【知床沖観光船沈没事故】「KAZU I」はあの日なぜ出航?運航会社のずさんな管理体制 2年5か月経っても事故の影響続く…北海道斜里町ウトロのいま
北海道放送 / 2024年9月18日 22時41分
観光船「KAZU I」が出航した北海道斜里町のウトロ漁港から中継です。
■ナギーブ モスタファ記者のリポート
私は今、知床半島の周りをめぐる観光船の発着場となっているウトロ漁港に来ています。
2022年の4月、この港から「KAZU I」も出航しました。事故当日とは異なり、現在、波は凪いでいます。
事故を起こしたカズワンの運航会社の事務所は当時と変わらないものの、今は看板を外し、シャッターは降りたままになっていました。
事故から2年5か月が経ちましたが、別の観光船の事業者に聞いたところ、乗客数は、未だピークだった頃の半分にも届かないということです。
18日は、客の数が集まらず中止になったツアーもあり、事故の影響は続いています。
桂田容疑者の逮捕の報せを受けて、観光船の事業者は、「逮捕されたからといって客がすぐに戻ってくるわけではない。自分たちは安全運航を続けていくしかない」「遺族の方々が納得するような形で進展してくれればいい」と神妙な面持ちで話しました。
また、他の観光関係者からは、「町民の中には捜査がなかなか進展しないことに、もどかしさを感じている人もいた」という声も聞かれました。
捜査の進展に注目が集まる中、多くの命が奪われた沈没事故と、その後明かされたずさんな管理体制をいま一度振り返ります。
北海道斜里町ウトロにあるHBCの情報カメラです。
事故当日「KAZUⅠ」の姿を捉えていました。映像を拡大すると乗り込む乗客たちの姿も確認できます。
KAZUⅠの運航会社 元従業員
「(出航前の客は)何もこれから予期できないことが起こるとは思っていない。普通に笑っていたりしてた感じ」
事故当日、港で船を見送った運航会社の元従業員です。乗客の表情を鮮明に覚えていました。
KAZUⅠの運航会社 元従業員
「そのカップルも知っている。若いカップル。(親に)抱かれて入ってきた、タラップで。小さい子もいるんだなって、そのとき見たんだ、ちっちゃい子、3歳の子はね」
沖合は一見穏やかに見えますが、現場周辺は、すでに強風注意報と波浪注意報が出ていました。
「KAZUⅠ」の出航中止の風速は8メートル。
一方、強風注意報の発表基準は、それを大きく上まわる平均15メートル(海上)で、強風注意報が出れば出航できないはずでした。
知床遊覧船 桂田精一社長(61)(2022年4月の記者会見)
「海が荒れるようであれば引き返す『条件付き運航』ということを豊田氏(船長)と打ち合わせ、当時の出航を決定いたしました」
事故発生直後の記者会見では、事故当日の午前8時、豊田徳幸船長と相談して決めたとする桂田社長。
そもそも国は、安全管理規程の徹底を指導し「条件付き運航」という方法を認めていません。
しかし、桂田社長は私たちの取材に…。
桂田精一社長のコメント
「(事件当日の)朝は天気よかったから『いつもやっているように』と。2016年に社長を引き継ぐ前から『条件付き運航』をしていた」
さらに事故発生時、安全管理規程で、航行中は事務所にいるべきとされる運航管理者の桂田社長は不在でした。
代行するはずの運航管理補助者は、「KAZUⅠ」を操縦していた豊田徳幸船長だったのです。
桂田社長は、ずさんな安全管理体制の下で、リスクを認識しながら出航を判断した疑いがあるのです。
KAZUⅠに乗っていたのは乗客と乗員26人。
このうち3人は、北方領土の国後島などで見つかり、小樽に戻って来るまで約5か月を要しました。
貴田岡結衣記者
「午前8時です。3人を乗せた巡視船『つがる』がゆっくりと小樽港に入ってきました」
そして、今も乗客6人の行方がわかっていません。
これは、2023年9月、国の運輸安全委員会が公表した最終報告書です。
沈没の原因として注目したのは船首・甲板部にあるハッチでした。
ハッチのフタが確実に閉まる状態ではなかったため、「KAZUⅠ」は1メートルを超える波が打ち込む中、船体の揺れでフタが開いて海水が流入。
その後「船首」、「倉庫」、「機関室」、「舵機室」へと浸水が拡大し、カシュニの滝の沖に沈んだと結論付けました。
運輸安全委員会の報告書に桂田社長は…。
桂田精一社長のコメント
「事前の検査では何も言われなかった。(調査結果に)驚いた」
KAZUⅠは、事故のわずか3日前、国の検査を代行するJCI=日本小型船舶検査機構が行った中間検査に合格していました。
その際、JCIはハッチの動作は確認せず、目視のみで良好な状態であると判断していました。
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