山内圭哉「無邪気に。とことん楽しんで、遊び尽くす」 ７月に６年ぶり舞台主演 リリパット・アーミー時代が代え難い財産

本紙インタビューに応じる山内圭哉（カメラ・岡野　将大）

　俳優の山内圭哉（たかや、５２）が、７月２０日に開幕する音楽劇「死んだかいぞく」（２８日まで埼玉・彩の国さいたま芸術劇場）に主演し、「かいぞく」役を演じる。舞台主演は「夫婦」（２０１８年）以来６年ぶりだが、自然体を強調。子役時代に出演した映画「瀬戸内少年野球団」（１９８４年）から４０年。役者としての転機、今作への思いを語った。（加茂　伸太郎）

　中学生の時、映画「瀬戸内少年野球団」（篠田正浩監督）の駐在所巡査の孫で級長・足柄竜太役を演じ、注目を集めた。幼少期から子役として活動し、芸歴は４０年以上になる。

　山内は「いまだに、おもろいなって思うのは“役者をやりたい！”と思ったことがないのに、この仕事をしていること」と照れ笑い。「児童劇団に入ったのも、自分の意思ではないんです。一人で遊んでいるような子やったから、親が心配して入れたんですよ」

　９２年に中島らもさん（２００４年逝去、享年５２）主宰の「笑殺軍団リリパットアーミー」に入団し、価値観が大きく変わった。「（周りに）勧められて行ったら、何かよう分からへん人がいっぱいいて（笑い）。『社会性なんてなくていい』『オマエはええんや、それで』みたいなことを言ってくれるオトナがいて。すごいこと言うてもらっていたなって（笑い）。面白い人といるの楽しいっていう感覚を覚えたというか。普通の仕事なんてできへんし、シンプルに、面白い人と一緒におれたらいいって思うようになりました」

　当時は「師匠の中島らもと毎日、酒を飲んで。ハチャメチャだった」というが、貴重で代え難い財産だったと理解できるようになったのは９９年の退団後、３０歳を過ぎてからだった。

　「やっていることは（２０代の頃と）一緒やのに、大きい芝居に呼ばれて、お金をもらえるようになって、性根入れて楽しまな！と思ったんです。今日までその延長で来ていますから。『芸歴４０年以上』と言われても、何かすいません…という感じです」と恐縮。「劇団（＝リリパット）に入っていなかったら、働くの好きじゃなかったし、どうしようもない酔っ払いになっていたと思いますね。そう考えると、演劇に救われているな、演劇に感謝せなあかんなと思います」

　今作は「夫婦」以来６年ぶりの舞台主演になる。「主演だから、というのは特にないです」と自然体を強調。「主演は（僕と真逆の）若くて、容姿端麗で、人気者がやるもの。お客さん入らなかったら格好悪いし（さいたま芸術劇場さんに）申し訳ない。動員力があればいいけど、本当にそれもない。普段、一人で舞台を見に行く人は家族を連れてきてね、と（笑い）。お願いやから来てください！」と懇願した。

　「三日月のよる、ふねの　うえで　かいぞくが　はらを　さされた。いつも　いばってばかりいるから。ほんとうは　つよいらしいけれど、いつも　よっぱらっていたから　かんたんに　さされた」

　衝撃的な書き出しから始まる下田昌克氏の同名絵本が原作。身近だが、つい目を背けがちな「死」をモチーフに、「生」を見つめ直す物語。ノゾエ征爾氏が脚本・演出を担当し、下田氏自ら舞台美術、衣裳、小道具デザインを手がける。

　山内は刺されて体が動かなくなった「かいぞく」役。身に着けていたもの、体の一部を海のいきものに奪われ、海の底に沈んでいく中で人生を回想する。「『死』というのは、みんなが平等に与えられていること。年々親しい人が亡くなっているし、すごく寂しいんやけど、（人生とは）そういうもんなんやなって、だんだんと理解していく。『死』は当たり前のことで、特別なことではない。常にそこにあるもの。そうは分かっていても、やっぱり寂しいもんやなと。自分なら長生きはしたくないなって。ぽっくりと逝きたい派ですね」

　演劇とは幼少期の「ごっこ遊びの延長」と評した。「子供の時から、やっていることは変わっていない。どれだけ無邪気にやれるか。無邪気に、劇世界に生きることができるかなんです。とことん楽しんで、遊び尽くす。そうすることで、出てくるものってたくさんあると思うんですよね」

　ＮＨＫ大河「青天を衝け」（２１年）の岩倉具視役など、近年はドラマ、映画など活躍の場を広げるが、主戦場はあくまで舞台。「『遊ぼ！』って誘ってくれる人がいるから『行くよ！』って言える。『遊ぼ！』と言われていないのに、『誰か遊ぼ？』と（自分からは）言えないですね。その時は引退じゃないかな～。ただ、誘ってくれる人がいる限りはクリエイトする楽しさ、面白さを追求していきたいです」

　◆山内　圭哉（やまうち・たかや）１９７１年１０月３１日、大阪府出身。５２歳。９２年「笑殺軍団リリパットアーミー」入団。９９年退団。その後舞台や映画、ドラマに出演。２０１５年ＮＨＫ連続テレビ小説「あさが来た」に出演。今年は映画「ゴールデンカムイ」、舞台「モンスター・コールズ」に出演。趣味はタイ旅行、読書。特技は楽器（ドラム、ギター）。１７６センチ。