カジノ住民投票を否決した、横浜市会と林市長の横暴

HARBOR BUSINESS Online / 2021年1月13日 15時31分

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たっきー / PIXTA(ピクスタ)

◆19万筆以上の署名を集めながら、わずか3日間の審議で否決された横浜カジノ住民投票

 2021年1月8日、19万筆以上の署名を集めた「横浜市におけるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致についての住民投票に関する条例の制定」は横浜市会で否決された。直前の昨年11月までは「住民投票の結果を尊重する」「条例の議案にはニュートラルな立場で意見を付ける」などと定例記者会見で繰り返し発言した林文子市長は、舌の根も乾かぬ昨年12月下旬に反対意見を付けて議会に議案を提出。年末年始の慌ただしい時期を狙ったかのように年明け直後の1月6日から僅か3日間という強行日程で審議を行い、最終日の1月8日に議会で過半数を占める自民・公明の市議によって否決された。つまり、「カジノの是非を決める住民投票」は、そもそも実施すらされないことが議会によって決定した。

 約1年前の過去記事「このままでは横浜カジノは止められない。住民投票とリコールの足の引っ張り合いを防ぐための提言」でも指摘した通り、住民投票は市長が反対意見を付議できる上に議会で否決できるため、カジノを推進する立場の自民党と公明党が過半数を占める横浜市会において、この展開は1年以上前から予想できたことだった。だが、住民投票条例をめぐる林市長および自民・公明の想像以上に強引な進め方には改めて驚かされた。もはや横浜市会の議会制民主主義は既に崩壊したと言っても過言でなく、横浜市民である筆者としては今後の横浜市の先行きに大きな不安を抱いた。

 本記事では、1月8日の採決直前に住民投票条例の否決に反対(=住民投票を実施すべき)の立場で討論した無所属・井上さくら市議の討論内容を紹介しながら、横浜市会の異常さを以下4点に分けて解説していく。

1.林文子市長の公約「市民の意見を踏まえて方向性を決定」の反故

2.地方自治や民主主義すらも否定した市長意見

3.IR整備法基本方針で定められた合意形成の無視

4.スケジュール優先で事業者公募を始める危険性(長期契約リスクと損害賠償責任)

*記事中の動画リンクが表示されない配信先で読んでいる場合、筆者のyoutubeチャンネル「赤黄青で国会ウォッチ」で視聴できます

*井上市議の討論全文は筆者のnote「【文字起こし】カジノ住民投票の条例制定 討論 2021年1月8日横浜市会」で公開中

◆林文子市長の公約「市民の意見を踏まえて方向性を決定」の反故

 まず、討論の冒頭において井上さくら市議は2017年の市長選挙前後の林市長の発言の矛盾や公約反故を指摘している。以下、その内容を抜粋して紹介する。(下記の動画リンクの2分39秒〜)

井上さくら:

「今日も多くの議員が指摘し、この住民投票実施の直接請求を行った市民の皆さんが憤り、私も繰り返し申し述べてきたように4年前の選挙で市長は「カジノは白紙」と喧伝し、公約で『市民のご意見を踏まえ、方向性を決定』と記載をして、徹底してカジノIRを争点から遠ざけました。自らの選挙に不利になると考えたからこそ、カジノIRは白紙として市民の判断から逃げ、その後も市民に問うことなく、IR導入の準備を進め、ついに当時の申請スケジュールの中でギリギリのタイミングであった一昨年の8月、突如としてIR実現を宣言しました。

 今日まで一貫して市民の民意から逃げながら、一方でカジノIR導入方針は決まったこととして、その手続きを強引に推し進めようとしている。そのことに市民がなんとか待ったをかけようと膨大な時間と労力。そして、このコロナ禍において、大きなリスクを負いながら直接請求という手段を取らざるを得なかったんです。冒頭申し上げた通り、新型コロナ感染症における緊急事態宣言下において、この新型コロナの脅威に向き合い、市民の命を守るための議論に集中できない原因を作った責任をまず市長には自覚して頂きたいと思います。」

 井上市議の討論はいったんここまでにして、内容について解説していく。

 林市長の2017年の市長選挙公約は今も林市長オフィシャルサイト内で公開されており、「政策編 10のお約束」の9点目「国際交流・観光・MICE・文化」(リンク先資料のP39)にはっきりと以下のように記載されている。

