news23菅首相インタビューを信号無視話法分析して痛感した、菅総理の「ズレ」

HARBOR BUSINESS Online / 2020年12月28日 8時32分

写真

TBS NEWSのYouTubeチャンネルより

◆桜を見る会をめぐる菅総理の責任

 前編の記事に続いて、2020年12月21日にTBS系列「news23」で放送された菅義偉総理の約21分間の単独インタビューを取り上げる。本記事では、残り8分間(13問目〜18問目)の質疑を一字一句漏らさずにノーカットで信号機で直感的に視覚化していく。具体的には、信号機のように3色(青はOK、黄は注意、赤はダメ)で直感的に視覚化する。(※なお、色表示は配信先では表示されないため、発言段落の後に( )で表記している。色で確認する場合は本体サイトでご確認ください)

 また、当日の映像はTBS NEWSのYouTubeチャンネルで、全文 文字起こしは筆者のnote「【全文 文字起こし】 news23 菅義偉首相インタビュー2020年12月21日」で公開されている。

信号無視話法分析の結果については、前編で述べたように、首相の見解を問うような緩い聞き方の質問もあったため、青信号の割合が3割弱あるものの、赤信号と黄信号が7割弱を占めるという結果になった。

 今回記事では、新型コロナウイルス対策に関する質問が中心だった1〜12問から一転、国会の話題に移っていく13問目以降のやりとりについてさらに見ていきたい。

◆「桜を見る会」をめぐる菅総理の責任について

 前編の記事で紹介した1問目〜12問目では一貫して新型コロナウイルス対応に関する質問が続いたが、ここから話題は国会へと移っていく。まず、安倍晋三前総理の国会招致を巡って再び注目が高まる桜を見る会について質問される。その質疑は以下の通り。

小川彩佳氏:

「さて、ここからは来年までこう続いていく、その他のお話しを伺って参りたいんですけれども、国会ですよね。やはり注目は。」

【13問目】

星浩氏:

「まず、いくつかそのテーマがあるんですけど桜を見る会、ここに来ていろいろその安倍総理の国会招致とかいう話がありまして、もちろん、そのー、これは国会で決めることなんですけど、菅総理について私2点お聞きしたいのはですね、一つはやっぱり7年8ヶ月官房長官やられて、安倍総理の側にいらっしゃってですね、この桜を見る会の公私混同といいますか、その部分について総理ちょっとここは問題ですよという、そのー、諫言をする、うー、ことができなかったのかどうかってのは1点と。もう一つ、あのー、総理ご自身もですね、国会で、あのー、安倍総理が答弁したことが正しいんだと断言されたこともあったりして、総理ご自身の国会答弁に対する責任とあるんですけど、この2点についていかがでしょうか?」

菅総理:

「あのー、桜を見る会、こう長年続いてきていますよね。そういう中で、えー、あれだけ広いところですから、多くの人に来て頂いたのがいいなという、まあ、そんな感覚でやってました。まあ、それ自身は、あー、そこで、まあ、今、テレビ映ってますけど、出席者挨拶をして、これー、海外のそれぞれの高官の方とかですね、来てたんですけれども、そういう意味で特別その目立ったというのは、それは無かったと、気が付かなかった、無かったと思います。(赤信号)

 まあ、それと私の国会の答弁ですけど、やはり、まあ、政治家というか、その閣僚ですよね、政府運営は自分の国会の答弁にはやはり責任を持つべきだ。そこはそういうふうに思っています。ただ、今まだ刑事告発がされて、えー、捜査が行われている最中ですから。どういうふうになるか分かりませんので、そこが国会の答弁について、やはり責任を持つべきたということは私は、あのー、閣僚になってからずっとその上で今日まで来てます。(青信号) 」

【14問目】

星浩氏:

「そのー、政治家にとっての責任という言葉、非常に重い言葉だと思うんですけど。そのー総理がその責任を果たすという場合、どういうことを考えられてるんですか?」

菅総理:

「いや、ですからその答弁を正しかったかどうか分かりませんから。私、正しいと思っていますから。そこが、どのようになるかということによって違ってくるだろうと思います。(青信号)」

 13問目では、官房長官として安倍前総理に諫言できなかったのか、「安倍前総理の答弁は正しい」と断言してきた菅総理自身の答弁責任の2点が問われているが、13問目の1段落目の回答は以下のように論点をすり替えており、赤信号とした。

