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“脱パワハラ宣言”長谷川岳参院議員のその後「市民は不在」疲弊する自治体職員との溝埋まらず“裏金事件”後に姿を消した堀井学氏【2024年揺れた政治への信頼】

北海道放送 / 2024年12月29日 7時56分

衆議院の解散総選挙など今年、大きな動きのあった道内の政治。新証言とともに、今年の政治を揺るがせた出来事を振り返ります。

◇《自治体職員への“威圧的な言動”》
・自民党 長谷川岳参院議員(2024年5月29日)
「このたび、地方創生および、デジタル社会形成等に関する、特別委員長を辞することといたしました」

5月、時代の花形、地方創生やデジタル分野の参議院の特別委員会委員長を辞任した、自民党の長谷川議員。

3月に札幌で開催された会合において、次のような長谷川議員による発言の音声データが残されていました。

長谷川議員:「札幌市の連中」

札幌市職員:「はい」

長谷川議員:「要は規制緩和を全部通すようにやってるよ。あんたから1回も、ありがとうもクソもメールもない」

札幌市職員:「はい」

長谷川議員:「ありがとうもない、結果もない」

札幌市職員:「はい」

長谷川議員:「誰だお前は?って感じだよね」

札幌市職員:「はいはい、申し訳ございません」

札幌市や道の職員に対する威圧的な言動。忖度ともとれる過度な面談。過去5年間の、道の長谷川議員との面談を伴う出張は、のべ1488回。旅費は1億2000万円を超えました。

同じ時期、札幌市の出張回数も500回に及びました。

・自民党 長谷川岳参院議員(2024年6月)
「14年間の中で、おごりがあったことをお詫びしたいと思います。ゼロからやり直します、どうぞよろしくお願いいたします」

パワハラ騒動以降『時代に即した表現方法に変える』と誓った長谷川議員。

◇《長谷川議員の“脱パワハラ宣言”…それから》
12月25日、長谷川議員がHBCの取材に応じました。

・自民党 長谷川岳参院議員(2024年12月)
「お恥ずかしいんですが、まず一つ、小学生以来だったんですが、日記をつけるようになりました。10月1日に十分反省しながら『脱パワハラ宣言』というのをしましたので」

半年間、パワハラについて勉強し今後、パワハラをすることはないと断言した、長谷川議員。

一方で、今回匿名を条件に取材に応じた、道と札幌市の幹部職員は秋以降、長谷川議員が指示する業務の依頼が、再び増えてきていると訴えます。

◇《業務量は再び増加…市職員の絶望感は大きい》
・道庁の幹部職員
「口調は、かなり気を使ってらっしゃるということですが、ただ指示いわゆる発注などの量はですね、かなり戻ってきている印象」

騒動の後、長谷川議員のもとへの出張は減り、道と札幌市は、下の立場の職員には、長谷川氏と直接面談をさせず、上層部の限られた幹部職員だけが、オンラインなどで面談することになりました。

・道庁の幹部職員
「最近ほぼ毎週、行われていて、その中でかなり多くの指示が飛んで、それがまた、次の週に返すようなアクションが求められたり、その間で何度も、長谷川参議に資料などを届けるというような実態に戻っている」

・札幌市の幹部職員
「彼への資料作りだとか根回しだとか、本来、必要がない業務に、相当な時間と経費がかかっている。その状況は、一連の騒動が明らかになった以降も変わっていない。それに対する職員の絶望感は、非常に大きい」

◇《幹部職員らの証言について長谷川議員は?》
こうした訴えに対し長谷川議員は、私たちの取材に対し、こう答えました。

・自民党 長谷川岳参院議員(2024年12月)
「札幌市の職員の皆さんも、税金以上に働いて、やっぱり次の世代の安心できる環境を作る出すという使命感を持っていただくことは、発想のチェンジをしていかだかないといけないので…。件数が増えて仕事が増えた、これ当たり前の話。われわれからすると“増えてありがたい”と、私はやってきましたし、これからもその方針は変わらない」

◇《長谷川議員が呼びかけた視察会…自治体幹部らが参加》
12月13日、愛知県名古屋市のスタートアップ企業を支援する施設で開かれた視察会。

主催は札幌市で、参加者には札幌市や道の幹部、経済団体のトップらが名を連ねます。

参加していた国会議員は、長谷川議員のみ。視察の目的や内容は何だったのか。懇親会場の前で、長谷川議員を待ち構えました。

記者:「長谷川参議、長谷川参議?」

長谷川議員:「…」

札幌市や道の幹部によりますと、長谷川議員が呼びかける視察会やセミナーは騒動の前は、頻繁に開催されていたといいます。

・道庁の幹部職員
「メンバーリストの作成、それから声かけ状況。2次会への呼びかけ、あと登壇者のアレンジメントをすべて細かく指示されますので、与野党問わず、いろんな議員が参加しているのであれば、いいと思うんですが…」

「特定の議員のみの、こと細かい指導のもと、開催していることについて、われわれ行政として、政治的な中立性、国家地方公務員としての中立性の観点から、疑問を持たれる可能性はないとは言えないと思いますね」

◇《中央省庁との“パイプ役”として頼らざるを得ない事情も》
しかしながら、札幌市や道には、政策を実現するために、中央省庁との「パイプ役」として、長谷川議員に頼らざるを得ない事情もあります。

