札幌市の“敬老パス”見直しに利用者「私たちも働いて今がある」若者「交通費まで我々が」くすぶる困惑と不安…露呈する説明不足
北海道放送 / 2024年12月4日 20時41分
札幌市が制度の見直しを発表してから1年。利用者には困惑と不安が未だくすぶっています。高齢化が進む札幌市で、日常の移動方法に定着した市民サービスのあり方が問われています。
先週の土曜日、「対話」を求めて、180人が会場を埋めました。相手は、札幌市の秋元市長。テーマは、札幌市の敬老パスの見直しです。
・敬老パスを利用 70代女性
「『ポイント貯まるよりストレス溜まる』こういう声が出るぐらい多くの人の反応があった。この制度(敬老パス)を残してほしい。ただそれだけ」
・20代男性
「年金も介護も医療も全部、高齢者の福祉を現役世代が負担しているのに、交通費まで、われわれの給料から払わないといけないんですか」
・敬老パスを利用 80代女性
「若い世代と私たちの間に、断絶を分裂を作らないでほしい。私たちも一生懸命働いて、いま現在があるんです」
・札幌市 秋元克広市長
「市民1人当たりの負担感を今の状態で保たなければ、若い人たちの気持ちも維持していけない」
現在、70歳から地下鉄やバスなどで利用できる札幌市の敬老優待乗車証、いわゆる「敬老パス」です。迷走のきっかけは、去年11月、札幌市がスマートフォンのアプリを使ったポイント制度への移行案を示したことでした。
・札幌市担当者
「敬老パスは交通機関に乗っていく目的の交通施策ではなく、福祉施策ですので」
交通運賃の補助のイメージが強い敬老パスですが、札幌市が掲げる目的は「健康寿命の延伸」です。今回の見直しの理由に「目的」と「利用実態」の大きな偏りをあげます。
これは昨年度の敬老パスの利用状況を示したグラフです。
およそ半分の53%が「利用していない」一方で、およそ12%が「5万円以上」利用しています。これを支出でみると札幌市の負担額47億円の半分以上=約25億円を12%の人で使っているわけで、これは不平等ではないか?札幌市が主張する見直しの理由です。
先月、札幌市が示した見直し案です。
現在「敬老パス」を利用している人は、2026年度から4年かけて、自己負担額が引き上げられます。例えば、1万円をチャージする場合、26年の自己負担は2500円ですが、29年には5000円になります。
さらに上限額も、26年は7万円ですが、翌年から1万円ずつ引き下げられ29年には4万円になります。また、2026年4月以降、初めて利用する人は75歳から上限4万円の「敬老パス」の交付を受けるか、新たに導入される「健康アプリ」を65歳から利用するか、どちらかを選択することになります。
・敬老パスを利用 70代女性
「敬老パスはすごく重宝。本当に大事なものと思いながら使わせてもらっている。70歳過ぎてからも仕事をしながら(年金だけでは)自立した生活をするにはとても難しい」
・50代女性
「札幌市は若い人への負担があるという言い方をいつもされるが、(現役世代が)そう思っている人ばっかりではないと、言ったほうがいいのかなと思っている」
「敬老パス」を見直し、「健康アプリ」の導入を進める札幌市。利用者からは不安の声もあります。
波紋が広がる札幌市敬老パスの見直し問題。西区の若狭泰子さん77歳。年金生活のなか敬老パスを利用していますが、札幌市の対応に不安を感じています。
・敬老パスを利用 若狭泰子さん(77)
「敬老パスがあれば、なんとか自分で杖を突いてでも、公共交通機関に乗って行けるから使う人が多い。それがなくなると、にっちもさっちもいかなくなってくるんじゃないだろうか。アプリとなると、アプリをしてまでポイントを貯めに(動く)というのは違うのではないか」
この日は、週1度の手芸サークルの日。
・敬老パスを利用 若狭泰子さん(77)
「結構雪の多いところなので」
近所のバス停から、敬老パスを使ってバスで向かいます。ほかにも、病院での案内ボランティアや福祉活動の移動でも、敬老パスを利用しています。
手芸サークルでも、敬老パスについての話題が。
・70代女性
「(ポイント制度だと)出歩く回数も少なくなるでしょうし、健康が損なわれる方に結び付くような危惧を抱いている」
・70代女性
「限られた予算の中で私たちだけがっていうのは、ちょっとあれかなって、無理は言えない。(敬老パスは)すごいありがたいですけど」
・敬老パスを利用 若狭泰子さん(77)
「見直しすることは必要なこと、今まで上限7万円だったのは、札幌市は見直し案が全体にわかるように納得がいくようにしたら不平不満もないかなと」
26年度以降、新たな制度の導入姿勢を崩さない札幌市。
・札幌市 秋元克広市長
「そういうお願いをしていかなければ、このあと制度が続いていかない。皆さんと一緒に考えさせてください」
今は、高齢者1人を2.1人の現役世代が支えていて、双方が納得する制度の改正が求められています。
取材した記者が、秋元市長との意見交換会に参加した市民に聞きました。
敬老パスの利用者の多くは「若い世代の負担や財源の問題から、上限額や自己負担額を見直しすることは理解できる」といった声や健康アプリについては「どのくらいポイントがもらえるか、説明がなく不安」という声が聞かれました。
また、30代から50代の市民からは「制度の見直しは必要だが、敬老パス自体をなくす必要はないのではないか」といった声が聞かれました。
いろいろな声を聞くと、制度をめぐる世代間の対立ということではなく、定着した制度を変えるにあたり、札幌市側の説明が不足しているようです。
札幌市は、16日から来年1月20日まで、修正案について市民から意見を募るパブリックコメントを行い、来年の市議会で修正案が審議される予定です。
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