【質問】公私混同を諫言できなかったのか

↓ すり替え

【回答】公私混同に気づかなかったのか

 また、「広いところで多くの人に来て頂いたのが良い」という悠長な言葉は、いまだに菅総理の問題意識が甘いことを示しているように思う。

 続く2段落目にて「国会答弁に責任を持つべき」と菅総理が回答したので、次の14問目では具体的にどのように責任を果たすのかを問われたのだが、菅総理の回答は「答弁が正しいと思っている」という驚くべき内容であった。質問には回答しているので、青信号としたが、このインタビューが行われた12月21日に衆議院調査局は安倍前総理の桜を見る会の国会質疑における虚偽答弁が118回に上るとする調査結果を発表している。もはや別の世界に住んでいるとしか思えないほどズレている。

〈参照:東京新聞 記事「安倍前首相の「虚偽答弁」は118回 桜を見る会前夜祭巡り衆参両院で」〉

◆日本学術会議の任命拒否

 次に日本学術会議の任命拒否について質問される。その質疑は以下の通り。

【15問目】

星浩氏:

「例の学術会議の問題です。私もその言論にずっと携わってきた人間としてですね、1つ気になるのは総理がこれは、そのー、内閣の人事権の1つだということなんですけど。そのー、たとえば経済政策で総理がその役所の局長を変えるというようなことであればですね、もう経済政策がうまくいかなかった場合は政治家が責任とればいいわけです。学問についてはですね、例えばこの今言ってる学説が10年後に実は正しかったというようなこともあるわけで学問にとってその政治家のその人事のあり方はその局長の人事とちょっと違うんじゃないかと私は思うんですけど、そこはどういうふうに考えてらっしゃいますか? 」

菅総理:

「あのー、私もそこはですね、この学術会議について私ずっと疑問に思ってたのはですね、特定の大学にものすごく偏っているんですね、出身校を含めて。これ1949年にできましたから、そこからなかなかまだ変わってないじゃないかなと思ってました。 (赤信号)

 それで、その会員の人というのは210人いらっしゃるんです。その他に協力会員ですかね、が2000人いて、この人たちの枠、枠の中に入っていなければ、推薦をされない仕組みになってるんですよね。会員になれない仕組みなんですよ。(黄信号) 」

【16問目】

小川彩佳氏:

「今回、任命拒否された慈恵の先生などは、ま、慈恵の方というのは1人しかいらっしゃらなかったわけですよね。」

*任命拒否された6名の一覧から東京慈恵会医科大の小沢隆一教授を小川氏が指し示す

菅総理:

「いや、あのー、全体の中で出身大学とかいる中で、やはり、その2200人の方と何らかの繋がりがなければなれないんですよ。それで、そういう研究生と学者と言われる方、日本に90万人。ですから、辞める方がもう推薦して辞める時にいけるとか。あのー、やはり私はここはですね、私、自民党総裁選挙の時に、えー、縦割り、既得権益、悪しき前例主義、これを打破したい。まあ、そういう思いでした。まあ、そういう中でこの90万人いらっしゃる中で、限られた人の中から、こう毎年毎年選ばれてくることについては私はそこが疑問を持ってました。(黄信号)

 まあ、そういう中でこの国会で、えー、答えは答弁控えさせて頂きます、こう言われましたけど、任命すると、公務員なんですよね。ですから、公務員なぜ、理由よく聞かれるんですけど、こういう理由じゃダメだから任命しませんでしたとは言うべきじゃないと思っています。他の公務員と同じでありますから。(黄信号)

 ただ、この学術会議に国民から理解されて、よりよいものにしていきたいという思いは、あー、思ってまして、まあ、梶田さん、新しい会長、梶田さんとは、そういう中でですね、理解されて、国民から理解されて、より良いものにしましょうということで一致しているんです。今、そうした方向に向けて、井上担当大臣が、あー、今取り組んで、まあ、そういう状況です。(黄信号) 」

星浩氏:

「あのー、この6人の任命拒否の問題と学術会議のあり方と、私はやや論点のすり替えだと思います。まあ、これはおそらく来年も議論が続くということだと思います。」

◆星浩氏も思わず「論点のすり替え」と指摘

 まず、15問目の1段落目で菅総理はこれまでの国会答弁と同様に日本学術会議における大学の偏りを主張しているが、これは認識誤りであり、赤信号とした。任命拒否された6名には、会員がゼロである東京慈恵会医科大の小沢隆一教授や会員1人の立命館大の松宮孝明教授も含まれている。偏りを正すという菅総理の説明は完全に矛盾している。この矛盾は国会質疑でも既に指摘されているが、菅総理は頑なに矛盾した説明を続けている。

〈参照:東京新聞 記事「学術会議の構成、最多の東大2割未満 首相「偏り」繰り返すも地方が半数超」〉

 次の16問で小川彩佳氏は会員ゼロである東京慈恵会医科大の教授が任命拒否されている事実を明確に指摘するが、菅総理はそれでも頑なに質問と直接関係のない周知の事実を延々と繰り返しており、黄信号とした。

<15問目 2段落目、16問目 1段落目>

学術会議の推薦方式

<16問目 2段落目>

学術会議会員は公務員であること

<16問目 3段落目>

梶田会長との取り組み状況

 最後に星浩氏が「論点のすり替え」だと指摘した通り、学術会議について問われた15問目〜16問目に対して、菅総理は一言も回答できていない。そして、ここまで質問と回答が食い違っているのに長々と喋り続けられる菅総理は、質問の意味が本当に理解できていないのではと心配になる。

◆コロナに勝った証としてのオリンピック!?

 最後に、衆議院の解散タイミングと国民へのメッセージについて質問され、菅総理の絶望的なメッセージによってインタビューは締めくくられる。その質疑は以下の通り。

【17問目】

星浩氏:

「最後の質問ですけど、来年いよいよ衆議院の任期が切れてきますよね。一方でこの1月18日からの通常国会も課題が山積してまして、なかなかその通常国会中に解散のタイミングを伺うってのは難しいんじゃないかという気がしますけど、その辺はどう考えてますか?」

菅総理:

「まあ、いずれにしろ、任期はもう10ヶ月しか無いわけですから、それとやはり一番大事なのはコロナの問題だと思いますよね。ここはやはり、完全に拡大防止をできてないと私はやるべきじゃない。仕事がしたいって、こういうことをずっと言ってますけど、まあ、そういう状況の中でですね、対応していく。まあ、こういう風になるだろうと思います。(青信号)」

【18問目】

小川彩佳氏:

「お時間が過ぎ始めているんですけど、コロナに関して、今月初めの総理の会見では今必要なのは安心感と将来の希望であるというふうにおっしゃって、まさにその通りだと思うんですね。で、そうした安心感がある将来の希望を感じられる言葉というのを国民も聞きたいというふうに思っていると思うんですが、最後に総理ご自身の言葉でお聞かせ頂けないでしょうか。」

菅総理:

「これはですね、えー、私は国民の命と暮らしを守るということをずっと言い続けています。まあ、そういう中でですね、やはりワクチン。ワクチンが接種されるようになってくればですね、見通しは出てくるようになると思うんです。ですから一日も早く、そうしたことができるように政府として全力を挙げて、今準備をしている。まあ、そういう状況であります。そしてオリンピック・パラリンピックを迎えることができる。コロナと戦ってですね、勝った証しとしてのオリンピック・パラリンピックにしたいと思いますし、そうしたことでまた、あー、コロナ禍の前の普通の暮らし、一日も早く取り戻すことができるように一生懸命頑張っていきたい。このように思います。(青信号)」

小川彩佳氏:

「菅総理、今夜はどうもありがとうございました。」

◆あらゆる点で見られた菅総理の「ズレ」

 17問目は衆議院解散タイミングについての考え、18問目は国民へのメッセージという緩い聞き方であったため、全て青信号としたが、「安心感と将来の希望が感じられる言葉」を求められて、出てきた言葉は「コロナに勝った証としてのオリンピック・パラリンピック」。菅総理の回答は最後の最後までズレたままインタビューは終了した。

 このインタビューを総括すると、菅総理はとにかくズレている。

 質問に対する回答がズレており、日本語でのコミュニケーションが困難なレベルにある。

 さらに、事実認識がズレている。(英国からの入国者数、学術会議の大学の偏り、等)

 挙げ句の果てには、国民感情ともズレている。(感染対策失敗への反省、東京五輪開催への執着、等)

<文・図版作成/犬飼淳>

【犬飼淳】

TwitterID/@jun21101016

いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。

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