再々加速した第3波エピデミック。日韓を襲う危機的状況

HARBOR BUSINESS Online / 2020年12月29日 8時33分

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模範国だったが、第3波で状況が悪化している韓国・ソウルの街並み LegoCamera / Shutterstock.com

◆第3波エピデミックSurge再々加速!

 本記事は、今年最後のHBOL連載記事になると思いますが、予定ではIHME(保健指標評価研究所)による日韓米の予測と評価をご紹介して終えるつもりでした。しかし、本邦のエピデミック統計が急激に悪化したので今回は速報的な記事となります。

 前回までに本邦では、COVID-19エピデミックが11月に破滅的増進を示したものの、11/13に突然報じられたGo To Eat Point事業終了*後、直ちにエピデミック拡大が抑制され、その影響が統計に表れる11/21以降、残念ながら日毎新規感染者数は減少しませんでしたが、日毎新規感染者数の倍加時間(以後「倍加時間」)がそれまでの20日程度から70日程度へ、もっとも遅いときには1年程度に大減速するほど勢いが衰えていることを示しました。

〈*新型コロナウイルス感染症対策分科会が11/12に開催されているが、議事概要などしか公開されておらず透明性が著しく低い〉

 その後11/21-23の「我慢の三連休」を契機に12/7から本邦におけるエピデミックSurgeは、再加速に転じていました。再加速と言っても倍加時間は本記事執筆中に評価したところ70日程度であり、新規感染者の増加を人為的に抑制する時間的余裕は十分にありました。

 この調子ならば、クリスマス、年末年始、成人式、共通試験など不特定多数の人が移動し、集まるイベントの影響如何では2月から3月にたいへん厳しいことになるものの、対応する時間、エピデミックを抑制する時間は辛うじてあり、最悪の事態は避けられるものでした。

 ところが、12/20の週半ばから状況は一変しました。

 筆者はほぼ毎日Our World In DATA(OWID)の統計更新を追っていますが、12/24更新の12/23新規感染者数が増えすぎている=目立って加速し始めている事に気がつきました。勿論1日だけなら統計の乱れの可能性もありますが、12/27更新の12/26新規感染者数まで傾向は一貫してエピデミックSurge急増進を明確に示しており、これは7日移動平均、1週間変化率と言った初動に重要な統計にも明確に表れています。

◆統計で比較する日本、韓国、台湾

 ここで、本邦の現実を見るためにも、まず、日毎新規感染者数の推移をRaw DATAと7日移動平均で見てみましょう。対象は、本邦、韓国、台湾です。全てモンゴル・中国・ミャンマー以東の東部アジア・大洋州・謎々効果傘下国です。また、三国ともに島国と扱って良いです*。

〈*本邦と台湾は勿論島国であるが、韓国も北朝鮮との38度線非武装地帯を挟んで隔離されており、事実上の島国と扱って良い。島国としての隔離の程度は本邦が最も高く条件が良い〉

 日韓台は、三カ国共に事実上のクラスタ戦略をとっていますが、これまでの結果は下記の様に明確に分かれてきました。

台湾:初動とその後の取り組みによって大成功をして世界の理想

韓国:二度の右派宗教団体による大規模アウトブレイクの奇襲を喰らいながらも制圧に成功し、世界の模範

日本:あらゆる点で誤り失敗し続けて来ており失敗を正すことも出来ずスウェーデンと並んで大失敗の見世物

 これら三カ国は、秋の波にどう対処出来たのでしょうか。なお人口は、有効数字二桁で台湾2400万人、韓国5200万人、日本1億3千万人です。三国共に超高齢化が進んでいます。

 日本、韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の7日移動平均を見ると、12/18(金)を起点に本邦の日毎新規感染者は大きく増加に転じています。とくに指数関数的増加を示していることは深刻で、11月上旬の深刻な挙動が戻ってきています。とくに深刻なのは、政府が何もしないし何もできないし、何をしたいのかさっぱり分からないことです。

