太平洋側の北海道東部に“待ったなし”の脅威 400年周期で過去15回発生している根室沖の巨大地震…津波被害の減災を目指す最新ドローン運用開始
北海道放送 / 2024年7月4日 21時35分
石川県で元日に起きた大きな地震は、いつ起きるか分からない"巨大地震の脅威"を、改めて感じさせる出来事でした。
その大きな脅威に対し、いま警戒すべき段階に入っているとされるのが、太平洋側の"北海道東部エリア"です。
近年、日本の太平洋側で頻発する地震。2023年6月、震度5弱を観測した地震は、北海道浦河沖の深さ140キロを震源とするものでした(北海道浦河沖 2023年06月11日 18時55分 震度5弱)
赤や黄色でマークされた64万もの小さな点は、2000年以降、日本で起きたマグニチュード2以上の震源地。
地中深くで、起きる地震のメカニズムを把握しようと、より正確に、震源の位置を可視化させた、いわゆるビッグデータです。
巨大地震につながる兆しを探ろうとする調査が、北海道根室沖で進行中です。
海底に蓄積されるエネルギーを5年前から観測するのは、北海道大学や東北大学、海洋研究開発機構=JAMSTEC(ジャムステック)による、大規模なプロジェクト。
根室沖で何が起きているのか。
北大大学院・地震火山研究観測センター 髙橋浩晃教授
「東日本大震災クラスのマグニチュード9という超巨大な地震は、約400年間隔で、これまで15回程度起きてきたということが知られています。それから現在400年たっていますので、すでに“満期”を迎えているのではないか…ということがありまして、かなり切迫した状況であると考えられています」
400年間隔で繰り返されてきた巨大な地震。根室沖で発生すれば、北海道の太平洋沿岸に及ぼす、深刻な被害は避けられません。
わずかな地殻変動をつかむことが、いま極めて重要です。
東北大学 災害科学国際研究所 富田史章助教
「ここに置いているのが、海底の地殻変動を計測するために、海底に設置する機材になります。これを船から沈めて、海底の機材と、船の間の距離を『音響測距』で測るというものになっています」
根室沖の海底の、さらに地下深くに計測器を設置。
海側と陸側のプレートの間に生じる“ひずみ”から“千島海溝”周辺に蓄積される、地震のエネルギーを調べています。
東北大学 災害科学国際研究所 富田史章助教
「根室沖でいうと、海側のプレートが、年間8から9センチの速度で、陸に向かって動いている」
“千島海溝”周辺に蓄えられたエネルギーが、その力を解き放たれると、巨大な地震につながります。
今年、国が公表した予測では、千島海溝周辺を震源とするマグニチュード8.5クラスの巨大地震が、今後30年以内に根室沖で80%程度の確率で発生…。
北海道内の太平洋沿岸に津波が押し寄せ、たとえば厚岸町には、高さ20メートルを超える予測も…。
福島県浪江町です。13年前の東日本大震災で、津波による甚大な被害を出しました。
“震災遺構”として大切に保存されている、浪江町立「請戸(うけど)小学校」。6キロ先には、東京電力福島第一原発が見えます。
実は、ここに…津波被害を最小限に抑えるための、ある“切り札”が備えられています。それは北海道の企業が開発した、最先端の技術でした。
三國谷浩司記者
「ここは給食室です、奥に棚が津波で流されているのがわかります」
グラウンドの一角に設置されていたのは、円柱型の格納庫。いち早く津波の動きを捉えるため、最新技術を積んだ“鷹の目”です。
北海道苫小牧市に本社を置く、コンクリートメーカーが開発した自動制御のドローンです。
曾澤高圧コンクリート デジタル経営本部 佐藤一彦 室長
「こちらは(最長飛行時間が)6時間、(燃料と積載量の合計は)200キロのスペック」
300ミリの大雨など、悪天候でも飛行が可能なエンジンを積んでいます。
地震波を感知すると格納庫の天井が開き、ドローンは垂直に離陸。自動制御で、そのまま海へ向かいます。
上空から捉えた津波の映像を、スマートフォンなどを通じて住民へ伝え、避難する方角が、防災アプリに表示されます。
4月に運用が始まり、津波による犠牲者を減らす、「減災」に備えています。
松前藩の古文書です。400年ほど前に北海道を襲った、巨大津波による被害が、生々しい言葉で記されています。
《松前広長 編『福山秘府』1611(慶長16)年より~「冬十月、東部逆波(さかなみ)海水溢れ、人夷(じんい)死者多し」》
何度も北海道を襲ってきた地震と津波。次はいつ、起きるのか…。
北海道根室沖に絞った海底データの収集と解析から、巨大地震につながる兆候を探る研究は続いています。
東北大学 災害科学国際研究所 富田史章助教
「根室沖の千島海溝沿いに近いところで、“大きな滑り”があるか否かは、大きな津波が発生するかどうかに関わる。そこを調査する意義は非常に大きい」
避けられない巨大な災害に、それぞれの「備え」は、その日のために続いています。
400年間隔で発生している根室沖の巨大地震は、すでに警戒すべき段階に入っていることになります。北海道沖には、ほかにも気がかりなエリアがあるそうです。
◆《【太平洋側の震源の空白エリア】》
2000年以降に発生したマグニチュード2以上の震源地、約64万か所を、立体的に示したデータです。
地震の規模や、震源の深さを赤や黄色でマークしていますが、太平洋側の北海道沖にある、こちらの2か所。
ほぼマークが付いていない、この2か所は、2000年以降、地震が発生していない【震源の空白エリア】となっています。
東北大学 災害科学国際研究所 富田史章さんは、一つの可能性として…。
【地震エネルギーが蓄積されている】とも考えられ、また【プレートどうしがすれ違っているだけ】とも考えられ、今後、観測計画を練る必要があるとして注目しています。
巨大地震は防げずとも、大切な取り組みは“減災”です。
地震発生直後、"津波の動き"を大型ドローンで捉えて、専用アプリに避難情報を送る、福島県浪江町の取り組みは、津波被害が想定される地域でも、注目されそうです。
地震列島の日本に暮らす私たちにとって、大袈裟にも聴こえるかもしれませんが、巨大な地震は、つねに間近に迫った脅威と捉え"もはや待ったなし"で備えていることが、大切かと思います。
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