お腹がゴロゴロしにくい“A2ミルク” 牛乳苦手な人にも魅力をアピール 消費減少や飼料の高騰に苦しむ酪農業界で「希望の光」になるか
北海道放送 / 2024年6月18日 20時17分
おなかにやさしい牛乳が北海道の酪農も元気にします。マチの人に聞きました!“A2ミルク”って知ってますか?
マチの人
「知らないです…。栄養補助食品的な?」
「えーに?ランクみたいのがあって結構よさげなランクのミルク」
正解は 「A2(エーツー)ミルク」。聞き慣れない言葉ですが、実は、世界で注目されている「おなかがゴロゴロしにくい」と言われる、新しい「牛乳」のトレンドです。マチの人に飲んでみてもらうと…。
マチの人
「おいしい!」
「もともとおなかが弱いからすごく助かるな」
「普通の牛乳と同じ味わいなのでおいしいと思います。お腹もゴロゴロしにくいならいいですよね」
鈴木牧場 鈴木敏文さん(42)
「牛乳って可能性の塊だなと思っています」
おなかにも、酪農家にも優しい「A2ミルク」 をもうひとホリ します。
鈴木牧場 鈴木敏文さん(42)
「全部で130頭牛がいて、約半分ぐらいの牛たちが『A2』です。見た目はまったく分からないです。人間でいうと血液型みたいなものなので」
北海道広尾町の酪農業、鈴木敏文さんです。
16年前に流行した家畜の病気で、多くの牛を失ったことを教訓に、農薬や化学肥料、飼料を使わず、牧草と放牧中心の酪農に切り替え、「A2型(エーツーがた)」と呼ばれる遺伝子を持つ 牛の飼育に取り組みました。
鈴木牧場 鈴木敏文さん(42)
「海からのミネラル分を含んだ海霧が牧草に付着して、それを牛が食べる。牧草中心で牛を飼っていたら、牛がすごく健康になった。牛乳を飲んでみたら、めちゃめちゃおいしかったんですよ」
鈴木さんは、乳業メーカーに出荷する生乳とは別に、独自で加工場を作り、去年12月から牧場オリジナルの牛乳の生産を始めました。
国内で初めて2つの認証を得た「十勝オーガニック牛乳」には、もうひとつのプレミアムが…。
鈴木牧場 鈴木敏文さん(42)
「『A2ミルク』として世の中に出てくれたらいいなと思った。A2の魅力はやっぱりおなかがゴロゴロしにくいこと。今まで牛乳を飲めなかった方にアプローチできると思った」
牛乳を飲むと、おなかがゴロゴロしてしまう方がいると思います。
これは「乳糖不耐症」と呼ばれ、牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素が体内に少ないため、しっかり消化吸収できないことが原因です。牛乳の中には「ベータカゼイン」と呼ばれるタンパク質が含まれていて、A1型とA2型の2つのタイプがあります。
人間の血液型と同じく、乳牛がどちらの遺伝子を持っているかで型が決まりますが、このうちA2型の遺伝子のみを持つ牛から搾られた牛乳「A2ミルク」は、A1型の牛のミルクに比べて、おなかがゴロゴロなりにくいという研究結果が、海外の論文で発表されています。
牛乳が大好きなのに、飲むとすぐにお腹がゴロゴロするのが悩みの記者。鈴木さんのA2ミルクを飲んでみました。
松本雅裕記者
「のどごしがすっとあっさりでおいしいです。優しい甘さでゴクゴクと飲むことができます」
飲んでから10分、いつもだとおなかがゴロゴロする頃なのですが…。
松本雅裕記者
「飲んで10分が経ちましたが、おなかはゴロゴロしていません。これはうれしい。朝でも飲む自信がつきます」
鈴木さんは4月、広尾町内の学校給食に「A2ミルク」を提供。牛乳が苦手で、これまで敬遠してきた人たちにも、おいしさと魅力をアピールできると、鈴木さんは胸を張ります。
鈴木牧場 鈴木敏文さん(42)
「飲んだ瞬間、笑顔があふれる感じで、おいしいとか甘いとか飲みやすいとかそういう声がありましたし、新しい潜在的なニーズに飲んでいただけたらと思っています」
富良野市にある牧場です。牧場の代表、藤井雄一郎さんは、海外で「A2ミルク」が普及しているという情報に着目し、10年前から「A2」の遺伝子を持つ牛の飼育を始めました。
牧場で飼育している牛、およそ1600頭は、すべて「A2」の牛です。
藤井牧場 藤井雄一郎さん(46)
「乳製品を避けるようにしてるという消費者がいて、そういった方にも手に取ってもらえる商品になるのであれば、ぜひ取り組もうと」
国内で「A2ミルク」は一部の酪農家が生産しているだけで、認知度はまだ高くなく、販路も広がっていません。
藤井さんは4年前、「A2ミルク」をPRする「日本A2ミルク協会」を立ち上げて、品質を保証する「認証マーク」を決めました。
協会に登録された「A2」の牛から搾られた、他の牛乳が混ざっていない「A2ミルク」にお墨付きを与えることで、高品質の「A2ミルク」を消費者に届けたいという思いからです。
藤井牧場 藤井雄一郎さん(46)
「品質が悪いものが出回ってしまうと、A2全体の信頼を失ってしまう。消費者の信頼を裏切らないような牛乳を生産していこうと」
牛乳の消費の減少、飼料や肥料、燃料の高騰…。赤字経営を強いられ、離農も多い道内の酪農業界で、「A2ミルク」は希望の光になっています。
藤井牧場 藤井雄一郎さん(46)
「アジアに向けた輸出のひとつのアイテムとして、北海道にとってはチャンスだと思う。農業全体の底上げにもA2はつながってくる」
牛乳から遠ざかっていた人を何とか取り戻したい。 「A2ミルク」への情熱を感じます。
A2ミルクの酪農家らで作る「日本A2ミルク協会」は、今年3月に首都圏と関西のスーパーなどで、協会の認証マークを付けた第1号のA2ミルクを発売しました。
北海道内では、7月6日から、旭川市の「道北アークス」の3店舗でも発売されます。価格は輸送コストが考慮されていることから、1リットルで450円ほどになりそうだということです。
徐々に道内でもA2ミルクが広がりそうです。A2ミルクは、オーストラリアや中国など、世界で需要が高まっています。
世界のA2ミルクの市場規模は、8年後の2032年には478億ドル=およそ7兆円に拡大すると予測されています。
広尾町の鈴木牧場では、将来を見込んで、こんな試みをしています。牛乳を容器ごと装置に入れて急速冷凍しています。
これにより賞味期限を2~3か月程度まで延ばすことができ、海外輸出も可能になるということで実験を繰り返しています。
鈴木さんによりますと、冷凍保存すると甘みやコクが増して、さらにおいしくなる、うれしい効果も現れているそうです。酪農は北海道の基幹産業なので、飲んで応援したいです。
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