山瀬慎之助、球界屈指の強肩捕手が課題の打撃を「打ち破る」 ソフトバンク甲斐からの「我慢の年」胸に…FromG
スポーツ報知 / 2024年6月16日 7時0分
巨人の若手選手の今を伝える「From G」。第6回は山瀬慎之助捕手(23)。二塁送球タイムで球界トップレベルの1・8秒台を切り、未来の正捕手候補と目される有望株は今季1軍出場1試合止まり。2軍では打撃強化や投手の信頼を勝ち取るための能力を磨いており、自主トレで弟子入りしているソフトバンク・甲斐の助言「我慢」を胸に再昇格への決意を語った。また、加藤2軍バッテリーコーチが、山瀬の長所と課題を明かした。(取材・構成=小島 和之)
球界屈指の強肩捕手は今、悩みの中にいる。山瀬は今季開幕2軍スタート。5月8日に初昇格したが、1試合の出場で2打数無安打に終わり、同20日に2軍降格となった。2軍では主戦捕手としての起用が続くが、39試合で打率2割5厘、2本塁打、11打点と課題の打撃で結果を残せていない。
「守備は5年目になることもあって、ある程度、余裕を持って不安なくできているけど、打撃が全然ダメ。長打もある程度、打ちたい中で、強く振れていないし、捉える確率が低い。去年できていたことができなかったり、やろうとしている動きとのギャップが大きく、なかなかすり合わせができていない感じです。スタメンで出るためには『(首脳陣に)3打席見たい』と思わせないといけないので、全然納得できていないです」
今春キャンプは1軍スタート。捕手出身の阿部監督が、どんな能力を持つ捕手を必要としているのかを間近で学ぶ機会になった。
「阿部監督は守り勝つ野球を目指す中で、信頼できる選手を出している。その点、僕は試合に出ている数が少ない分(プレーが)粗く見えるんだと思います。打ち破っていかなければいけない課題だと感じていますし、試合に出ないと信頼は得られない。一番のセールスポイントである守備を見せるためには打たないといけないと、俯瞰(ふかん)的に見て感じています」
年間通しての1軍帯同が目標だったが、今は課題と向き合う“我慢”の時間が続く。プロ1年目のオフから自主トレで弟子入りしているソフトバンク・甲斐の言葉が現状と重なる。
「甲斐さんからは『今年、お前は我慢の年になるから我慢しろ』と。あと、よく『人事を尽くして天命を待つ』と言っていた。自分がやることは全部やって、あとは運に任せる。神様にお願いしますと言えるぐらい、やれることは全部やりなさい、ということ。例えば僕が打率3割、守備も完璧でも試合に出られなかったらそれは仕方がない。自分の力ではどうにもならないこととは闘っても意味がないから待っておけ、と」
打撃では、スイング軌道などを測定できる「BLAST」を活用し、改善に励む。
「バット軌道やオンプレーン率(スイングが投球の軌道に重なる割合)、入射角も確かめながら取り組んでいます。バットが体から離れちゃうので、近くを通るように。課題は自分で解決できないとプロの世界ではやっていけないので、自分で考えながら取り組んでいます」
守備では、投手の信頼を得るために、おのおのの性格に合わせた接し方を心がける一方、自身の考えを主張することも恐れない。
「信頼を得るというのは難しいことですが、年齢が下だからって野球観や考え方が幼いわけではないし、グラウンドでは年齢は関係ない。年齢の上下は関係なく、その人の性格に合わせたコミュニケーションを取るように心がけています」
阿部監督は以前から配球に正解はなく、結果論との考えを示す。山瀬は、投手に自身のサインの意図をいかに深く理解してもらうかに注力している。
「加藤コーチからは配球の種類を増やそうと言われています。例えばサインが7通りあって、サインの出し方やジェスチャー、構え方で投手が投げてくる球は少しずつ変わる。初球の外角直球と2ストライクからの外角直球は、同じサインかもしれないですけど欲しい球は違う。加藤コーチとは捕手の心がけでもっと変えていこうと話しています。投手に明確に意図を伝えるということは、阿部監督も大事にしていると思うので」
周囲は「未来の正捕手候補」と期待を寄せるが、山瀬自身は数年後ではなく、今を見据えながら正捕手取りを目指す覚悟だ。
「周りからは、今は2軍で経験や実戦を積んで、20歳後半から1軍でと思われているかもしれませんが、僕は今すぐにという気持ちが強い。他球団でも若い捕手がどんどん出てきてますし、その人たちに負けてるとは思っていない。自分の味を出して、できることを全部やって待ちたいです」
加藤2軍コーチ「“先読み能力” 磨いて」
山瀬の武器はやはり守備です。あの強肩は魅力ですし、ワンバウンドも勝負強く止めています。捕手の一番の仕事は捕ることですが、自分の決断やサインで投手の野球人生を揺さぶってしまうかもしれない。だからこそ、捕手は責任感がなければ務まりません。試合前の準備にしても、データ班のスタッフのおかげで準備ができるわけですから、山瀬にも責任感を持って取り組みなさいと伝えています。
捕手には最高の結果と、最悪の結果を常に意識しながら決断する“先読み能力”が求められます。その能力をさらに磨くことで、より優れた判断ができるはずです。毎年、新人が加入してくる中で「山瀬」という商品が、どうしたら巨人に必要とされるかをイメージすると、取り組む内容も変わるでしょう。サインの出し方にメリハリをつけるだけで、投手にも明確に意図が伝わります。レギュラーになっても、どうしたらもっと投手に自信を持たせてあげられるか…という意識は常に大切にしてほしいです。(2軍バッテリーコーチ・加藤健)
◆山瀬 慎之助(やませ・しんのすけ)2001年5月4日、石川・かほく市生まれ。23歳。小学2年時に野球を始め、宇ノ気中3年時に全国中学軟式大会優勝。星稜では1年秋から背番号2。3年夏に甲子園で準優勝し、U―18日本代表入り。19年ドラフト5位で巨人入団。177センチ、89キロ。右投右打。
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