30代前半女性も“見えないホームレス”が増加中…仕事や居場所を失い困窮する人々 真冬の札幌で路上やネットカフェなど生きるそれぞれの事情
北海道放送 / 2025年2月8日 8時59分
いま、生活の拠点を路上とするのではなく、別の場所で暮らす“見えないホームレス”ともいえる人たちが、徐々に増えていると言います。住む場所を失った人と、支援する団体を取材しました。
◆《ホームレスの実態調査で浮かび上がる状況の変化》
1月26日、札幌市役所の会議室に集まる人たち。すでに時計の針は午前2時を回っています。
『北海道の労働と福祉を考える会』 山内太郎代表(49)
「この人数調査なんですけれども、これは国の実態調査の公式な数になります」
札幌市から委託を受けて行う、ホームレスの実態調査です。中心メンバーは、ホームレスの支援を行うボランティア団体『北海道の労働と福祉を考える会』、略して『労福会』です。
毎年1月に札幌市内10か所で、路上や車中で生活するホームレスの人数を調査しています。
この日の気温はマイナス0.4℃。暖冬とは言え、外で寝ると命にかかわるような寒さです。
『北海道の労働と福祉を考える会』 山内太郎代表
「以前は立入禁止(のプレート)はなかったんですよね。(階段を)降りたところで寝てる人が結構いたんです」
代表の山本さんをはじめ、『労福会』のメンバーは、地下道に続く出入口などを一つ一つを調べて回ります。
『労福会』 山内太郎代表
「(暗くて)分からないなぁ…居ないか、居ないですね」
札幌市のホームレスは日中は移動していて、服装も小綺麗なため、ホームレス以外の人と区別するのが難しいといいます。
そのため、調査は、ホームレスが眠りにつく、深夜に行います。
・取材記者
(Q.いらっしゃった?)
・『労福会』 山内太郎代表
「はい」
・取材記者
(Q.傘とかで寒さをしのいでいる?)
・『労福会』 山内太郎代表
「ですかね…風よけのシェルターという感じですかね」
◆《路上生活者は減少するも“見えないホームレス”が増加》
2007年には132人いたホームレスですが、徐々に減っていって、去年は4分の1以下の31人でした。
しかし、31人という数字の裏には”見えないホームレス”がいます。
去年12月28日の夕方、札幌市中央区民センターに行列ができました。『労福会』の活動のひとつ、炊き出しです。
参加者は、衣類や食事を受け取っていきます。この日配られた弁当は、カレーライスです。
クリスマスが近かったこともあり、ケーキのプレゼントもありました。
・炊き出しの参加者
「助かります。衣服とかなかなか買うことができないので」
希望者には散髪のサービスもあります。
・炊き出しの参加者
「サッパリしました。(散髪に)行きそびれていたので…」
この日、炊き出しに参加した60人ほどのうち、路上で生活している人は、10人もいないといいます。
・取材記者
(Q.普段はどこで生活しているんですか?)
・炊き出しの参加者
「ネットカフェ」
ネットカフェや友人の家で生活する”見えないホームレス”が、最近増えているということです。
・ネットカフェで生活する男性
「(炊き出しは)楽しみですね。普段は1人なので、(炊き出しには)似た環境の人がいるので」
路上にいない彼らは、実態調査の対象から外れるため、その数を把握しきれていないのが現状です。
◆《経済的な困窮だけでない居場所を失う人たち》
家を失った人を、一時的に保護する活動をしている小川遼さんです。
・WHO CARES 小川遼 代表理事(32)
「ここはコミュニティスペース。イベントやったりするとか」
一時的な保護を受けている人たちが、楽器を弾いたり、映画を観たりすることができます。
また、コミュニティスペースとは別に、家を失った人が、一時的に生活することができるシェルターがあります。
シェルターの入所者は、経済的な問題を抱えた人だけでではありません。
認知症や精神障害で家賃が払えなくなった人、家庭内のトラブルやDV被害・児童虐待から逃げてきた人もいます。
・WHO CARES 小川遼 代表理事
「日常生活を一緒に送るのに近い、そうした環境の中で入所者の過去の話を聴けることもありますし」
◆《家族トラブルから逃れてシェルターへ…》
シェルターに入所したばかりの30代前半の女性です。
・入所者の女性(30代前半)
「ごはんも全然食べられなくて、寝られなくて、ずっと布団の中に…」
シェルターに入所して2週間の、30代前半の女性です。母親との関係がこじれて、祖父の家で暮らしていました。
しかし、祖父とも上手く行かず、家を出たということです。
・入所者の女性(30代前半)
「(母・祖父は)まじめ・厳しい人なので、仕事が続かないとか、ちゃんとした生活ができないというのが許せず、きつく言われたりすることもあったり」
実家や祖父の家で暮らしていたときは、精神的な苦しさから、生活リズムや体調が崩れて、昼夜逆転の生活を送っていました。
しかし、シェルターに入所してからは、規則正しい生活を送ることができているということです。
・WHO CARES 小川遼 代表理事
「昼夜逆転していただいても構わないというか…。勝手に、どうぞ夜型の暮らしを楽しんでくださいという感じなんですけれども」
「自発的に“なりたい自分”になる場所として、使ってもらえたらいいと思います」
生活に困窮する可能性は、誰にでもあります。だからこそ『労福会』は、気軽に相談できる団体を目指します。
・『北海道の労働と福祉を考える会』 山内太郎代表(49)
「ホームレスとか困窮者は、誰も助けてくれない。『お前、ダメだよ、それ…』って言われ続けてきた。でも『労福会』は怒らない。そういうところになれたらいい」
◆《決して他人事ではない、突然困窮に陥る可能性》
・堀啓知キャスター
新型コロナウイルスの流行を経験し、突然仕事や居場所を失って、貧困に陥るということも実際にいるわけで、決して他人事ではありません。
・森田絹子キャスター
取材したホームレスの支援団体『北海道の労働と福祉を考える会』はもともと、北海道大学の学生らを中心に運営していて、多いときは30人ほど学生の会員がいました。
しかし現在は、事務局長を務める、専門学校に通う2年生の女性1人のみとのことで、メンバーの中心は社会人ということです。
・堀啓知キャスター
困窮者を支援する側も、厳しい状況での運営となっているようですが、家がない、食べるものがないなど、困ったときは『労福会』や『JOIN』という相談窓口があります。
・森田絹子キャスター
『労福会』は、生活保護の申請のほか、新たな家や職探しもサポートしています。『JOIN』は札幌市から委託を受けて相談やシェルターの運営をしている団体です。
●『労福会』
090-7515-8393
●『JOIN』札幌市ホームレス相談支援センター
0120-887-860(平日午前10時~午後6時)
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