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特定外来生物“アライグマ”の猛威が拡大 北海道全域で過去最多2万6425頭捕獲するも止まらない農業被害 驚異的な繁殖力への対策は?

北海道放送 / 2024年6月17日 19時39分

アライグマによる農業被害が、いま急増しています。

皮が剥ぎ取られ、実がかじられたスイートコーン。大きな穴が開き、中身がくりぬかれたカボチャ。

これらの農作物を食い荒らしたのは…。

農家の人
「(箱わなを指して)こちらですね」

“わな”にかかったのは、特定外来生物に指定されているアライグマ。

もともと日本にはいなかったアライグマがここ数年で急増し、いま大きな問題となっています。

なぜ、アライグマは増え続けるのか?捕獲が追い付かない現状を、もうひとホリします。

農家 江崎佑さん
「(箱わなを説明しながら)アライグマがこちらから入ってきます。エサがここに置いてありまして、食べに来て、この板を踏むと(ガチャン!)このように閉まる仕組みになっている」

北海道長沼町の農家、江崎さんは、スイートコーンの農業被害が目立ち始めた6年前から、アライグマの捕獲に乗り出しました。

最初は1つだった“箱わな”も現在は6つに増やしています。

長沼町の農家 江崎佑さん
「ここ3年くらい意識的に仕掛けるようになったんですけども、おととしで年間15頭、去年も15頭で、今年はきょう時点で18頭捕まっている。そういう意味では全然減ってない、これだけ捕獲しているのに、減ってないっていうのが実感です」

北海道全域のアライグマの捕獲数は年々増加し、2022年には2万6425頭と過去最高を記録しています。

(道内の)生息地域も1995年にはわずか24市町村だったのが、この30年でほぼ北海道全域に広がっています。

長沼町の農家 江崎佑さん
「年間“億単位”のアライグマによる農産物の被害額があるが、毎年、倍、倍、倍…となっていくとしたら、本当に恐怖ですよね。農村地帯だったら、いくらでも食べる物はあるので、指数関数的な増え方(=飛躍的に増加する状態)をしていくと思うと、本当に恐ろしい」

その繁殖力から、根絶するのは難しいとされるアライグマ。

北海道大学の上野准教授は、増え続けるアライグマを捕獲するには“適している時期”があると話します。

北海道大学大学院 文学研究院 上野真由美准教授
「データに基づくと、3月から6月というのが、“わな”をかけた努力に対して、数多く捕れるという時期になっているということが示されています。おそらく背景としては、雪どけをし始めた時期ということで、山野にそれほど食べ物がないことと、農作物も実ってないということで、“わな”内のエサが魅力的に感じるのではないか」

アライグマの農業被害を防ぐには、農家だけではなく、自治体や住民を巻き込んだ駆除の取り組みが必要だと、上野准教授は指摘します。

北海道大学大学院 文学研究院 上野真由美准教授
「アライグマがいることによる、身近な問題の中で一番大きいのは、北海道民にとっては、やはり農業被害だと思います。地域の中で、それぞれの隣接する市町村が、一体感を持ってやっていくのが何より大事なのかなと思います」

個体数を減らすことが難しいとされるアライグマですが、駆除に一定の成果をみせているマチもあります。

北海道空知地方の新十津川町では、農業被害が増えていたことを踏まえて、北海道の研究機関にアライグマ駆除対策について相談。

それまで20基程度だった“箱わな”の数を150基ほどに増やし、被害の出ている農家に貸し出ししたほか、さまざまな対策を強化しました。

新十津川町産業振興課 井上柊太さん
「捕獲報酬金といって、アライグマ1頭当たりに対して、捕獲したかたにお金を支払うような制度を導入したり、アライグマの“箱わな”を設置した際に生息数を計るために、今回、日記のようなものを付けていただいたりという経緯がある。今後、どれくらいの頭数を年間捕獲していけば、アライグマが根絶に向かっていくか、その指標を計るために“アライグマの生息数”を計った次第です」

3年間のアライグマ対策強化の結果、特定の区域内に存在する生物の個体数を表す“生息密度”が、超高密度を示す【5.3】から、低密度である【0.6】まで下がりました。

北海道大学大学院 文学研究院 上野真由美准教授
「“わな”の数を増やしたり、報奨金を設定したり、研究機関がすごい技術をてこ入れしたわけでもないが、地道に地元の捕獲体制を強化したと。3年間の成果というのがアライグマの生息密度の低下であったり、被害の低下・軽減であったりにつながったことが証明され、非常に素晴らしい取り組みと感じています」

北海道大学大学院の上野真由美准教授の話にもあったように、新十津川町では、何か奇抜な得策があったわけではなく、地道に捕獲体制を強化していったことが、農業被害の減少につながったということです。

■《新十津川町の農業被害》
新十津川町では、2019年度から3年間の取り組み強化で、農業被害は確実に減少したそうです。ところが、グラフを見る限り、2023度から、再び“農業被害”額が急増しています。

これは、アライグマによる農業被害が低下したことで、農家の皆さんが“もう大丈夫だろう…”という判断もあって、“箱わな”を仕掛けなくなったことから、再び被害が急増する事態となっているとのことです。

■《北大大学院 上野真由美准教授の問題提起》
上野准教授が指摘するのは、取り組み強化で生息密度の低下は実現したものの、今度は、その状況を維持することの難しさです。

捕獲の手を緩めれば、また増えるのがアライグマということで、どうやって駆除体制を続けていくのかが、新たな課題とのことです。

環境省の試算によると、10頭のアライグマが放置された場合、10年後には500頭となり、20年後には2万5000頭を超えるほどまでに、個体の数は増えていくそうです。

被害は北海道全域に広がりつつあります。効果のある早急な対策が必要です。

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