 一方で世界の模範国である韓国でも状況は深刻で、第三波では、すっかり本邦に追いついてしまっています。但し、12/14(月)からのK防疫体制の大幅強化*の効果が期待出来ます。韓国は、感染者のPCR検査、隔離、接触追跡が迅速であり、統計への反映もウィルスとの接触後10-12日程度と早いです。従って、そろそろK防疫体制強化の効果は統計に表れている可能性がありますが、見極めにはあと数日を要します。実際にはK防疫体制強化の前から危機的状態は盛んに報じられており、市民の行動を抑制していたと考えられます。実際エピセンターであるソウル市域では11月中旬以降、移動傾向が明らかに抑制されています。

〈*ソウルなど首都圏の防疫レベル、2.5段階に引き上げ(韓国) 2020/12/14 ジェトロ(添付資料に社会的距離の段階について詳細あり)、ソウル市民なら誰でも新型コロナの検査が可能な臨時選別診療所を追加で設置 2020/12/15 ソウル市:韓国では、接触追跡が困難になりつつあり、クラスタでなく市中感染が増え始めている。結果、クラスタ戦略の破綻があり得るために、一般無料検査を急拡大している〉

 韓国では、12/12以降既に日毎新規感染者が横ばい気味であり、K防疫強化の効果が順調に現れれば、首の皮一枚で収束に向かう見込みがあります。失敗した場合は、ソウル市域において初のロックダウンに相当する社会的距離確保3段階の導入となり、韓国社会には大きな痛手となります。

 次に一週間変化率、二週間変化率を見て傾向(トレンドの推移)を見てみましょう。ここでは台湾を除きます。と言うのも台湾は、人口約2400万人に対して253日間国内新規感染者のゼロが続き*、数人の入国者が検査陽性となるだけで変化率が大きく変動し、日韓の変化が見えにくくなるためです。

〈*《新型肺炎》接触者を隠ぺい、エバー航空パイロットに罰金/台湾 2020/12/23 ワイズコンサルティング、衛生福利部(台湾厚生省)の発表文 2020/12/22〉

●国内で8ヶ月以上ぶりに生じた新規感染を報じる中華民国(台湾)厚生省による広報

●感染者の行動追跡による接触可能性のある場所と時間を伝える中華民国(台湾)厚生省による広報

 日韓共に一週間、二週間変化率は思わしくなく、9月以降、韓国は本邦に一週間遅れで追っていましたが、本邦の11月下旬からのエピデミックの急減速によって韓国は本邦に肉薄していました。その間韓国は11月と12月に社会的距離の強化をし、漸くエピデミックの拡大速度を落とすことが出来ています。

 12月に入り本邦は、前回指摘した11月三連休によるエピデミックの増進も一過性の山で済んだと見られますが、年の瀬になって再度エピデミックの増進が始まっています。一進一退を繰り返しながら結局ぶり返しているというのが本邦の傾向です。倍加時間は、70日程度に減速していたものが、暫定値で40日程度まで加速しており、このままでは1月上旬にも倍加時間は30日を割り込む恐れがあります。11月の最悪期が倍加時間20日程度でしたのでこれはたいへんに深刻な値です。

 韓国は、11月中旬から12月上旬にかけて倍加時間が10日から20日という破滅的な期間が1カ月近くあり、世界の模範が本邦に追いついてしまいました。一方で12月下旬に入りエピデミックが収束に向かう兆候があり、順調に推移すれば新規感染者数が減少に転じる可能性があります。

 日韓共にこの年末年始から一月にかけて収束か否かの分かれ目と言えます。台湾は、今のところ水際防衛とクラスタ戦略が十分に機能していると思われます。

◆第3波エピデミック増進再々加速の原因は忘年会か?

