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人手不足の介護現場に立つネパール人女性「もっと住みたい…ずっと住みたい」“特定技能外国人”働きたい熱意を阻む現実

北海道放送 / 2025年1月26日 8時32分

全国でも人手不足が、顕著に現れているのが「介護」の現場です。

介護人材を新たに確保しようと、北海道名寄市が手を組んだのは、ヒマラヤ山脈を抱く国でした。

◇《北海道のマチで介護現場に立つネパール人女性》

ネパール人 シェルパ・ラクパさん(40)
「世界で一番ラッキーだねと思います」

シェルパ・ラクパさん。2年前の2023年5月、ネパールから名寄市にやってきました。人口、およそ2万5000人名寄市です。

ネパール人 シェルパ・ラクパさん(40)
「雪楽しみです。木の上に雪が積もったのが、きれいだから大好きです」

シェルパさんは、名寄市が運営する特別養護老人ホーム『清峰園』で、介護士として働いています。

ネパール人 シェルパ・ラクパさん(40)


「これ取るの?これ着る?」

清峰園ではいま、9人の外国人が働いています。

このうちネパールから来た人は7人。シェルパさんは、利用者の介護をしながら、後輩の指導にもあたっています。

男性利用者「一生懸命だね、ネパールの人はね。真面目だね」

女性利用者「すばらしいと思う」

◇《コロナ禍で変化を強いられた人生》

今では、すっかり人気者のシェルパさん。日本にやって来たきっかけは、世界を揺るがせた、あの出来事です。

世界各地のマチから人の姿や賑わいが消えた、新型コロナウイルスの感染拡大。

当時、シェルパさんは、ネパールの首都カトマンズで飲食店を営んでいました。しかし、外出制限によって、店は営業が困難となり、やむなく店を手放すことになりました。

ネパール人 シェルパ・ラクパさん(40)
「コロナ禍のとき、3か月ぐらい店を開けるのが駄目になったとき、暇な時間に日本語を勉強して、オンラインで自分で勉強して、試験を受けてきました」

◇《労働力不足の解消を狙った“特定技能制度”》
シェルパさんをはじめ、清峰園の外国人介護士は“特定技能1号”として働いています。

“特定技能制度”は、2019年に始まった在留資格で、日本に滞在するための資格です。

1号は介護など16の分野で、最長5年間、日本で働くことができます。

似た言葉の“技能実習”は、日本で修得した技術を母国に持ち帰る制度です。

一方“特定技能”は、日本の労働力不足を解消し、人手を確保する制度で、中身は、まったくの別物なのです。

ネパール人 シェルパ・ラクパさん(40)
「娘が留学に行く前の写真なので、だいたい2年前に撮ったもの。赤い服がお姉ちゃんで、青い服が妹です」

シェルパさんの長女はいま、ITの勉強のため、カナダに留学しています。19歳の次女は、看護師になるため、ネパールで勉強中。

2人を応援するため、シェルパさんは、母国から遠く離れた名寄のマチで頑張っています。

週に1度、シェルパさんが楽しみにしている家族との時間。

スマホを使ったテレビ電話でやり取りします。近く、試験があるネパールにいる次女の様子が気になります。

ネパール人 シェルパ・ラクパさん(40)
「カナダにいる長女にも連絡したかったが、いまは寝る時間の午前2時ぐらいになってしまったので、時間が合わなかった。次女と話せてうれしかった」

地方にとって、貴重な労働力の“特定技能外国人”。

名寄市も、おととしから、シェルパさんのようなネパール人の受け入れを本格化させています。背景に、介護の人手不足があります。

名寄市では今後、高齢化が進む一方、働き手の労働人口が減少し、介護の担い手が足りなくなると予想しているのです。

名寄市 総合政策部 藤井智さん
「外国から来た彼女、彼らが介護の仕事をしてくれることで、介護の職場においてネパール人が、十分に活躍できると確認できてよかったです」

◇《短期的な労働力確保で終わらせないためには…》

“特定技能1号”のシェルパさんが、日本にいられるのは、最長5年です。

もし“特定技能2号”を取ることができれば、在留期間の上限がなくなり、家族も日本に呼び寄せることができます。

しかし、2号の対象分野は、建設や造船などの11分野で、介護は含まれていません。

名寄市民の優しさに触れ、常に感謝の言葉をシェルパさんは口にします。

ネパール人 シェルパ・ラクパさん(40)
「いま日本に来て1年半が過ぎたが、誰を見ても優しいし真面目、時間を守る人。住みやすい、もっと住みたい、ずっと住みたいと思います」

しかし、シェルパさんが、大好きな名寄市に住み続けるためには、現状では、介護福祉士の資格をとるしかありません。

ネパール人 シェルパ・ラクパさん(40)
「外国人なので、易しい日本語しか分からないし、介護福祉士の勉強は、全然わからないので、ダメと思って(資格取得の)準備をしていないので、それが出来なければ、ネパールへ帰らなければならない。なんでそんなルールを作ったのって思う…」

長く働きたい、良い職場で働きたい、という思いは、日本人も外国人も同じです。

シェルパさんが、日本で働くことができるのは、あと3年あまりです。

◇《難関の“介護福祉士”資格…外国人が取得する難しさ》

森田絹子キャスター)
シェルパさんは、特定技能1号です。

外国人が日本で5年以上、働く場合は、特定技能2号と同等の“介護福祉士”の資格を取得した人に認められる“介護”という在留資格だけで、外国人の合格率は40%にも届かないほど、難しいものです。

堀啓知キャスター)
韓国などの方が給料も高いけれど、日本の良さを感じて働きに来たと言っていました。松本さん、こうした人材は大事にしなければならないですよね。

コメンテーター 松本裕子さん)
ネパールのかたは高齢者を敬うという国民性があって、日本の介護に必要な思いやり・寄り添いといった姿勢と一致します。

介護福祉を研究する大学の先生の話では、外国人のかたが話す、ゆっくりとした優しい日本語は、認知症の患者さんと相性がいいとのことです。

こういった外国人の人材が、少しでも長く日本に居ることができるような制度にしていくべきだと思います。

森田絹子キャスター)
特定技能制度を管轄している、出入国在留管理庁に話を聞きました。

担当者によると、5年という期限を設けていることについては、“スキルアップの期間にしてほしいとのことで、技能実習などのほかの資格も5年となっているため、そのバランスもある”としています。

堀啓知キャスター)
野宮さん、外国人労働者に活躍してもらう制度なのに、短期的な労働力確保に留まってしまう制限が、いま残っている点については、どんな印象を持たれますか。

コメンテーター 野村範子さん)
このルールの立て付けが、いまの日本が置かれた実情を考えると、ちょっとどうかなと思えてします。

介護人材は、15年後の2040年には、57万人不足すると言われています。

外国人の介護人材がいま、大都市と地方で引き合いになっていますが、アジア各国も、日本同様に今後、高齢化に向かっていくことを考えると、将来的には、国レベルで介護人材を取り合うような事態にもなっていくのではないかと思います。

従来の制度上の制限を残すような対応では、シェルパさんのようなモチベーションがあっても、5年間のスキルがある人が帰らなければならないわけで、日本が置かれている現状を見据えれば、日本が選ばれる国になるために、何が必要なのを考えていかなくてはいけない気がします。

短期間の労働力、働かせてやっているという感覚があるんじゃないかと思ってしまいます。

堀啓知キャスター)
考え方として、どんどん仲間に入れていく、コミュニティーに入れるという制度にしていかなければいけないのかなと思います。

制度改革は、本気で解決していくべき課題が、まだ数多く残されています。

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