“「IR(統合型リゾート)の導入検討

依存症対策やIR実施法案など国の状況を見ながら、市として調査・研究を進め、市民の皆様、市議会の皆様の意見を踏まえたうえで方向性を決定 」“ (林市長 選挙公約資料より)

 市民の意見を聞く絶好の機会である住民投票に反対意見を付議したことは、この公約を反故したことに他ならない。また、多くのメディアが報じたのでご存知の方も多いと思うが、2017年の市長選挙の際は「カジノは白紙」と言いながら、2年後の2019年8月に一転してカジノ誘致を表明したことは記憶に新しい。しかも、誘致を表明する僅か1ヶ月前までの記者会見では依然として「白紙」発言を繰り返しながら、誘致表明会見では実現に向けた資料が全て揃っているという確信犯ぶりを見せつけた。

*この市長発言の変遷については、下記の動画リンク参照

◆地方自治や民主主義すらも否定した市長意見

 住民投票条例には首長が意見を付議する規定となっている。この市長意見を巡っても林市長は幾つもの問題行動を起こしており、それらを井上さくら市議は順に指摘している。以下、その内容を抜粋して紹介する。(下記の動画リンクの4分10秒〜)

井上さくら:

「さて、今回の住民投票条例実施のための議案、特に条例制定についての意見案についてです。この意見案では4つの理由を挙げ住民投票実施の意義を否定しています。

 まず住民投票一般について、国の地方制度調査会での議論を引き合いに住民投票の位置づけの難しさなど記載し、また法的拘束力のないことと実施コストの問題を抱き合わせるなど、そもそも基本的な住民自治への見識を疑わせます。

 さらにIR整備法で手続きが定められているから、住民投票を実施することには意義が見出し難いと主張していますが、言うまでもなく、IR整備法で例示されている手法以外の方法を取ることはなんら妨げられておらず、これを以って市民の求める住民投票を否定することは自治体としての主体性を毀損することになります。

そして4点目の代表民主制が健全に機能しているとして住民投票実施が議会での議論を棚上げするとの認識は、代表民主制と市民の認識や議論、行動を切り離す住民自治と民主主義にとってあまりに危うい考え方だと言わざるを得ません。

 住民投票を行う意思が市長に無いということは確かに分かりますが、だとしても、なぜこんな、かえって住民自治への見識の無さ、民意というものへの偏った見方。地方自治や民主主義という価値と、これを多くの犠牲を払って築いてきた先人への敬意を全く感じさせない文章。IRの是非を超えて、自治体としての立脚を忘れているようなことをなぜ書いてしまうんだろうと。今後、横浜市の地方自治体としての発信力に傷がつくのではないかと心配になるほどです。

 また、事前に市長が記者会見で語っていた「住民投票の結果を尊重する」あるいは「条例についてはニュートラルな気持ちで」などの発言ともあまりに乖離しています。

 私はこの意見案がどこでどう作成されたのか、どのような問題意識や議論があって、また市長自身の意見はどうであったのかを確認しようと、この意見案策定に至る会議録、決裁文書、一切を資料請求しました。ところが、出てきたのはA4の紙1枚。右肩に令和2年12月23日。これは住民投票の直接請求が実際なされた日ですが、その日の市長説明資料とあるだけで、最終的に議案に付されたものと一言一句違わない文章でした。

 市長説明資料とは書かれていても、その会議の議事録もなく、市長がどのような考えを示したのか。それまでの自らの発言と整合が取れないことをどう調整したのか、誰が出席をしたのか、草案は誰がつくったのか。何も記録に残っていません。

 40年ぶりの市民の直接請求による条例制定という大変重要な問題で、議論のプロセスは全く明らかにされず、市長をはじめとする庁内で真剣な議論がされているのか疑わざるを得ません。」

 井上市議の討論はいったんここまでにして、内容について解説していく。

 まず、問題となっている林市長の意見は以下のようなものであった。

<林市長 意見の概要(横浜市会 令和3年第1回臨時会 議案提出一覧資料より引用)>

(1)法律に基づく直接請求がなされたことは、市民の皆さんの関心の表れとして受け止めている。今回求められている「住民投票」は、国の地方制度調査会において検討された経緯があるが、種々の検討すべき論点があり制度化には至っていない、位置付けの難しいもの。

