政治家として育てられた第二の故郷を見捨てた鈴木直道北海道知事。業を煮やした厚谷司・夕張市長が香港系ファンドに“直談判”へ

HARBOR BUSINESS Online / 2021年2月24日 8時32分

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市長時代に夕張市のリゾートを中国系企業に売却した鈴木直道知事(右)

◆夕張市のリゾート施設売却の責任をまったく取らない鈴木知事

「『夕張再建』をアピールして2019年4月の北海道知事選で初当選した鈴木直道知事はなぜ、自らが招いた“第二の故郷”の危機的状況を見て見ぬふりをしているだけなのか」

 こんな疑念が湧いてきたのは、2月8日。市民との対話集会を終えた厚谷司・夕張市長から、鈴木知事の対応について聞いた時のことだ。

 営業停止・廃業を発表した「夕張リゾート」に関する要望書を市長から1月22日に受け取ったにもかかわらず、未だにリゾートを所有する香港系ファンドと直談判をするなどの具体的行動を起こしていなかったのだ。

 市内最大の雇用の場で、観光振興の中核的施設でもある「夕張リゾート」の営業停止を招いたのは、市長時代の2017年に2億4000万円で中国系企業「元大グループ」(呉之平=ご・しへい=社長)に売却した鈴木知事だ。

「長年の営業継続が前提」と議会で鈴木市長(当時)は説明していたが、2019年2月に香港系ファンドに15億円で転売され約束が反故になったうえ、リゾート施設の営業停止という最悪の事態となってしまったためだ(筆者記事「夕張市のリゾートを失い、中国系企業を儲けさせただけ? 強まる鈴木直道・北海道知事への不信感」参照)。

 それなのに、鈴木知事は現在に至るまで転売益10億円を手にした呉社長に「話が違う」と抗議をすることも、転売先の香港系ファンドに「長年の営業継続が前提だった。1日も早く再開してほしい」といった交渉もしていない。市長時代の判断ミス(失敗)が招いた政治的責任をまったく取っていないのだ。

◆厚谷司・夕張市長「香港系ファンドにはリゾート再開をお願いしている」

「鈴木知事はいったい何を考えているのか」「世話になった夕張を踏み台にして後は知らんぷりをするのか」「元大グループにカネや女性問題など、弱みでも握られているのか」といった疑問が次々と浮かんできたのはこのためだ。そこで、要望書を渡した時に鈴木知事と面談した厚谷司・夕張市長を直撃。単刀直入に聞いてみた。

――1月22日の面談で鈴木知事は、リゾート再開に向けた具体策、例えば香港系ファンドから買い戻すといったことは語っていなかったのですか。

厚谷市長:語ってはいませんでした。今は民間企業の所有なので、夕張市も破産した「夕張リゾート」の債権回収をしている弁護士を通じて(香港系ファンドの)ライ社長には「何とか早い形で再開していただくような対応をお願いしたい」と伝えていますが、まだ返答はありません。(ライ社長の代理人の)弁護士事務所からは「何とかいい形で再開できるように今やっています」という話を伺っていますが、具体的な時期については聞いていません。

――鈴木知事は市長時代に「長年の営業継続」を前提で元大グループに売りましたが、約束が破られました。鈴木知事は「話が違う」と中国系企業に怒っていたり、「自分の判断ミスだった」と言ったりしてはいなかったのですか。

厚谷市長:そういう話はありませんでした。

◆夕張市がリゾート再開費用を肩代わりすることは難しい

――「スキー場・ホテルの営業を再開してほしい」と、今日(2月8日)の市民懇談会でも意見として出ていましたが、具体的な方策を教えてください。“厚谷プラン”はないのでしょうか。

厚谷市長:1日も早く再開したいという思いはありますが、市の思いだけで成しえるものではありません。いま市の考え方を伝えながら、いい方向に話が進んでいくように取り組んでいます。

――まずはスキー場だけでも再開するのは難しいのでしょうか。

厚谷市長:スキー場関係者は「難しい」と言っています。「リフトを動かせばいいだけではなくて、安全対策のためのコース整備や人の配置となると、多額の費用が必要。現実的には今は無理だ」と聞いています。夕張市は財政的に厳しく、費用を肩代わりすることは難しいのです。

――鈴木知事と相談して、再開プランを作成しないのですか。スキー場再開が、市民のいちばんの望みではないですか。

厚谷市長:仮にそういった方向性になった時、(香港系ファンドの)ライ社長からリゾート施設を貸与してもらえるのかどうか。

――(長期にわたって営業を継続するという)約束を破ったのは、元大グループ(呉社長)と転売先のライ社長のほうだと思います。そこは強く直談判をしてもいいのではないでしょうか。

厚谷市長:そのへんはまず意見として承っておきます。

◆厚谷市長、香港系ファンドの社長に直談判することを宣言

 この“市長直撃”の翌9日にも市民との対話集会は開かれ、この日も市民から夕張リゾート再開を求める意見が出た。すると、厚谷市長は前日よりも踏み込んだ発言をした。香港系ファンドのライ社長(香港在住)に直談判をする考えを明らかにしたのだ。

 厚谷市長は、「広東語も英語も話せない」と打ち明けたうえで「同時通訳について道庁の協力も取りつけた」と説明。通訳を介したリモート面談で、リゾート早期再開を求める市民の声をぶつける交渉に臨むことを宣言したのだ。

 9日の時点では“リモート直談判”の時期は未決定だったが、売却時に市長として約束を交わした鈴木知事も同席するべきではないだろうか。夕張の“宝”とも言うべきリゾート施設を、いつどういう形で再開できるのか。今後も夕張から目が離せない。

<文・写真/横田一>

【横田一】

ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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