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長崎への原爆投下から79年「抜けるような青空…強烈な光線が」83歳の男性が語る被爆体験 近づく“被爆者なき時代”17歳が語り継ぐ記憶 北海道

北海道放送 / 2024年8月9日 20時35分

長崎に原爆が投下されて、9日で79年です。被爆者の高齢化が進むなか、次の世代に「被爆の実相」をどう語り継ぐのか。継承のカタチを考えます。

札幌市に住む大村一夫さん83歳。

1945年8月6日。4歳8か月だった大村さんは、軍政官を務めていた父の関係で、広島市内で暮らしていました。

あの日は朝から、友だち3人と、家の外で遊んでいたといいます。

広島で被爆した大村一夫さん(83)
「8月6日の朝は、抜けるような青空だった。強烈な光線がピカッ!と来た途端、ドカーンといって家がバラバラになったんだ、爆風で」

自宅は爆心地から1.6キロ。家の土壁によって、大村さん家族は、奇跡的に助かりました。

いまでも覚えている広島の惨状…。手書きの絵に書き留めていました。

広島で被爆した大村一夫さん(83)
「赤さびになった電車と、旧型の電車は板張りだから、骨組みだけが残っていて、中に黒いのが見えるなと思ったら、満員電車のまま焼き殺されてた人たちが残っていた。兵隊が、川にどんんどん飛び込んで、そして、ぷかぷかしながら沈んでいった」

終戦後、父親の故郷・北海道に移り住んだ大村さん。小学生で微熱や高熱を繰り返す原因不明の病気にかかり、1年半、生死の境をさまよいます。

当初は被爆について、周囲に何も気にせず話していましたが、大きく変わる出来事が起きます。

1954年、アメリカがビキニ環礁で行った水爆実験。被爆した乗組員が半年後に亡くなり、当時、まだ知られていなかった放射線による人体への影響が明るみになりました。

広島で被爆した大村一夫さん(83)
「放射能の後遺症って、全然知らなかった…ビキニ環礁の問題まで。自分でさえ、どうしていいか分からないものに陥った、周りに興味を持ってもらいたくないと。とにかく明日、来月、来年の話とかしたくなかった。保障がなかった…生きているっていう」

被爆した後も続く、死への恐怖…。転機が訪れたのは40歳の時でした。

高校の同窓会の幹事になり、同級生が病気や事故で亡くなっていく現実を知ったとき、気持ちに変化が起きたといいます。

広島で被爆した大村一夫さん(83)
「40歳で24人が亡くなっていた。それを知った時、自分は、人生って生きたくても、ままならぬものがあるなと。生きたくても生きれない場合もあるんだと」

79年前、広島で被爆した大村一夫さん。7年前、語り部の活動を始めました。

広島で被爆した大村一夫さん(83)
「これから手稲、手稲西中学」

午前中の講演を終えると、自ら運転して次の会場に向かいます。北海道内の学校をまわり、7年間で1300回以上、1万5000人を超えました。

広島で被爆した大村一夫さん(83)
「自分は来年、いないかもしれない。いつ白血病が来たら10日から2週間で死んでしまう。前触れがない、だったら何とか生きたい」

大村さんが強く訴えるのは、「被爆がもたらす被爆者のその後の人生」です。

今年5月、理事として参加する「北海道被爆者協会」が、高齢化で活動の継続が難しいことから、来年3月末で解散することを決めました。

そんな中、大村さんの元に一通のメールが届きます。メールには「被爆体験を後世に残す活動をしたい」と記されていました。

送り主は札幌の高校2年生、上坂芽生(うえさか・めい)さん。

大村さんの被爆体験を語り継ぎたいと思ったのは、中学生のときに、大村さんの被爆体験を聞いたことがきっかけでした。

伝承を目指す高校生 上坂芽生さん(17)
「被爆者の人生について、あまりにも自分が知らなかった。何をもって自分が知っていると思っていたんだろうと気づかされた。いつか被爆者なき時代が来る、それが迫っているのを知りながら、北海道被爆者協会が解散すると聞いて、自分が被爆体験を聞いた方の伝承をするなら、今しかないと感じて」

上坂さんは、去年から“北海道高校生平和大使”として、被爆地や国連の軍縮会議で、日本の代表として、核兵器廃絶を訴えてきました。

活動する中で、被爆の実相について、日本の若い世代や世界で知られていないことに、強い危機感があったといいます。

伝承を目指す高校生 上坂芽生さん(17)
「北海道の平和学習の足りなさだったり、ものすごい地域差を感じた。(国連で)外交官と話をしていると、大きい爆弾が1個落ちたぐらいにしか思われていなくて、被爆の本当の意味の恐怖だったり本当の被爆の実相が、あまりにも伝わっていない。全く被爆者の方々の思いが伝わっていないなと実感した」

戦争や被爆を体験していない自分が「伝承者」になれるのか。上坂さんは大村さんと向き合います。

広島で被爆した大村一夫さん(83)
「継承に関心を持ってくれるのはすごくうれしい。一番それを心配しているのが、語り継げる人たちをどうするか。自分は被爆2世、3世が語り継ぐのに、最適とは思っていない。被爆体験を全く知らない人のほうがむしろ語り継げると思っている」

伝承を目指す高校生 上坂芽生さん(17)
「一人前の伝承者になれるように、深く、深く大村さんの人生を代弁できるように、もっと精進していきたい」

被爆者の大村さんは「被爆体験を語る上で、惨状だけではなく、被爆がもたらす人生を伝えることが大切」と訴えています。

北海道内の被爆者の平均年齢は86歳。被爆者なき時代が近づいています。

HBCでは伝承者を目指す高校生、上坂さんの活動に密着して、今後もお伝えしていきます。

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