(2)個別の法律に基づいて実施される住民投票には法的な拘束力があるが、条例に基づく住民投票には法的拘束力はない。住民投票の結果は、政策決定にあたっての考慮要素の一つだとはいえるが、その実施コストのことも十分考える必要がある。

(3)特定複合観光施設区域整備法が地域における十分な合意形成を求め、様々な手続を定めている中で、加えて住民投票を実施することには意義を見出しがたい。

(4)さらに、IRについては、これまで様々な観点から議会において議論が積み重ねられており、住民投票を実施することはこれまでの議論の棚上げを意味する。IRの全体像は事業者とともに作成する区域整備計画において具体化していくので、市民の皆様に丁寧に説明を行うとともに、議会における議論を基本とし、法定の手続を着実に進めていくことが重要と考えている。

 何としても住民投票は実施したくないという強い意思があらわれている上、井上さくら市議も指摘しているとおり、現行の地方自治や民主主義の制度そのものを否定しているかのような危うさを感じる文章になっている。

 しかも、明らかに反対と受け取れる意見を付議しておきながら、記事冒頭で述べたように林市長は昨年11月の記者会見では「ニュートラルな立場で意見を付ける」とまで言っていたわけだから、その二枚舌ぶりには呆れるほかない。

*首長は賛成もしくは反対の意見を付議する規定のため、そもそもニュートラルな意見を付議することは規定上は不可能であり、記者会見に参加した記者がその点を指摘しても頑なに「賛成反対といった直接的な表現はしない」と林市長は述べていた。

 そして、この市長意見の意思決定プロセスが完全に不透明である点は、2019年8月22日のカジノ誘致表明記者会見に至る1ヶ月間のプロセスがブラックボックスであったこととそっくりだ。林市長はこうした不透明な意思決定を確信犯かつ常習犯として行なっている。

*詳細は過去記事「問題だらけの横浜カジノ補正予算案。明るみになった12の事実」参照

◆IR整備法基本方針で定められた合意形成の無視

 次に、IR整備法基本方針に明記されている「地域における十分な合意形成」が全くなされていないことを井上さくら市議は指摘している。以下、その内容を抜粋して紹介する。(下記の動画リンクの7分33秒〜)

井上さくら:

「今回、今日でわずか3日間ですが、この条例案の審議の中で、少しその背景を見る思いをしました。昨日この議案が審査された、政策・総務・財政委員会を最初から最後まで傍聴いたしました。その中で、「住民投票を否定するなら、いつ、どのようにして民意を得るのか少なくとも地域における十分な合意形成を確保すべきである」とIR整備法 基本方針で明示してある。これをどう担保するのかという質問が各委員から繰り返し出されました。これに対して平原副市長が主に答えていましたけれども、その内容はIR法に例示された県との協議会、公聴会、最後の議会議決。この言葉に終始し、その上で、なんと

『IRは国家的プロジェクトでありその枠組みに従って、なんとか間に合わせなければならない。国の申請期間、国のスケジュールの中でなんとか実現したい。』

 まあ、これが本音なんだなというふうに私は感じました。IR法でさえ、地域における十分な合意形成を確保すべきであると明記しています。それはこの事業が長期にわたり、かつこれまでにない大規模な投資を求めるものであるからこそ、将来を含めた事業の安定のために地域における十分な合意形成が不可欠だと言っているわけです。

 合意形成とは一人でできるものではありません。相手があることです。そして、合意形成が条件であるということは、つまり合意されなければその先には進めないということです。にもかかわらず、平原副市長らの幹部の認識は、国に申請することはすでにもう決まった前提であり、それを何とか今のスケジュールの中で間に合わせなければならない。ひたすらその意識で突っ走っているのだということがこの発言からも明らかです。

