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孤独な人生に訪れた奇跡…ドキュメンタリー映画『94歳のゲイ』同性愛者であることを心に秘めて、長い人生を歩んできた男性の物語 吉川元基監督が作品に込めた思いとは

北海道放送 / 2024年7月5日 20時55分

注目の映画が7月6日から札幌で公開されます。長い間、同性愛者であることを誰にも打ち明けられずに生きてきた、男性のドキュメンタリーです。

長谷忠さん:「この顔がいちばん好きやねん…いいと思うやろ」

長谷忠(はせ・ただし)さん。自身が同性愛者であることを、誰にも打ち明けず、心に秘める人生を歩んできました。

ケアマネージャーの梅田さんとは、自身のセクシュアリティを打ち明けあった仲です。

長谷忠さん:「聞いたかな、あんたのことはな、えーと思ったよ」
梅田正宏さん(56):「え、なんのこと?私が…ゲイだってこと?」

長く、同性愛は世界的に病気の一つとされ、厳しい偏見の目にさらされ続けてきました。

記者:(告白はした?)


長谷忠さん:「しない、告白なんて一切してない、一度もしていない」

1971年、同性愛者たちに光を当てる雑誌が誕生します。

“薔薇族”元編集長 伊藤文学さん:「弱いものに目をむける気持ちが、僕の中にあったんじゃないかなと思うんですね」「異常でも変態でもないと言い続けたわけだからね…」

雑誌“薔薇族”の文通欄に、読者から寄せられた投稿です。

《僕はいま、冷たい部屋の中で孤独にあえいでいる》

文通欄には、多い時で1000人以上、当事者の声が寄せられたといいます。

この日、長谷さんは、勉強会に参加しました。

参加者の男性:「いまパートナーと、もう20年一緒に暮らしている」

世代の違う当事者たちの語りは、長谷さんの心も丈夫にします。さらに、長谷さんを慕う、新しい仲間も現れます。

新たに知り合った男性:「幸せだと感じますか…、自分の人生は」
長谷忠さん:「今は寝てばっかりやけど」
新たに知り合った男性:「最終的に幸せならよかった」

映画『94歳のゲイ』―。

長谷さんの生き様を通し、同性愛をめぐる当事者たちの歴史を記録します。

長谷忠さん:「同じゲイどうしやもん、とっても考えられません、僕にとって…まるで奇跡や」

森田絹子キャスター)
ドキュメンタリー映画『94歳のゲイ』が描いているのは、同性愛者であることを誰にも打ち明けられずに生きてきた男性、長谷忠さんが歩んできた人生の物語です。

かつて同性愛は、日本では治療できる精神疾患とされてきました。そんな時代のなかで、長谷さんは、自らの思いを詩にしたためることを“心の拠り所”にして生きてきました。

そうした長谷さんの作品は、詩人・谷川俊太郎さんにも認められるほどでした。

長谷さんは、孤独の中を生きてきて、90歳を超えて、同じ境遇を持つ仲間と出会うことになります。そして、長谷さんの環境が、少しずつ変わっていく様子を、映画『94歳のゲイ』では描いています。

長谷忠さんという人物の生きざまを深く掘り下げながら、日本の同性愛をめぐる当事者たちの歴史を紐解いていくドキュメンタリー映画です。

堀啓知キャスター)
7月6日から札幌で公開されるドキュメンタリー映画『94歳のゲイ』―。監督を務めた大阪MBS・毎日放送の吉川元基さんです。

私もひと足早く、この作品を拝見しましたが、あっという間の90分でした。吉川元基監督は、どういう思いから今回の映画を製作しようと考えたんでしょうか?

監督・吉川元基さん)
私が、94歳の長谷忠さんと出合ったとき、私自身が90代のゲイという存在を聞いたことがなくて、非常に驚いたんですね。

ただ、それは非常に間違った考え方で、昔も今も変わらずに、ゲイの人たちはたくさんいたわけで、その存在さえもなかったことにされているのではないかと思いました。そこに光をあてたいと考えて、この映画を作りました。

堀啓知キャスター)
作品のタイトルである“94歳のゲイ”…ここにはどんな思いが込められているんでしょうか?

監督・吉川元基さん)
年齢の部分は非常に大きいのかなと思っていまして、差別とか偏見に耐えながら、そして、時に闘ってきた人たちがいる…、そうしたことを知ってほしいという想いを込めて“94歳のゲイ”というタイトルになりました。

堀啓知キャスター)
ご自身もゲイの当事者として活動もされている、満島てる子さんは、どう映画をご覧になっていかがでしたか。

満島てる子さん)
自分自身が男性同性愛者として、一つ一つのシーンに様々な思いを重ねながら、本当に噛み締めるような思いで映画を観ました。

ゲイ、あるいは男性同性愛者の歴史的な記録をドキュメンタリーの背景として描きながら、それと同時並行で、主人公の長谷さんと周囲の人たちといった、ゲイとしてとして生きる人たちの生きざまを、しっかり世代ごとに感情まで浮き彫りにして描かれている、貴重な記録だと感じました。

吉川監督に伺いたいのは、映画を観た見た方は、同性愛の当事者も含め、どんな感想を寄せられているんでしょうか。

監督・吉川元基さん)
まず当事者の方々からは、本当の自分を隠しながら、でも社会に溶け込んでいて、普通に生活しているゲイの人を取り上げてくれて感謝しているという感想の言葉が多かったですね。

そして同性愛の当事者ではない方からは、日本初のゲイの商業雑誌『薔薇族』の編集長が、どういう人物で、どんな思いで出版してきたのかということを知って驚いた、そうした感想が寄せられました。

森田絹子キャスター)

映画の中で、同性愛者の位置づけを大きく変えた存在として登場するのが、雑誌「薔薇族」です。

1971年に創刊された、男性同性愛者向けの雑誌です。・文通欄が、同じ境遇の仲間とつながる手段がなかった時代、心の救いになったといいます。

そして、初代編集長の伊藤文学氏は、同性愛者ではなかったということなんです。

堀啓知キャスター)
自分も「薔薇族」の存在は書店などで見て知っていましたが、編集長の伊藤文学さんは、どんな人物なのでしょうか。

監督・吉川元基さん)
私が取材した印象としては、非常に心やさしい人だと感じました。雑誌『薔薇族』の編集長を務めた伊藤文学さんご自身はゲイではなく、いわゆる“非当事者”が雑誌を出版することに対して“ゲイを食いものにしているのではないか?”という批判の声もあったんですね。

ただ、伊藤さんは雑誌にご自身の自宅の住所や電話番号を記していて、実際に『薔薇族』の読者が自宅を訪問したときに、応接間にあげて、そこで悩みに耳を傾け、雑誌作りに反映させていた…、そういう弱い人たちの立場に立とうという意思があった人物だったのではないかと思っています。

森田絹子キャスター)
映画『94歳のゲイ』は、7月6日から12日まで札幌の映画館“シアターキノ”で上映されます。

■映画『94歳のゲイ』
語り:小松由佳 監督:吉川元基 プロデューサー:奥田雅治
撮影:南埜耕司 編集:八木万葉実 録音:西川友貴
音響効果:佐藤公彦 タイトル:平 大介 配給:MouPro.
製作:MBS/TBS 製作幹事:TBS 2024年/日本/90分/ステレオ/16:9 ©MBS/TBS

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