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崩れ始めた“103万円の壁”北海道と札幌市で計1100億円超の減収 鈴木直道知事「行政サービスの影響を懸念せざるを得ない」

北海道放送 / 2024年11月22日 20時56分

年収103万円の壁について、道と札幌市ではあわせて1100億円を超える減収となる見込みです。

およそ30年間、立ちはだかってきた年収103万円の壁が、崩れようとしています。

自民・公明・国民の3党で合意文書を交わした、いわゆる「年収103万円の壁」の見直し。今後、控除額の引き上げ幅などを議論していくことになりました。

国民民主党 玉木雄一郎代表(19日の記者会見)
「これから議論が始まっていくと思うが、我々としては当初から主張している178万円をしっかりと主張していく」

実現すれば、私たちの手取りが増える大幅減税の一方で。

鈴木直道 北海道知事
「(減収が)500億円の後半になってくると、どうしても行政サービスの影響を懸念せざるを得ない」

札幌市税制課 角田純一市民税課長
「非常に粗い試算ではあるけれども、大体500億円後半ぐらいの規模の減収になる」

道内からは、大幅に税収が減ることへの懸念の声も上がっています。

北海道文教大学 宮本融教授
「働けば働くほど手取りが純粋に増える形にしてかなきゃいけないという問題意識は元々あったんですよ、現実の問題としては、それが政争の具になっちゃって…」

1995年から続く103万円の壁。

その見直しが、私たちの暮らしにどう影響するのか「もうひとホリ」します。

22日午前、札幌市西区にある、弁当の製造・販売会社「日信」です。創業から半世紀。人気は、大きな鮭の切り身が入った「鮭とナス弁当」。1日約2万食の弁当を提供しています。それを支えているのが、約130人のパートの従業員です。

日信 松村貴洋社長
「12月近くなってくると、やっぱり働けないよということがどうしても発生するので、その部分がなくなれば少しでも働いてもらえるなと

現在、103万円を超えると所得税の負担が生じる「103万円の壁」があります。これを壊し、特に国民民主党は「年収178万円からにしよう」と主張しています。

仮に、税金がかからない枠が、ここまで引き上げられた場合、年収200万円の人は、約8万円(8万2000円)300万円だと、約11万円(11万3000円)500万円では約13万円(13万3000円)800万円の人は、約23万円(22万8000円)手取りが増えることになります。

こちらの会社では、パート従業員それぞれが「103万円」を超えないように、働く時間を調整しています。

会社は、忙しくなる年末に働いてもらいたい。しかし、働きたい気持ちがあっても、抑えざるを得ないといいます。

パート従業員(30代【扶養あり】)
「壁があると、セーブしなくちゃいけないとか気にしちゃうので、無い方が気にせず働けるのかなと思う」

パート従業員(60代【扶養】)
「夫からも(103万円に)抑えるように言われている。もうちょっと働きたい気持ちはあるけど、やっぱり106万円を超えちゃうと社会保険にはいらなきゃいけなくなるし」

日信 松村貴洋社長
「年収106万超えると社会保険がどうしても払わなきゃいけないとなってくるので。できれば(社会保険を)かけないで働いてくれる人にやってもらった方がいいのかなとなると。(年収103万円の)壁が変わったところでどうなのかな」

一方、年収の壁を178万円に引き上げた場合、税収が減るので、国の財政は悪化します。財務省は、国と地方合わせ、7兆円から8兆円の税収減になると試算しています。

道内唯一の政令指定都市、札幌市の税の担当者です。

札幌市税制課 角田純一市民税課長
「地方自治体においては、市税収入というのは非常に重要な財源になってますので、そこに大きな穴が開くということになればですね、非常に影響が大きいのかなというふうに思ってます」

年収103万円の壁を見直した場合、札幌市の個人住民税の減収は、500億円台後半になるというのです。これは、市税収入全体の1割、個人住民税の3割に相当する金額が減る計算です。

札幌市税制課 角田純一市民税課長
「実際に、どういう制度になるかというのは、これから始まっていく議論の中で、決まっていくものだと思いますので、具体的な対応、対策っていうのは、まだなかなか見込めない」

また22日、会見で鈴木知事も。

道鈴木直道知事
「あくまで機械的に計算した、道の個人住民税の減収額については500億円台の後半という風に見込まれる。500億円の後半になってくると、これはどうしても行政サービスの影響を懸念せざるを得ない」

元通産官僚で、政治学が専門の宮本教授は、自治体によって差はあるものの地方にとっては、デメリットが大きいと指摘します。

北海道文教大学 宮本融教授
「これだけ予算キツキツのときに新しい財源どうやって見つけるのかって言ったら頭痛い話です」

間もなく議論がヤマ場を迎える“103万円の壁”の『落しどころ』は。

北海道文教大学 宮本融教授
「これは普通に考えたら130万円を超えるかどうかっていう落しどころですよ。所得税の壁は大した話じゃないから。それで113万じゃ多分誰も納得しないでしょ。だけど150万超えてきたらしょうがないかなってなると思いますけど(中間カット)国民民主党が収まるかどうかって話ですよね。今までは自民党の党内プロセスでしたけど、そこにやっぱりその国民党と公明党の動きがここをどう絡んでくるかっていうのは2024年の勝負だと思いますね」

「働く人の手取りを取るか?」それとも「国や地方の税収を取るのか?」

自民、公明、国民の3党は、年内に結論を出す方向で、議論を続けています。

「103万円の壁」以外にも社会保険料の負担が発生する「106万円の壁」や国民年金などを自ら支払うことになる「130万円の壁」もあり、これらは「社会保険料の壁」と呼ばれています。

自民・公明・国民の3党は、年内の結論を目指していますが仮に、目の前の手取りを増えても、将来に不安が残る制度では本末転倒です。十分な議論もまた、必要です。

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