 法定の合意形成すら、今の横浜市はアリバイとして通過できれば良いとした考えておらず、確かにその認識では民意とは、ひたすら自分たちの決めた進路、スケジュール、ギリギリのスケジュールを邪魔する障害でしかないということになるんでしょう。民意というものも、首長、行政組織の外に分かれたり、むしろ対立する存在と捉える意識が、普通ならこんなふうに書くかという市長意見のベースにあるということを私は感じました。」

 井上市議の討論はいったんここまでにして、内容について解説していく。

 ここで問題になっているIR整備法の基本方針は観光庁Webサイトで公開されており、基本方針概要資料の「第2 IR整備の推進」にはっきりと以下のように記載されている。

<基本方針概要資料より引用>

“IR整備の推進に当たっては、IR事業の公益性や、地域における十分な合意形成を確保。“

 井上さくら市議も指摘しているとおり、平原副市長を始め、林市長や自民党・公明党の市議たちは国が定めた法律でここまで明確に書かれた方針すらも無視して、カジノ実現に向けたスケジュールを最優先して暴走していることが分かる。

◆スケジュール優先で事業者公募を始める危険性(長期契約リスクと損害賠償責任)

 最後に、横浜市民に今後数十年にわたって暗い影を落とすであろう恐ろしいリスクを井上さくら市議は指摘している。以下、その内容を抜粋して紹介する。(下記の動画リンクの10分04秒〜)

井上さくら:

「先ほど来、民意を測るには、これはこの住民投票条例を否決をしようと呼び掛けた議員の方々もおっしゃっていますけれども、今は材料がない区域整備計画ができてからだということをおっしゃっています。しかし、それでは遅いんだということを私なりに少しお話させていただきます。

 今の林市長や副市長たちの何よりもスケジュールありきの、この姿勢から考えられるのは、この住民投票条例議案が今日議会で否決されれば、次はIR事業者の公募を時間をおかずに開始するということが予定されていると思われます。事業者公募を開始するということは、これまでの横浜市が自分たちの中で検討していますという段階から明らかに一線を画した新たな段階に入るということです。それは横浜市として条件や選考基準を示し、その条件のもとにIRという巨大事業の共同事業者として長期にわたる巨大な契約を交わす。その前提として事業者たちに投資を行わせるということになるからです。このIRカジノ事業者のプロポーザル。1兆円規模の開発ですから、このプロポーザルのプランを出すだけでも億単位のコストを事業者たちにかけさせることになり、走り出させるということになります。民間事業者たちに億単位の投資をスタートさせるということは、当然横浜市もそれに見合った責任を負うことになる対外的な責務を負うことになるということです。

 先月この事業者公募の基本資料となる実施方針と募集要項案の骨子が常任委員会で示されました。この文書により、事業期間は35年。先ほどから、私たちはいないだろうと。議場にいないどころか、この世にだって居ないかもしれない。その長い35年という長期にわたること。また、事業者として選定されたものと横浜市は選定されれば速やかに基本協定を締結しなければならない。つまり契約関係に入るということが書かれています。

 さらに国に選定された以降のこととして、カジノIRを共同で運営する際のリスク分担、事業の継続が困難となった場合の措置なども記載されています。この事業の継続が困難となった場合の一つに、市による区域整備計画の認定更新不申請があります。IRカジノ事業者、区域整備計画の認定。これは国に認定されたとしても10年間という期限付きの許可であるため事業者と交わす35年契約の途中で必ず先に期限を迎えます。その時には国に更新を申請し、認められなければ事業を継続することができなくなります。更新申請の際には、改めて市議会の議決を得る必要があります。もしその時に横浜市が方針を変更し、もうカジノは要らないという市長になっていたり、あるいはその時の市議会がこの計画ではダメだと否決をする。すると国からの認定も無くなり、IRとしての事業はそこでできなくなります。ところが、こうした更新の不申請はこの公募、実施計画によると、なんと5年前に事業者に対して通知することとされ、なおかつ事業が止まることによる損害を横浜市がIR事業者に対して賠償をすると。損害賠償を横浜市側が行うという規定も盛り込まれているんですね。

 この規定は将来にわたる横浜市政を、市議会の判断を、市民を縛ることに繋がります。こういう重大な規定を盛り込んだ事業者公募を民意を問うことなく、市民合意なく開始することは許されません。

