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旧優生保護法補償法17日施行、違憲判決から半年「つらい、悔しい」手術強制された亡き妻、聴覚障害どうしの夫婦が奪われた子を産み育てる権利

北海道放送 / 2025年1月16日 21時0分

札幌に住む高橋英弘さん86歳。6年前に亡くなった妻・勢津子さん(79歳で死去)に毎朝、手を合わせます。

高橋英弘さん(86)
「妻は積極的にいろいろな人と話すのが上手でした。自分は人付き合いが苦手だけど」

生まれつき耳の聞こえない高橋さんと勢津子さん。

28歳で結婚。その後、勢津子さんの妊娠がわかりました。

高橋英弘さん(86)
「兄弟にされたことなのでしかたない…。それはしかたないと思いました」

「しかたないこと」。高橋さんがそう繰り返すのは、勢津子さんが強制された不妊手術です。

1948年、戦後間もない日本で制定された「旧優生保護法」。

「不良な子孫の出生を防止するため」として、障害のある人やハンセン病の患者らに対し、法の下で、不妊手術を強制したのです。

1996年に改正されるまでの48年間で全国で、少なくとも2万4993人が手術を受けました。

原告:19歳の時強制不妊手術を受けた小島喜久夫さん(当時76)
「同じような思いの人に対して、私も戦っていくから出てきてほしい」

長年、放置されていた問題が動いたきっかけは2018年。

被害者たちは賠償を求めて国を提訴し、その動きは全国に広がりました。

そして2024年7月に最高裁は…『旧優生保護法は憲法に違反する』

最高裁の判断は「違憲」。国に賠償を命じる判決が確定しました。

岸田文雄 前総理(2024年7月当時)
「政府の責任は極めて重大なもの。心から申し訳なく思っており、政府を代表して謝罪申し上げます」

政府はそれまでの方針を一転させ2024年10月、被害者に対する補償法が成立。

2025年1月17日、施行されます。

高橋さんの妻、勢津子さんは、「つわりがひどい」と訴え母や兄とともに病院を受診したときに、同意なく、不妊手術を受けさせられました。

高橋英弘さん(86)
「(病院から戻って)妻は元気になったけれど(妻の家族から)何もない。何も一切話はなかった。本当に何もない…」

当時は、親の障害や疾患が、子どもに遺伝するという偏見が根強く、手術の事実を知っても、声をあげることができなかったといいます。

高橋英弘さん(86)
「(妻は)激しくは言わなかったけれど、『つらい、悔しい』と言っていた。自分は『しかたない』と言い聞かせていた」

晩年まで悔やんでいた勢津子さん。

亡き妻の思いに寄り添い、高橋さんは国に補償を申請する考えです。

被害者を支援する弁護士は、補償をどう行き渡らせるかには被害者へ情報を周知することに課題があると訴えます。

旧優生保護法被害者弁護団・小野寺信勝弁護士
「(前身の)一時金支給法のことは知っていたが、差別や偏見で申請できなかった人も多くいる。障害特性として情報が届けにくい人も、なかにはいる。被害者に補償情報を届けるのは、ハードルとしてはかなり高い」

申請には手術記録や手術痕による証明が必要ですが、手術を受けてから何十年も経っていて、証明が難しい被害者も多いとみられています。

旧優生保護法被害者弁護団・小野寺信勝弁護士
「(国は)障害者に対して行うべき手術だと浸透させて、有性思想や差別・偏見を広げたという面がある。そこを改善していくことが国に求められている」

子どもを産み、育てる権利を奪った「旧優生保護法」。

法律はなくなっても、障害者への差別や偏見は社会に残されたままです。

◇被害者補償法◇
1月17日に施行される「被害者補償法」。その制度を紹介します。

対象:不妊手術を受けた本人と配偶者

補償額:本人1,500万円、配偶者500万円

また、人工妊娠中絶を受けた本人には200万円が支給されます。

北海道内で旧優性保護法による不妊手術を受けた、対象者は3224人で全国最多です。

一方、補償金の申請を予定している人は、1月16日までに数人程度と見られています。

なぜ、少ない人数となっているのか?小野寺信勝弁護士は予想される理由を次のように説明します。

▶差別や偏見を恐れ、家族や周囲に話していない人
▶傷害の特性によっては、情報が届きにくい人もいる

例えば、知的障害のある人は文章の理解にサポートが必要なこともあり、それぞれの障害にあわせた伝え方が求められています。

小野寺弁護士は、まず弁護団に相談してほしいと呼びかけています。

【旧優生保護法・補償相談窓口】
北海道弁護士団 011‐231-1888

また、北海道も、プライバシーに配慮した受け付け体制や無料で相談に応じる弁護士の紹介など、被害者や家族が速やかに補償を受けられるよう、取り組むとしています。

旧優生保護法は「戦後最大の人権侵害」と言われています。

17日に始まる補償法が、単なる法律の施行にとどまらず、個人の尊厳と平等を実現する社会の一歩となるよう願います。

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