6月に政府は、国内外の資産運用会社の参入を促す『金融・資産運用特区』に、道と札幌市の『GX=グリーントランスフォーメーション特区』を選びました。

また、札幌丘珠空港の30年に向けた滑走路延伸計画も、長谷川議員の働きかけがあったと言われています。

・北海道文教大学 宮本融教授(元通産官僚)
「国会議員として階段を上がっていくには、2種類方法があると言われていて“優等生”と”うるさ型”というか、”うるさ型”という人は人間関係で嫌われますけれど、やってしまえば、自分の言ったことは通す、通るんですよ」

◇《国会議員と地方職員はどう関わるべきか》
一方、弁護士で、衆院議員と兵庫県の明石市長を務めた経験のある、泉房穂さんは、国会議員が、地方自治体の職員と関わること自体が問題だと指摘します。

・前明石市長・元衆院議員 泉房穂さん
「ちゃんと筋の通ったことをやったら、ちゃんと適正に補助金は出ます。当たり前ですやん。口利きしなかったり、パイプがなかったら出ないわけじゃないんです。勘違いです」
「そこの言動が別にきつくなかったって、国会議員のために、地方の職員が動くことそのものが、おかしいわけですから」

これに対し長谷川議員は『北海道の成長戦略の戦いを覚悟を持ってやっている。行政に関与するのが政治家だ』と主張しています。

◇《長谷川議員との面談は録音するとされたが…》
札幌市は今年4月、一連の騒動を受け、今後、長谷川氏との面談の際には、音声を録音すると、明らかにしていました。

しかし、札幌市の幹部職員は「これまでのような議事録の作成や録音の共有がなくなった」と話します。

・札幌市の幹部職員
「以前よりも何が進んでいるのか、どんなことが話題になっているのかは、ダイレクトには掴みにくい知りにくくなっているような感じがする」

「市役所なのに、なんで国会議員の言うことを守って仕事しているのかと、そこに市民は不在なんですよね」

年末の記者会見で、職員からこうした声が上がっていることについて問われた秋元市長は…

・札幌市 秋元克広市長
「録音の中で、現実的に威圧的な言動というものが、確認されたとは聞いていませんので…。単なる『やらせられ感』みたいな形が問題なのであって、そうではなく必要な項目として理解をして行動をしていくということについて、仮に一部の職員がそう思っているということであれば、それはやはり、きちんとした説明なり、仕事の指示の仕方にも課題があるのではないかと思わざるを得ない」

仕事量とスピード感を求める長谷川議員と指示に疲弊する自治体職員。双方の溝は、まだ埋まっていません。

◇《自民党裏金問題…堀井元参院議員に批判が殺到》
2023年12月、派閥の政治資金パーティーをめぐり、派閥から受け取ったキックバックを政治資金収支報告書に記載していなかったことが明らかになった自民党の「裏金問題」。

問題を受け、自民党は安倍派と二階派に所属する議員39人を処分。

道内では4人の議員に不記載がありこのうち、2196万円の堀井学衆議院議員、2057万円の橋本聖子参議院議員、990万円の和田義明衆議院議員が、党の役職停止や戒告の処分を受けました。

・堀井学元衆院議員(2024年1月の会見)
「政治不信を招きましたことについて、国民、道民、そして私の選挙区である胆振日高の有権者の皆さまに深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」

騒動後、4人の議員の中でいち早く謝罪会見を行ったのは、堀井学元議員でした。

しかし、裏金を受け取った経緯や使途について十分な説明をすることなく会見を打ち切ったことで批判が殺到。

さらに、地元の後援会や支援者にも説明責任を果たしていないとして、身内から公然と批判を受けることになります。

・堀井学元衆院議員(2024年6月の不出馬会見)
「政治家として、1人の男として、人間として、けじめをつけたいという思いでありました。そこで次期衆院選に出馬しないという決断に至った次第であります」

◇《元後援会長が語った堀井氏をめぐる問題の背景》
しかし、問題はこれだけでは終わりませんでした。

・貴田岡結衣記者(2024年7月・北海道登別市)
「東京地検特捜部の係官が段ボールを持って、堀井議員の事務所に家宅捜索に入ります」

堀井氏は、公職選挙法違反と政治資金規正法違反の罪で略式起訴され、有罪が確定しました。

・伊藤凛記者(2024年12月・北海道登別市)
「裏金発覚から約1年。堀井氏が使っていた登別の事務所は、騒動とは一転、静けさに包まれています」

今回、堀井氏の元後援会長が、初めてHBCのインタビュー取材に応じました。

周囲とうまく付き合うことのできない堀井氏の性格が、事件を招いたのではないかと振り返ります。

・堀井学 連合後援会 山口志郎元後援会長
「スポーツマンらしい反面、やっぱり個人競技の選手でしたから、スピードスケートの。自分の悪く言えば我が強いと…。真面目だけど頑固。自分がこう思ったらっていうところは、きっとあったと思いますよ。それがちょっと悪さしたのかな」

事件後、堀井氏は姿を消しました。

裏金問題が大きな争点となった2024年10月の衆議院選挙で、自民党は大敗。道内の議席を10から6に減らすこととなりました。

政治とカネの問題に揺れた2024年。道民は来年こそ、クリーンな政治の実現を願っています。

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