 これまで日本と韓国の傾向が余りにも似ているため、気象要因での変化ではないかという読者からの指摘もあり、過去三ヶ月間の気温と照合してみましたが、気温の低下と共に日韓共に第3波エピデミックの増進が見られる事は確かですが週ごとの変動への関連は、現時点では見られませんでした。

 本邦における直近のエピデミック再々加速の12-14日前は、公務員のボーナス支給日(12/10)と忘年会集中日(12/11)でした。今年は、忘年会をしない企業が多いという建前ですが、国から地方に至るまで与党関係者の忘年会やパーティーが露見し、そもそも首相の渾名が「パンケーキ」から「ステーキ」に変わる有り様*ですので筆者は忘年会が原因ではないかと強く疑っています。実際、夜の銀座の賑わいなど、とてもとても忘年会自粛など浸透していないという報告が筆者には寄せられています。筆者の住む地方都市でも夜の繁華街では深夜までカラオケの音と酔っぱらいの歓声が響いています。

〈*菅首相、ステーキ会食でマスクせず「二階氏の仲間が集まる忘年会」2020/12/18 東京新聞〉

 本邦より遙かに厳しいパンデミックに苦しんでいる米欧では、バー、カラオケ、屋内営業レストランなどでの食事や集会とパーティは、最悪のスーパースプレッダ・イベントと見做されています。本邦で政府推奨のマスクパカパカで会食など本邦以外ではありえないことです。

 この外食産業の売り上げとエピデミックの相関は、総務省統計局が公開するサービス産業動向調査と、一般社団法人日本フードサービス協会が公表するJF外食産業市場動向調査でかなりの程度見えますが、残念ながら現時点では、10月までの速報値しか分かりません。

 但し、10月は明確にGo To Eat事業によって外食産業の売り上げがかなりの程度回復していることが分かります。今回必要なのは同年前月比の売上推移と実際の売上高ですので、総務省の速報待ちとなります。

◆死者数にみる日韓台比較

 日韓では、米欧に比して死者数はそれほど多くなく余り注目してきませんでしたが、夏の第二波で15人/日程度であった本邦の日毎死者数はいつの間にか50人/日程度に悪化しています。韓国も最近では20人/日に近づいており、韓国では死者は出にくいという事でもなくなっています。一方、台湾では殆ど人は亡くなっていません。

 本邦は、11月中旬までの感染者数の急増が11月下旬以降に死亡数へと反映されていましたが、死者数の二週間変化率を見れば分かる様に12月下旬に入り小康状態となっています。

 韓国では、11月中旬以降の新規感染者数激増の結果として、12月中旬に入り死者数の急増となっており、強い危機感を持たれています。

 百万人あたりの累計死亡数で見ると日韓台三カ国では日本を2/3程度で韓国が追い、台湾では殆ど死亡していない状況が継続しています。

◆日韓台三国を謎々効果諸国、米欧と比較してみる

 モンゴル・中国・ミャンマー以東の東部アジア・大洋州諸国では、米欧中東などに比して百万人あたりの感染者数が概ね1/100を基本としており、結果として人口あたり死亡数も1/100を基本としています。このことは、3月頃から東アジアの謎と指摘されてきており、筆者も2月末頃からこの謎を指摘してきています。筆者はこれを「謎々効果」と名付けています。”Factor X”と名付けている人たちもいますが、中身は同じものです。

 ここで謎々効果域内での比較と米欧との比較をしてみましょう。

 謎々効果域内では、日韓共に死亡率中位群を占めていたのですが、第三波エピデミックは両国共に深刻で、既にインドネシア、ミャンマーに続き日本、韓国が三位争いをしている状態です。

 一方で米欧と比較すると日本、韓国共に原因は不明であるが感染しにくいという謎々効果の結果、米欧諸国に比して1/20程度の百万人あたり死亡数で済んでいます。但し致命率(CFR*)は、日韓共に米欧の標準的な値と変わりませんので、何らかの理由で感染率が米欧並みに高くなれば謎々効果は消えてしまいます。