 区域整備計画を策定するまで待たなければというのは、既成事実をとにかく積み上げて、この申請に駆け込んでしまおうという、そういう話に過ぎないと思います。』

 井上市議の討論はここまでにして、内容について解説していく。井上さくら市議が懸念しているIR事業者との契約規定に関するリスクを時系列で図解すると下図のようになる。

 要点を以下に列挙する。

・IR事業者との契約期間(35年間)> 国の認定期間(10年間) であることから、必ず先に国の認定期限が訪れる

・だが、事業者に対する不申請の通知期限は5年も前に設定されている。市長や議会の任期が4年であることを考慮すると、5年前に通知することはかなりハードルが高い。

・しかも、契約期間は35年間と長期にわたるのに、「事業停止による損害賠償は横浜市」と明記されてしまっている

 つまり、この規定を踏まえると、一度でもIR事業者と契約してしまえば恐ろしいことに、首長・議会・市民のいかなる立場の者がカジノを無くそうと考えても、カジノを無くすことはもはや不可能だろう。というか、今後、首長や議会がどのような人物に入れ替わってもカジノを存続できるようにあえてこうした規定にしたのであろう。

 このカラクリを承知の上で、自民党や公明党の市議たちは「今は区域整備計画の詳細が示されてないので、市民が正しい判断を下すことはできない」という詭弁を用いているのだろう。井上さくら市議の討論前、住民投票条例の否決に賛成(=住民投票は実施させないべき)の立場で討論した全2名の市議が具体的にどのような発言をしていたのか討論内容から抜粋して、以下に紹介する。

自民党・黒川勝 市議(横浜市金沢区 選出)

「なぜ今、施設の詳細が示されないのに賛否を問う住民投票を行うのでしょうか。まさかとは思いますが、素晴らしいIR施設の提案が提出されると賛成者が増えてしまうと思っているのでしょうか! 横浜の依存症対策の詳細が発表されると市民の不安は減るかもしれません。その前に住民投票で潰してしまおうというのでしょうか!」

公明党・安西英俊市議(横浜市港南区 選出)

「現状では、区域整備計画が示されていないことや代替案が無い中で賛成や反対を判断することは困難であると考えています。」

 黒川市議に至っては、こちらが恥ずかしくなるほど実態と乖離した内容を述べており、その厚顔無恥ぶりには逆に感心する。そもそも、世界的なパンデミックによって大規模集客型のIRという事業の先行きが全く不透明な中、35年契約、1兆円規模の投資となる事業になぜここまで楽観的でいられるのか。この黒川市議はカジノを強行するためにあえて挑発的な言動をしたのか、もしくは本当に何も考えていないのではと心配になる。この黒川市議の挑発的な発言に対しては、傍聴していた市民からも即座に多くの非難の声があがっていた。

 4点に分けて解説してきた横浜市会の異常さは以上である。

 そして、これだけの問題点や矛盾を明らかにした井上さくら市議の討論の直後、記事冒頭で伝えた通り「横浜市におけるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致についての住民投票に関する条例の制定」は横浜市会で否決された。横浜市会で過半数の議席を占める自民・公明の議員全員が否決にまわったからだ。

 この出来事は、2019年9月に可決されたカジノ補正予算案を思い起こさせる。この際も、審議を通して市長や横浜市が掲げたカジノ誘致の根拠が次々と崩壊していったにもかかわらず、最後は過半数を占める自民・公明の賛成によって、問題と矛盾だらけのカジノ補正予算案は可決されてしまった。

*その際の採決直前の井上さくら市議の反対討論は下記の動画リンク参照

 これらの出来事を踏まえて言えることとして、横浜市民としても大変残念であるが横浜市の議会制民主主義はもはや機能不全に陥っている。自民・公明の横浜市議は「横浜は議会制民主主義が健全に機能しており、選挙で選ばれた代表である議員が正しく判断する」という旨の主張を繰り返しているが、実態は真逆である。選挙で過半数の議席を得たことを口実に、市民の将来的な負担を無視し、問題だらけの政策を強引に進めている。国会で起きていることと同じことが菅総理のお膝元である横浜市会でも起きてしまっている。

<文/犬飼淳>

【犬飼淳】

TwitterID/@jun21101016

いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。

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