子どもたちが“週4日”通う寺、現役の教師がボランティアで…小中学生約140人の北海道利尻富士町の学習塾「寺子屋」
北海道放送 / 2024年12月2日 21時11分
北海道北部・利尻島の寺では、マチの人たちの要望から今年2月に始めた取り組みが人気を集めています。
覚えていますか?中学1年生の数学です。
主に数学担当 加藤賢司先生
「子どもの人数をXとして、条件が出ていますね」
これこれ!そう、関数です。この授業、行われているのは…なぜかお寺です。
稚内市からフェリーで2時間弱、利尻島です。地元の人が自慢を込めて「利尻富士」と呼ぶ「利尻山(ざん)」。この美しい山に魅せられ人口2167人の利尻富士町には、年間約10万人の観光客が押し寄せます。
登山の安全を願う太鼓。
「大法寺」は、利尻山の登山者が多く訪れる寺ですが、マチでは「別の顔」でも、知られるようになりました。
この日、島の子どもたちが、やってきました。
数学担当 加藤賢司先生
「では、あいさつをお願いします」
生徒
「気を付け。はじめます」
数学担当 加藤賢司先生
「はい、はじめます」
「寺子屋・禅力」。文字通り、寺の学習塾です。
英語担当 森川亜美さん
「時間を表す言葉「きのう」は「Yesterday」。「あした」は「Tomorrow」」
これは、小学5年生の英語の授業。
利尻富士町には、およそ140人の小中学生がいますが、去年、町で唯一の塾が、突然閉鎖されました。
大法寺 廣澤一徳住職
「島で塾というのが無くなってしまって、子どもたちが勉強したくてもできない環境だったので、うちで何かできないかなと思って(始めた)」
そこで、今年2月から、近くの鴛泊中学校の現役教師らが、ボランティアで講師をしているのです。
数学担当 加藤賢司先生
「地域に学習塾も無いということで、もし取り組めるんだったらどうでしょうかと(廣澤さんから)お話をいただいて、学校以外でも学んでみたいという子どもたちの気持ちを大切にできるのではと」
寺子屋には、小5から中3まで、30人の子どもが通っています。英語と数学の2科目で月謝は、小学生が1000円、中学生は1500円です。
保護者
「学校の成績も、少しずつですけど身についているのかなという感じはします」
「この先高校進学とかも考えているので、フォローをしてもらえるのはありがたいと思う」
教室の客間は「より身近にお寺を感じてもらえるように」と大法寺が、開放しています。授業は「週4日」。1回の授業は、定員6人の少人数制で、「学校の復習」や「テスト対策」など、子どもたちの学力やニーズに細かく応えます。
大法寺 廣澤一徳住職
「来ている子どものお母さんが「全力」っていいよねという話から、うちはお寺なので禅宗の「禅」をかけて、「禅力」にしようとなりました」
「互助の気持ち」。「丁寧な挨拶と礼儀」。「禅力」の壁に貼られた決まりごとは、寺ならではです。
10月から、新たに先生も増え、今の形になりました。
2年前、夫の転勤で利尻島にやってきた、中学校の支援員の経験がある森川さんです。
英語担当 森川亜美さん
「加藤先生1人では結構大変だっていうので、(廣澤さんが)5年生の英語だけでもやってくれると助かるなあということで、学校だけじゃなくて、塾だったり家でも勉強できる環境ができたらいいのかな」
数学担当 加藤賢司先生
「テキストの64ページを開いてください」
こちらは、中学1年生の数学の授業です。
数学担当 加藤賢司先生
「本当は6個ずつ配ることが、できるんだけれども」
利尻島には、高校が1校しかありません。高校進学をきっかけに稚内市や札幌市など、島を出る子どもも少なくありません。そのため、島には、子どもたちの「学びを支える場」が必要なのです。
中学1年生
「加藤先生の教えによって、平均点が結構上がった。」
「授業であまりできないところとか、この塾で結構できるようになって、テストも点が結構伸びてきているので」
「平均点よりは20点以上とか取れるようになった」
大法寺 廣澤一徳住職
「いま中学生であれば、利尻だけじゃなく全道に向けて受験できるような学力になってほしい」
数学担当 加藤賢司先生
「一人でも多くの子どもたちに「分かった」」「できた」ということを、伝えることができたらいいな」
小さな島で始まった「寺子屋」。そこには、島の未来である子どもたちへの期待と愛情が詰まっています。
利尻富士町では去年、突然閉鎖された塾の代わりになる場所をつくりたいとの「廣澤住職」と「加藤先生」の思いで「寺子屋」が誕生して、ようやく10か月が経とうとしています。
・堀啓知キャスター
廣澤住職、加藤先生2人の子どもたちの「出来ない」を「出来る」に変えてあげたいという気持ちは頭が下がりますね。
・HBC野球解説者 鶴岡慎也さん
教育格差は地方であってはならないものだと思いますので、そういう意味ではこの取り組みはものすごく素晴らしいものだと思うんですけれど、やはり加藤先生の負担が大きすぎるんじゃないかなと思うところもあります。そこが心配です。
・堀啓知アナウンサー
地方は教えるノウハウを持った人材が、一般的に少ないと思うので、どうやったら人材を見つけることができるのかというところなんですけれど、こういった寺小屋の活動をきっかけに、マチの中だけじゃなく外からも、「みんなで子どもたちの学びを支えよう」という輪が広がってほしいですね。
・畑ツアーを手掛ける 井田芙美子代表
お寺が解放されて、昔からある寺小屋という仕組みで子どもたちが来るということ自体は本当にすばらしい取り組みだなと思いました。町が運営する公設の塾や、それをサポートするNPOがあるので、ぜひいろんな方のサポートをいただきながら、お寺と先生だけじゃなく、いろんな方で支えて行けたらなと見てて思いました。
・世永聖奈キャスター
私の地元の猿払村には当時、塾がなかったので、中学校の先生にマンツーマンで放課後教えてもらっていました。本当にありがたかったです。
寺子屋では、今年の入会を締め切った後も、希望の問い合わせが後を絶たないため、生徒の受け入れ人数を増やすために常時、講師を募集しているということです。
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