いったいなぜ？進む生産者の“大根離れ” 一方、“ブランド化”に取り組む地域も 国内２位の生産地、北海道の大根の未来は…

食卓でおなじみの野菜、大根。いま少しピンチを迎えています。

北海道札幌市内のスーパーの野菜コーナー。並んでいるのは旬の大根です。

台風の影響などで、大根の価格は、平年よりやや高めに推移していますが…。

客
（最近大根買っていますか？）
客
「買っています。１本だと多いので半分。（食品の）値段は全部上がってきているので。でも必要なので大根買います」
「バラ肉と大根の味噌煮とか大根おろし」

焼きサンマに添える大根おろしや、煮物に漬物…。

大根は食卓に欠かせない野菜です。

しかし、北海道内の大根の生産地は、近年、変わりつつあります。

大根 生産者
「（生産の）ピーク時は年250トンくらい。今は１トンとらない」

大根の生産が減少するワケと、大根の未来をもうひとホリします。

北海道十勝地方の芽室町の畑では、大根がすくすくと育っています。

大根の収穫は、手間がかかって人件費がかさむうえ、専用の収穫機も必要になります。

こうしたことから、生産者の大根離れが進んでいるといいます。

廣瀬農場 廣瀬孝恭社長
「生産する農家も減ってきて（ＪＡの）施設も老朽化してきたと。経費もかかるし農協は儲からないと（撤退した）」

ＪＡ芽室は、町内の大根を集めて、選別や出荷を行っていましたが、２年前に事業から撤退。

大根の単価が安く、今後の採算が見通せないという理由でした。

各生産者は、出荷までの全作業をやることになり、負担が増しています。

農林水産省の調査からも、全国の大根の収穫量は、10年間で２割近く減っていることがわかります。

芽室町の「ファーム・ミリオン」は、ＪＡ芽室の事業撤退を受けて、大根の生産を大幅に縮小しました。

ファーム・ミリオン 菊地英樹社長
「うちの農場は29ヘクタール。（大根の生産は）ピーク時は年250トンくらい。今は１トンとらない」

今は、生産のメインをブロッコリーや長芋に変え、大根は自社で漬物に加工する分しか作っていません。

ファーム・ミリオン 菊地英樹社長
「『大根高い』と表現されるがいくらだと高いのか、僕らで言うと100円以下なら作る意味がない。これが札幌の市場の近郊だったら運賃が安いとか自分で持ち込めるとか、そこの５円、10円が跳ね返ってくる。結果的に高く売れないと（大根は）いらないということになる」

一方、となりの帯広市では…。

ＪＡ帯広大正農協青果課 平山康平さん
「ブランドとしては『大正だいこん』ということでやらせていただいている」

帯広市の大正地区で1990年から作られている「大正だいこん」です。

ＪＡ帯広大正は、2007年に「大正だいこん」の名前を地域団体商標に登録し、ブランド化を進めています。

十勝地方の昼夜の寒暖差と、水はけのいい火山灰地がはぐくむ大根は白くて甘く、煮ると柔らかいのが特徴です。

当初10ヘクタールほどだった作付面積は、今では30倍の300ヘクタール、年間収穫量１万2000トンの規模になりました。

川岸農場 川岸祐貴社長
「なんとか『大正だいこん』を守りたいという気持ちで踏ん張っている」

ＪＡの施設には、大正地区で収穫された大根が次々と集まってきます。

ここでは、大根の洗浄や葉の部分を切りそろえるなどの作業を多い日は100人のスタッフで行います。

また、重たい大根の箱を運ぶ作業にはロボットも導入しています。

ＪＡと生産者たちが連携しなければ事業の継続は難しいといいます。

ＪＡ帯広大正農協青果課 平山康平さん
［生産者の経費は１割強から２割は上がってきていて、われわれ選果場運営も経費上昇はやはり苦しみますが、生産者と協力しながら産地を守っていく。努力していかなきゃならない。大根需要が年々薄れてきているのが肌で感じる。皆さんに手に取ってもらうのが第一」

同じ十勝地方でも、大根の生産が減る地域もあれば、生産に力を入れる地域もある。そういう状況なんですね。

JA帯広大正のブランド化ですが、「大正だいこん」のほか「大正長いも」「大正メークイン」を国が認める地域団体商標に登録しています。これにより、名称が保護され、商品の信用力やブランド力がアップするんです。

「大正だいこん」は出荷の６割が関西地方、２割が関東と、本州方面からの引き合いが強いそうです。

一方で、ＪＡ帯広大正によりますと、今後の課題は、生産者の高齢化だということです。

大根の生産では、北海道は千葉に次ぐ国内２位。今がまさに旬の大根を食べて応援したいですね。