震度6強が襲ったマチに開校した小中一貫の義務教育学校には「もしも…」の備えが…災害に強いマチを目指し“住民”と“防災”をつなぐ子どもたちの学び舎とは 北海道安平町
北海道放送 / 2024年9月4日 20時52分
胆振東部地震から、まもなく6年です。「今日ドキッ!」では今月2日から1週間、防災について考える話題をお伝えしています。
今回は、震度6強を観測した北海道胆振地方の安平町です。
2023年に新しい学校が開校しましたが、子どもたちだけではなく、町民や地域全体をつなぐ「防災」の架け橋になっていました。
昼休みには、私服姿の小学生と、制服姿の中学生が同じ校舎で遊びます。北海道胆振の安平町にある、早来学園です。
2023年4月に開校した町立の小中一貫の「義務教育学校」です。
1年生から中学3年生にあたる“9年生”まで、309人が学んでいます。1年生から算数と音楽を教科担任制にするなど、教育に力を入れています。
その特徴は、教室にも表れています。
早来学園 平野拓央教頭
「各学年の発達段階を考慮したホーム(教室)の作りになっている。1年生の場合は、話し合い活動が身近で行えるスペースも組んである」
掃除をするのも、小学生と中学生が一緒に…。
早来学園 9年生 小原朱莉さん
「小学生と一緒ということもあり、掃除など大変だったりするが、新しい発見や自分たちでは湧かないような意見が小学生から出るのが興味深い」
子どもたちの笑顔があふれる学校が出来たのは、6年前のあの日がきっかけでした。
2018年9月6日、最大震度7の揺れが北海道内を襲った「胆振東部地震」。安平町も震度6強を観測、17人が重軽傷を負い、2890棟が被害を受けるなど、マチが一変しました。
旧早来中学校も、校舎で授業ができなくなりました。
旧早来中学校 教頭(当時) 小笠原伴行さん
「向こうの部屋からの割れ目がずっと続いている」
地震発生から、約1週間で授業を再開したものの、仮の校舎の完成まで、公民館などでの活動となりました。
当時の教頭、小笠原伴行さんです。
安平町教育委員会 教育指導参事 小笠原伴行さん
「生徒にとっては、今まで当たり前に過ごしてきた状況から、地震をきっかけにして、全く違う生活になっってしまった。場所も生活も変わるし、何もかも変わることになったので、かなり子どもたちにとってもストレスがあったと思う」
安平町は、新しい学校の建設を計画。住民や子どもたちも参加し、誰もが来たくなる、新しい学校を目指しました。
そしてできたのが、早来学園です。これからも安心して過ごせる学校へ。そこには、「もしも…」の備えがありました。
新しい義務教育学校が開校して2年を迎えます。目指したのは“防災の拠点”です。
この日は、6年生の調理実習。野菜炒めを作るコンロに、「もしも…」への備えが。
早来学園 平野拓央教頭
「学校が、災害のときの避難所にもなるので、いま使っているガスの調理器具を、あえてカセットコンロで調理を行えるモノになっている」
体育館には、避難所として必要となるストーブなどが備蓄されています。
災害の時に医療室になる保健室は、人が出入りしやすいよう、玄関につながっています。簡易的なシャワーもあります。
3日は、安平町内のお年寄りが、介護予防の教室にやって来ました。
町民の女性
「休憩時間に図書室に来る子どもがいる。その子たちとちょこっと会話することもある。かわいいですね」
町民の男性
「今まで会うことなかったが、よその子どもだけれど、どうしているかなと思うことがある」
災害時だけではなく、日ごろから住民が集まる学校にするため、図書室や体育館などを開放しています。
2023年から始まったのが1泊2日で行う「防災キャンプ」。
主に中学1年生にあたる“7年生”を対象に、役場の職員と協力して、災害にどう対応するかを学びます。
ブラックアウトを想定し、学校をまわる体験も…。
生徒
「すごく暗くて、階段も上がりづらくて、停電したら学校がこんな感じになると経験した」
森田絹子キャスター)
子どもたちの未来へつなぐ学び舎は、安心して暮らせる“マチの未来”にもつながっています。
早来学園は、一部予約が必要ですが、体育館や調理室を普段から住民に開放しています。
安平町教育委員会の永桶憲義教育次長によりますと、図書館は公民館にありましたが、早来学園に統合し、司書の人を配置したところ、町民の利用が増えて地域交流の場になっているということです。
さらに、この学校に入りたいと移住を検討する人もいるということです。
2023年からの早来学園へ転入した人は道内外合わせて19人もいます。
堀啓知キャスター)
学校を通じて、マチ全体が元気になる地域の復興のシンボルになっていると言えそうですね。
安平町は、今回取材した早来学園とは別に、マチの防災拠点となる公民館の改修中で、さらに災害に強いマチ作りを進めていきたいとのことです。
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