NYダウ平均株価が3万ドルを突破。なぜコロナ禍で史上最高値を更新したのか?

HARBOR BUSINESS Online / 2020年12月1日 8時33分

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写真/朝日新聞社

「皆さんをお祝いしたい。NYダウ平均株価が3万ドルを突破。史上最高値だ。しかもパンデミックの最中に起きたのだ」

 11月24日、米国のトランプ大統領はわずか1分間の会見を急きょ、ホワイトハウスで開いた。政権移行の手続きに入ることを容認する姿勢は見せているものの、いまだにバイデン次期大統領への祝福はないままだが、在任中にダウ平均が3万ドルの大台に乗ったことがよほど嬉しかったのだろう。

◆史上初NY株3万ドル突破!バブル崩壊へのカウントダウン

 しかし、新型コロナウイルスの感染再拡大に見舞われる米国は、一日当たりの新規感染者数が連日10万人を超え、死者は累計で約26万人。’20年7~9月期の実質GDP成長率は前期比33%と急回復していたが、新たなロックダウンにより、直近の新規失業保険の申請件数は約78万件と市場予想を上回り、2週連続で増加している。

 景気の先行きには不透明感が強まりながらも、米国株はダウ平均にとどまらず、S&P500やハイテク銘柄中心のナスダックも史上最高値を更新した。

 こうした株価と実体経済との乖離は広がり、すでにバブルに突入しているとの声も聞こえるが……。みずほ総合研究所チーフエコノミストの長谷川克之氏はこう分析する。

「まずは製薬大手のファイザーやモデルナなどでワクチンが供給段階に入ったことへの期待が大きい。効果や早期に普及するかはまだわからないが、長いトンネルの先にうっすらと光が見えた。

 そして、大統領選を終えて、政権移行が進むなか、FRB(米連邦準備理事会)は’23年までは現在の実質ゼロ金利政策を継続すると発表。12月にはさらに金融緩和を拡充する見通しで、ジャブジャブのカネ余りは続くが、投資先は限られている。米国の10年国債の利回りは1%を下回っており、債券市場に投資しても収益は上がらないので、お金は株式市場に集まっていきます」

◆バブル?バブルじゃない?専門家の中でも意見が真っ二つ

 また次期財務長官に前FRB議長イエレン氏の起用が固まると、金融政策と財政政策の連携が強化されるとみて、投資家たちのなかにはさらなる株高を期待する楽観ムードも漂う。ただ、長谷川氏はすでに「歴史的に割高な水準」と指摘する。

「’00年のITバブル崩壊を予見し、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のシラー教授が考案したCAPEレシオという指標があります。景気循環による影響を調整した株価収益率(PER)で、その株が割高かどうかが判断できる。

 割高か割安かの分岐点は25倍程度だが、現在の数値は33倍です。ITバブルの44倍ほどではないが、リーマンショックの28倍を超え、1929年の世界大恐慌とほぼ同じ水準。これだけではバブルと判断できませんが、懸念が高まっているのは事実でしょう」

 米国株躍進の象徴的な銘柄はGAFAM、そして株価が年初来6倍を超え、11月24日、時価総額5000億ドルを突破した電気自動車のテスラだろう。トヨタの時価総額24兆円の2倍以上の規模だが、販売台数ではトヨタの1000万台に対し、テスラは50万台にも届かない。期待感が高すぎるようにも感じるが、米国株に詳しいモトリーフール・ジャパンの加賀章弘氏は「必ずしも割高とは言い切れない」と話す。

「トランプ大統領は選挙対策のために、低賃金層の給料以上の失業手当を配りました。ロックダウンで時間とお金を持て余していた若者が、スマホで株取引を始め『ロビンフッター』と呼ばれるようになる。彼らはプロが割高として敬遠する銘柄でも気にせずに、カッコいいからとテスラを買い、株価が上昇した一つの要因に。

 今後は、米中を含めた主要国は脱炭素社会の取り組みを本格化しようとしており、政策の後押しもあり、電気自動車は想定より早く普及していくでしょう。

 電気自動車に付随して、蓄電事業や自動運転ソフトウェアといった新産業も立ち上がっていくので、電気自動車のエコシステムは、エンジンを核とする既存の自動車産業よりも大きくなる。その大産業の先頭群をテスラが走っており、トヨタの時価総額を超えても、必ずしもバブルとは言い切れない。第4次産業革命を迎えている今、オールドエコノミーの評価に使われていた指標で、新しい企業を判断するのは適切ではなくなってきています」

◆バブルは弾けてから初めてバブルとわかる

 一方で、最新刊『アフターバブル』(東洋経済新報社)を上梓したばかりの小幡績・慶應義塾大学大学院准教授はまったく異なる見方だ。

「実は、年初に米国株バブルは崩壊寸前だった。それがコロナショックによる前代未聞の金融緩和で、延命され、さらに膨張している……。最近では、上昇する理由がないのに、市場参加者が株価を上げたいがために、自分に都合のいいように情報を解釈するバブルの末期症状が見られます。

 例えば、大統領選の直前は『大統領、上下両院ともに民主党が制するトリプル・ブルーになれば、政策が一気に進む』と株価が上昇。だがその後、トランプ優勢の調査結果が出ると、『ビジネス重視のトランプは株式市場にプラス』と株はまた上がった。そして結果は、バイデン勝利も『上院は共和党が過半数で、ねじれ議会のため、公約に掲げている富裕層への増税は実現できないだろう』と、またもやダウは上がり、史上最高値を更新……相反する材料にもかかわらず、株価は上昇し続けたのです。

 これは行動経済学でいう、都合のいい情報だけを集めてしまう『確証バイアス』にほかならず、この状態をバブルと言わずして何と言うのか」

 しかし、いつバブルが弾けるかは誰にもわからない。小幡氏が続ける。

「バブル崩壊の予想はどんなプロにもできない。だが、アマチュアがバブルと聞くと恐れるのに対して、プロはバブルにもわれ先に乗っていく。彼らが『さすがにもう……』とある種の満腹感を覚えたとき、意味もなく株価は下がり始めます。

 ’87年、世界で同時に株が暴落したきっかけとなったブラックマンデーも、明確な理由もなく株価が下がり、売りが売りを呼んで大暴落に繋がった」

 ダウ3万ドルは単なる通過点か、それとも……。

◆ワクチン失敗がバブル崩壊のきっかけに?

 ワクチンへの期待が株高を支えているため、もしワクチンの効果に疑問符がついたり、強い副作用が発見されれば、株価は急落する可能性が高い。

 本来ならば治験に数年はかかるところを大幅に短縮しているため安全面の不安は大きく、接種がどこまで広がるかも不透明だ。コロナバブルもワクチン次第か。

<取材・文/週刊SPA!編集部>

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