〈*CFR(Case Fatality Rate)は、医療と防疫で一般に用いられるもので、診断付き死亡者数を診断付き感染者数で割ったものである〉

◆IHME(保健指標評価研究所)など海外研究機関による予測と評価

 12/23にIHMEによる長期予測が更新されました。本邦は、現状維持(ワクチン接種あり)で2021/04/01までに4万9千人が死亡するという悲観的な予測となっています。今回の更新では、これまで2021/04/01迄に千人〜二千人程度であった韓国での累計死亡予測が1万9千人と大幅に引き上げられたことがとくに目を引きます。

 あまり知られていませんが、韓国はこれまでにK防疫体制がたいへんな成果を挙げてきたためかワクチンの調達で大きく遅れています。青瓦台(大統領府)が人口の8割強に相当する4,400万人分を確保するとしてきたワクチンは、アストラゼネカとの契約分75万人分しか確保されていないという報道が最近なされています。韓国政府は、この報道を明確には否定できておらず、年末の韓国社会を揺るがしています。

 K防疫体制の効果が揺らいでいる韓国では、ワクチン供給体制についてたいへんな問題となっており、韓国政府も対応に追われていますが、透明性の欠如を筆者は感じます*。

〈*[社説]「ワクチン議論」で核心をつかず的外れな答えをする韓国政府 2020/12/24 hankyoreh japan〉

 IHMEは、12/16更新の予測までは、韓国ではK防疫体制が有効に機能しており、日本に比較して一桁死者は少ないと評価してきましたが、12/23に死亡者数の予測を大きく引き上げました。一方で韓国ではK防疫体制強化によるエピデミックの衰えが見えてきていますので今後の如何によってはまた評価が大きく変わる可能性があります。

 本邦については、世界唯一・ジャパンオリジナルの検査抑制によって既に統計自体が壊れており例えば重要指標である検査陽性率は、全く無意味な数字を出し続けています。これは、分母に相当する検査数を主として分子にあたる陽性者数も厚生労働省による不作為でデタラメになっているからです*。

〈*本邦では、行政検査、医師会検査、自由検査に分かれているが、医師会検査では保健所が検査陽性者しか受け取らず、膨大な検査陰性者のデータは事実上捨てられている。また自由検査に至っては、検査陽性者が医師に診断を受けた上で医師が保健所に報告しない限り統計に組み込まれない。結果として陽性率は極端な過大評価となり、感染者も無症状感染者を中心に、せっかく検査で判明しても大量に統計から漏れることとなっている〉

 現在、検査業者や一部自治体などの独自の発表では、東京都区部での検査陽性率は1〜2%であり、これは社会の実態をもとにした諸外国との比較でも妥当です。検査陽性率が公式統計の7%前後でなく1〜2%と言うことは、吉報ではありますが同時に本邦のCOVID-19統計は、完全に壊れていて、よく分からない数字を吐き出し続けているという事を意味しており極めて深刻です。

 このことはIHMEなどの海外研究機関にはとっくにバレており、極めて厳しい評価となっています。

 今後本邦では、忘年会効果、クリスマス効果、年末年始効果、帰省効果、連休・成人式効果、共通試験効果、入試効果とエピデミックを大きく増進するスーパースプレッダ・イベントが目白押しです。さらに感染力が段違いに強力な変異ウイルスが全世界に蔓延しつつあります。

 このため積極的な公的介入がなければ、既に強い圧力をウィルスから受けている医療機関はますます圧迫されて行くこととなります。医療がウィルスに圧倒されれば、社会は急速に機能を失い大きな犠牲が出ることとなります。その先例として旭川市と大阪府市が注目されます。

 今年の年末年始は、家で同居家族のみと静かに祝うことが市民に求められますが、同時に政府には、これまでのジャパンオリジナル・人類唯一無二の国策エセ科学・エセ医療デマゴギーを全面撤回し、関係者を「人道に対する罪」で、厳重処罰の上でまともな防疫政策を年末年始抜きで構築することが求められます。

◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ35:迫り来る地獄6

<文/牧田寛>

【牧田寛】

Twitter ID:@BB45_Colorado

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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