国内生産量の約9割を占める北海道のコンブがいまピンチ 海水温上昇などで激減する生産量 研究者も人気ラーメン店も危機感を募らせる中、コンブの資源回復を目指す取り組みも…
北海道放送 / 2024年11月13日 20時56分
これからの季節、心も体も温めてくれる鍋。 欠かせないのが出汁としても、食材としても美味しい、コンブです。そのコンブが…。
利尻屋みのや 蓑谷和臣社長
「この先いつまで、コンブに携わっていられるのか…」
北海道大学(水産学)四ツ倉典滋 教授
「バランスが保たれていれば(コンブの)森は守られる。それが崩れると一気にコンブがなくなってしまう」
私たちの食文化を支えるコンブに、いま何が起きているのでしょうか。
開店前から行列ができる札幌のラーメン店です。人気メニューは、道産の3種類のコンブ出汁を使った『昆布水(すい)つけ麺』。
店では、年間100kg以上のコンブを使うそうですが、いま危機感を募らせています。
麺鐘馗 中野貴匡 店長
「来年以降は分からない。仕入れがなくなれば今のメニューをストップして、違うメニューを作っていかなければならない。そうならないように祈るばかり」
北海道産のコンブは、国内生産量の約9割を占めています。しかし、生産量は1992年度の約3万2,000トンをピークに年々減少し、2024年度は約8,900トンと、初めて1万トンを下回る見通しです。
小樽にあるコンブの専門店も、不安を口にします。
利尻屋みのや 蓑谷和臣社長
「浜のほうに預かってもらっているコンブが、すっからかんの状態。(需要に)見合うだけの供給が確保できるかどうか…」
香り高く、澄んだ出汁が取れる『利尻昆布』に、長さ5メートルを超えるものもある『函館の真昆布』。
コンブは、いまやヨーロッパでも料理のベースに使われ、海外の観光客にも、土産として喜ばれているそうです。
利尻屋みのや 蓑谷和臣 社長
「生産量が減るとコンブの単価も高くならざるをえない。単価を抑えるために安定供給を望んでいる」
コンブの生態に詳しい北海道大学の四ツ倉典滋教授は、2023年の猛暑が、特にコンブの生育に影響したとみています。
北海道大学(水産学)四ツ倉典滋 教授
「(去年は)夏から秋にかけて、水温が高くなってコンブが成熟しない、成熟しても種が採れない」
コンブは、出荷できる大きさに育つまで2年かかります。生育に適した海水の温度は10℃~16℃ですが、2023年の夏の海水温は20℃を超えていて、生育に影響したとみられます。
海水温の高さがコンブにも影響を与えているとのことですが、北海道立総合研究機構(道総研)によりますと、2024年の海水温は、2023年ほどの上昇はなく、2025年度の生産は一定程度、回復するのではないかということです。
コンブが減少している主な原因は、海水温の高さということですが、要因は他にもあるそうです。
北海道大学の四ツ倉典滋教授に、コンブの生産量が減る要因を聞いたところ、次のようなものがありました。
■海水温が高い
■海洋汚染
■流氷により削られる
■生態系のバランスが崩れ、ウニなどにコンブが食べられてしまう
また、漁業の後継者不足や、消費者の“コンブ離れ”も生産量の減少に関わっているということでした。
そして、北海道ぎょれんによりますと、生産量が減ることで、流通価格の上昇も避けられない見通しで、私たちが普段購入する、だし用や、そのまま食べるコンブも、値上がりするだろうとのことです。
そんな状況のコンブですが、生産量を増やす取り組みも始まっています。
北海道大学(水産学) 四ツ倉典滋 教授
「これはいずれも高温耐性のコンブ。高い水温の海に入れても、成長して伸びていくようなコンブです。通常のコンブの養殖種苗は16℃~17℃で海に出すが、これらは23℃~24℃で海に入れて残ったものです」
四ツ倉教授がいま、地元の漁協などと進めているのは、コンブの「品種改良」です。
コンブの突然変異を人工的に起こして、水温の高い海でも生きられる品種を作ろうとしています。
北海道大学(水産学) 四ツ倉典滋 教授
「将来の環境を予測して、そこで育つコンブを作っていく。北海道の宝物なので、しっかり守っていくことが北海道に暮らす私たちの使命」
10月、函館のコンブ加工場を訪れたのは、水産の研究をしている大学生たちです。コンブを食べてみた感想は…。
大学生
「しょっぱい」
「途中からねばねばしてくる」
コンブの養殖研究などに携わる人材を育てようと、北海道大学が2023年から行っている演習です。
コンブの養殖に使うロープを実際に手に取り、“現場”を肌で感じます。
大学生
「僕は貝(が専門)ですけれど、(コンブが)直面する問題について知ることは、僕の分野でも重要だと思って参加した」
「どういった形で種苗生産しているかを知れて、有用な知見が得られた。将来は養殖に携わりたい」
品種改良について、今後数年以内に高温に強い品種を確立したいということです。
しかし、実際に海で育てるとなると、生態系への影響を考える必要性や、ほかの漁師から了解をもらうなどのハードルがあり、まずは品種を確立することから取り組んでいるということです。
コンブの国内生産量の9割が北海道です。日本の食文化を守っていくためにも、資源回復に向けた取り組みが、実を結んでほしいと思います。
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