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「まんさくの花」醸造の横手市「日の丸醸造」が業界に吹き込む新たな風…みちのく地酒巡り

スポーツ報知 / 2024年6月22日 10時18分

「まんさくの花 亀ラベル」を手に笑顔を見せる佐藤公治社長(カメラ・山崎 賢人)

 秋田県横手市に秋田を代表する日本酒「まんさくの花」を醸している「日の丸醸造」がある。1689年創業と伝統のある酒蔵だが、現在は佐藤公治社長(40)を中心に先進的な取り組みや働き方改革を行い、業界に新たな風を吹き込ませている。蔵人にも優しく、バリエーション豊富な日本酒を醸す社長に、これまでの取り組みや今後への思いを聞いた。

(取材・構成=山崎 賢人)

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 ■家業継ぐため11年に入社

 銀行員だった父・佐藤譲治さんの下、横浜で生まれ育った公治さん。元々譲治さんも蔵を継ぐ予定がなかったが先々代の蔵元が急逝してしまい、1997年に蔵元に就任。公治さんは慶応中~高、慶大に進学後、大手製菓メーカーに就職も「一人っ子だし、よくよく考えたら継ぐことになる。就職した会社も合わないな」と思い、2011年に日の丸醸造に入社した。

 広島にある酒類総合研究所で酒造りを学んだ後、最初の2年は営業部署など、会社を知ることから始まった。入社3年目には製造に関わったが、休む暇もなく蔵で寝泊まりする労働環境に疑問を覚えた。「朝4時に来て、夕方5時にはみんな酒を飲んで泊まるけど、僕は営業面、経営面もやっていた。当時は若い人も全然いなく、そういう生活を繰り返していると『このままではやばい』と思ってました」

 ■杜氏制を変更全員年休消化

 蔵元として生まれた人間ではないからこそ、新たに気づいて改革できることがある。自身が苦しんだ経験を、入社してくる後輩たちにはさせまいと、合理的に仕事ができる環境を整えた。17年、専務に就任。18年、杜氏制から社員による酒造りに移行すると、8年かけて一人で数値化した製造データを駆使し、パソコン一つで、どこに誰がいても安定して酒を造れるように“デジタル化”を推進。今では年50種以上製造している酒も、社員全員が年休120日を取りながら無理のない製造ができている。

 楽しむことをテーマにしている社長は製造所の様子をホームページ上で見られるようVR見学や、商品に貼られたシールを集めてオリジナルグッズに交換できる「マイレージクラブ」なども手がけている。それだけにとどまらず「少しでも日本酒が好きな層を増やすのも一つの仕事」と日本酒を知らない層にも積極的にアプローチ。年1回、イオンモール秋田に出張し、試飲や子どもが楽しめるイベントを開催。アイドルグループの私立恵比寿中学ともコラボして、日本酒を広めている。

 おすすめする日本酒は「まんさくの花 亀ラベル」。幻の酒米と呼ばれる「亀の尾」で醸したシリーズだ。「通年も限定酒もあるうちの人気商品。多品種ありますけど、共通しているのはしっかりお米の味を出すのがベースにある。キレもあり、癖もない。いろんな料理に寄り添う食中酒ですね。独特な酸味が心地よくて非常に飲みやすいです」

 ■悪くない環境横手に若者を

 目標はこの蔵だけではなく、地方の県や市に新たな人材を増やしていくこと。「若い人は増えているので、そういう人が活躍できる会社にしたい。特に秋田県や横手市は若い人がいないので、田舎だけどやりがいもあって、労働環境も悪くない蔵で少しでも若い人が横手に来てくれたら」。当たり前にとらわれすぎずに、これからも改革を進めていく。

 ◆日の丸醸造株式会社 元禄2年に秋田県横手市増田町に創業。「まんさくの花」を中心にスイートリキュールなども手がける老舗。従業員17人のうち、7人が20~30代と積極的に若手を採用している。

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