夫婦“3組に1組”が別れる時代「もしDV被害が認定されなければ…」「一方的にDV加害者とされたら…」離婚後に父親と母親双方が持つ“共同親権”制度 不安を隠せぬ当事者の思い
北海道放送 / 2024年6月24日 20時14分
都道府県別の離婚率の高さが全国5番目の北海道にとって、離婚後の親子関係は、大きな関心事ともいえます。
その子どもの親権を離婚後も父と母、双方が持つ【共同親権】が、2年以内に始まろうとしていますが当事者たちが訴える制度の問題点とは…。
夫からDVを受け離婚した女性
「籍を入れてすぐに髪の毛持って引きずり回されたりみたいなことが出始めて、(元夫は)“子どもは殴って育てなきゃだめだ”みたいなことを言い出すようになって、子どもたちにも蹴ったりとかが始まってきたので、これはどんどんエスカレートしていくなと思って…」
夫からDV=ドメスティック・バイオレンスを受けていた30代の女性です。
結婚後、夫は、日常的に女性と幼かった子どもたちに、暴力を振るうようになりました。
女性は離婚調停を申し立て、8年前に離婚が成立。
しかし、すでに離婚した夫婦も【共同親権】の対象となることに不安を訴えます。
夫からDVを受け離婚した女性
「もし共同親権が認められてしまったら、もうどこに逃げてもずっと追われる。子供たちにとっては本当に恐怖でしかなくて、いま(元夫からのDVが)落ち着いてるから(家庭裁判所に)窮迫ではないと見られてしまうのか。でも、心の不安だったりは今もずっと継続してあるものなので、そのあたりの判断を裁判所に委ねて、全て判断してもらえるのか…」
改正民法では、父母が合意すれば【共同親権】にできますが、合意できない場合は、家庭裁判所が【単独】か【共同】かを判断します。
また、子どもへのDVや虐待の恐れがある場合は【単独親権】となります。
DVを経験した女性が相談員を務める札幌のNPOです。代表の山崎さんは【共同親権】がはらむ危機感を訴えます。
女のスペース・おん 山崎菊乃代表
「家庭裁判所でDVをどうやって立証するのかというのが大きな課題になります。特に精神的DV、性的DVは証明が難しいので、共同親権になりうる可能性が高くなってくるのではないか。(離婚夫婦の)約90%が協議離婚なので、協議離婚で「共同親権に合意しないと離婚しない」みたいな主張をする人がいっぱい出てくる」
一方、この男性は「DV認定」の曖昧さが、制度の悪用につながっていると主張します。
妻による子の連れ去りを受けた男性
「現状の運用では一方がやったと言ってしまえば、証拠もないのにDV認定されてしまう」
フランスなど欧米で普及している【共同親権】。
国際結婚した夫婦の一方が、【単独親権】の日本に子どもを連れて行く“子の連れ去り”が、海外から問題視され、日本での法整備が求められてきました。
北海道内の40代の男性も、妻による“子の連れ去り”を訴えています。
妻による子の連れ去りを受けた男性
「非常に精神的にも疲弊する。子どもたちに会えないのがなによりつらくて…」
男性は、9歳と7歳の息子2人と、もう3年近く会っていません。
おととしの秋、仕事から帰ると家が、もぬけの殻に…。妻が息子たちを連れて突然、家を出て行ったといいます。
妻による子の連れ去りを受けた男性
「同居中は良好な親子関係で、休みの日は母とか妹と一緒に遊びに行ったり、学校に迎いに行ったり。まさかいなくなるとは思ってもいなかった」
男性は、妻から日常的に無視や罵られるなどの精神的DVを受けていました。しかし別居後、妻は「夫からDVをされた」として離婚調停を申し立てました。
さらに、DVやストーカー被害を防ぐため、住民票の取得を制限する“支援措置”の適用も受け、妻と子の居どころが、わからなくなりました。
妻による子の連れ去りを受けた男性
「もちろん本当に身の危険があるのであれば、逃げることも必要だとは思います。証拠も何もいらなくて“支援措置”がかかってしまうという現状そういう問題がある。現状の運用では、一方が(DVを)やったと言ってしまえば証拠もないのにDV認定されてしまう」
離婚訴訟の判決で「妻へのDVはなかった」ことが認められました。
また、子どもたちとの交流も認められましたが、この3年間、実現していません。
一方、親権は別居後、妻が子どもたちを“監護”、つまり子どもに必要な保護や監督などをしていたことを根拠に、妻だけに認められました。
男性は、虚偽の主張による子どもの連れ去りによって、妻だけに親権が認められたことに、納得していません。
妻による子の連れ去りを受けた男性
「まず子供たちに会いたいということですね。一緒に遊びに行ったりだとか、普段の会話だとか、その何気ない日常が送りたい。共同親権になって、子どもと関わり合える時間が少しでも多く取れればいいかな…」
■《共同親権 導入の背景》
日本は離婚後、子どもの親権を父親か母親のいずれか持つ【単独親権】制度です。
親権を持つ親は、子どもの住居や進学先、医療行為などを決めることができますが、一方の親には権限はありません。
そして、離婚後も両親が“平等”に子どもへの責任を持つことを目的に、今回、導入されるのが【共同親権】です。
導入にあたっては国際結婚で、日本人の親が相手の承諾なしで、子どもを日本に連れ帰るケースが相次いだことで、2020年に『EU議会』から問題視されたことを受け、国際世論に配慮した形で、日本でも【共同親権】の導入となりました。
■《共同親権のメリット・デメリット》
【共同親権】を選択した場合のメリットは次の通りです。
・離婚後も親子の断絶を防ぐ。
・養育費の支払い円滑化。
・面会交流の促進…などが考えられるとされます。
では、デメリットとして、どんなことが想定されるのでしょうか。
・子どもの進学など重要な決定で父母が対立する恐れ。
・関係が続くことで、DVや虐待が続く恐れ…などが指摘されています。
運用面で、いくつもの課題が残されているわけですが、法務省は2年以内の施行に向け、詳細なガイドラインの策定や、家庭裁判所の体制強化を進めるとしています。
一番の当事者である“子どもの声”が、決して置き去りにならないように議論を尽くして、制度に反映させてほしいと思います。
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