兼業でモデルデビュー 大企業勤務の慶大卒151キロ右腕・小菅真路、決断の理由「もう一度、自分の名前で勝負」
スポーツ報知 / 2024年7月1日 11時0分
今春、モデルとしてデビューした小菅真路(25)は慶大野球部時代、最速151キロを計測した投手だった。現在は一般企業に勤務しながら、兼業という形で芸能界の荒波に飛び込んだ。元TBSアナウンサーの林みなほさん(34)が立ち上げた芸能事務所「sai&co.」に所属して、新たなる舞台に立つ。インタビュー後編では、なぜモデルを志したのか、決断の理由に迫る。(加藤 弘士)
猛勉強の成果もあって、千葉・市川高から一般入試で環境情報学部に現役合格した小菅は、迷わず慶大野球部の門をたたいた。大久保秀昭監督(現ENEOS監督)が指揮を執る中、2学年上には正捕手の郡司裕也(現日本ハム)、柳町達(現ソフトバンク)らが、1学年上には木沢尚文(現ヤクルト)らがいるタレント集団だった。
「同級生には正木智也(現ソフトバンク)、渡部遼人(現オリックス)に大阪桐蔭のキャプテンだった福井正吾(現トヨタ自動車)、履正社のキャプテンだった若林将平(現日本新薬)もいて、『すごいとこに入っちゃったな』と。自分は球が速いところがセールスポイント。そこを伸ばすしかないと思って、頑張りました」
1年の冬場、体力強化トレーニングへと懸命に取り組んだところ、体重が10キロ増。185センチ、90キロとパワーアップに成功した。2年春のフレッシュリーグ(新人戦)で神宮初マウンドを踏み、同年秋にも登板。神宮でのMAXは147キロ。3年夏のオープン戦では151キロを計測した。
「大学入ってからは、プロを目指していました。社会人野球も選択肢としてありましたし。卒業後も、上のレベルで続けたいと」
大台到達によってプロ野球の世界が現実味を帯びてきたが、好事魔多し。右肩のけがに不調も重なった。小菅は進路を一般就職に絞った。4年時は一線を退き、後輩たちの指導に当たった。4年春の2021年、チームは就任2年目を迎えた堀井哲也監督の下、6月には大学日本一、秋には明治神宮大会準優勝を成し遂げた。チームの栄冠という喜びの中で、完全燃焼できなかった自分が、確かにいた。
「本来であれば、自分もそこでプレーして、チームに貢献することを目指していたのに、できなかった悔しさもありました。社会に出てから、絶対に挽回してやろうと思っていたんです」
入社したのは名だたる大企業。2年間、日々の業務へと全力投球する傍ら、母校・市川高のコーチを務め、慶大野球部で培った知見を後輩たちに授けてきた。そしてこの春、一念発起してモデル業へと挑戦することになった。その心の動きは、どのようなものだったのか。
「やっぱり大学3年のけがが、挫折だったんです。プロになりたかったし、憧れた『KEIO』のユニホームでもっと、神宮で試合がしたかった。あのまま大学で野球を4年間やりきれていたら、大企業に入って、そのままだったと思うんです。かつ同期の2人がプロに行って、先輩も後輩もプロで活躍している姿を見て、もう一度、人生をイチからスタートさせて、自分の名前で勝負したいという気持ちが湧いてきたんです」
大企業での勤務も、モデルの仕事も、真摯(しんし)に取り組むことが求められる。兼業へと臨む心構えをこう表現した。
「慶應義塾でずっと学んできた『気品の泉源』『知徳の模範』『自我作古』という福沢諭吉先生の教えが、胸の中にあります。堀井監督からも『これから我々が先導者となって、この社会を引っ張っていかないといけない。新たな道を切り開いていかないといけない」と教わってきました。今は兼業って珍しいかもしれないけれど、何年後かには当たり前になっているかもしれない。アメリカに住んでいた頃も、いろんな仕事に取り組んでいる人も多かったですから」
モデルとしての今後の夢を、こう語ってくれた。
「人を笑顔にすること、人を喜ばせることにやりがいを感じています。野球の時にもお世話になった人や、両親に『いい姿を見せたい』という気持ちでやってきました。まずは、身長を生かしてモデルからの挑戦になりますが、将来的には活動の幅を広げていきたいです。そして、仕事を通じて、誰かを笑顔に、幸せにできたらということを、最終目標にやっていきたいです」
人生はチャレンジ。185センチの大きな身体には、多くの夢と希望が詰まっている。野球で培った強い心身を武器に、どんな仕事にも全力投球あるのみだ。
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