその25%程度しかスペインを訪問していないということであるからバルセロナへの訪問客も激減していることになる。

 また同紙は、これまで32年間この通りで花屋を開いているホセ・モヤさんの売上が8割落ちていることを報じた。彼は17軒ある花屋の7軒が既に廃業していると指摘したという。そして「月末に出費を僅かでも減らすために店を開けているだけだ。しかし、毎月赤字を埋めねばならなくなっている」と取材に答えたそうだ。

 キオスクで食べ物も販売しているフロラ・マリアさんの場合は売上が止まって食べ物の賞味期限を気にしながら「もう死んだ状態だ。これらすべて賞味期限が切れる。どこを見てももう完全に全損だ」と取材で語ったそうだ。

◆計画性のない政府と、観光業依存の経済という2つのリスク

 ラ・ラムブラ通りのすぐ近くのエル・ゴティック地区のレィアル広場に足を踏み入れると殆どすべての店がシャッターを下ろしているという。そこで開けている僅かの店のひとつにカフェテリアArt i Saがある。テイクアウトの食べ物をサービスしているので開けていることができる。この店のオーナーマリソル・ヒメネスさんは「レィアル広場商店親交連合会」の会長でもあるが、彼女はエル・ゴティック地区が観光業に依存して生計を立てていたことを指摘した。また、それに加えて市庁舎や州庁舎で働く職員が利用していたが、「彼らが今はテレワークの自宅勤務をするようになった」と語って、観光客も公務員もいなくなって顧客が消滅してしまったことを指摘した。

 彼女は11年前からこのカフェテリアを経営しているという。昨年は最高の売り上げを記録したそうだ。それが一挙にCovid-19で急落したということで、「今は惨憺たる状態だ」と彼女は取材に答えた。

 彼女は、中央政府そして州政府が取った措置に計画性がないということと、十分な時間を持っての予告もなく店の営業を規制してきたということを強く批判している。7月15日から営業できる時間帯を制限した。そして10月になると24時間の営業停止で、唯一テイクアウトの店だけ営業できるとした。これらの措置を時間を持って事前に知らせていれば材料の仕入れも損失を少なくするように仕入れが出来ていたはずだった、ということだ。

 政府に計画性がないということで、従業員にどのような対応をすればよいのかもわからない状態だった。その上、これらに関係なく光熱費や水道料金そして家賃と出費が重なって来る。

 彼女の説明によると、この広場で1軒は廃業することに決めて、あと2軒がどうするか検討しているそうだ。

◆商店だけではなく地域全体が「貧困化」

 更に同紙はラバㇽ地区の町内会のアントニオ・マルティネス会長のコメントも加えている。それによると、この地区でバルやレストランで勤務している人はこの地区に住み、彼らの主婦が清掃などの仕事をして収入を稼いでいた。それが飲食業は閉めねばらなくなり、主婦も清掃の仕事がなくなって失業し一家に収入のない家庭が増えているそうだ。その影響で家賃が払えず毎日2-3件の立ち退き事件が起きているそうだ。このような清掃の仕事の場合は正式に社会保障費を払っての雇用は稀であるから休業補償も受けられないということになる。

 コロナパンデミックでバルやレストランの営業に制限が設けられた今年3月から現在まで8か月間営業売上が赤字の状態が続いているということで、それに耐えることができる経営者はそれほど多くはいない。彼らの多くは開発金融公庫などに融資を依頼しているはず。しかし、それも何れは返済せねばならない。

 マルティネス会長が指摘しているように、「バルセロナはこれまで観光のバブル景気で生計が成り立っていた」ということだ。今年の決算として経営者が最後に望みを託しているのがクリスマスキャンペースセールスである。それに応えるべく、カタルーニャ州政府もついに11月23日から飲食業の再開を許可した。但し、室内も野外も利用できるテーブルの3割まででシカも夜9時半までしか営業できないということになっている。これでは赤字は必至である。それでも僅かでも売上があるということが救いでもある。

 残念なのは政治家や官僚の中で飲食業に携わった経験のある人が誰もいないということだ。それを経験していれば恐らくより適切な措置を取っていたはず。何しろ、経営者にとって売上がない状態が長期続くというのは非常に辛いことである。

 このような状態はますます拡大傾向にある。同紙の同月23日付記事ではカタルーニャの空き店舗が35%までになっていることも報じられている。

<文/白石和幸>

【白石和幸】

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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