「ダメな時の方がワクワク、ウキウキ」巨人「1番」が驚異V字回復の秘密やファーム調整中の坂本勇人との絆を語った
スポーツ報知 / 2024年7月2日 5時0分
巨人の丸佳浩外野手(35)が1日、スポーツ報知のインタビューに応じ、リードオフマンとしての決意を語った。レギュラー白紙で迎えたプロ17年目の今季は1番に定着し、ここまでリーグ最高出塁率3割9分2厘を記録。2割1分5厘だった打率はリーグ2位の3割8厘に上昇し、チームを支える。自身の打撃哲学、第3のターニングポイント、そして坂本勇人内野手(35)への思いまで。進化を続ける男が語り尽くした。(取材・構成=井上 信太郎)
歯車がかみ合い始めたのは、4月28日のDeNA戦(横浜)だった。自身は26打席連続無安打、チームも球団ワーストの13戦連続3得点以下と苦しんでいた中、「1番」に抜てきされた。
「そうきたか、と。あの時は僕自身も、チームもあまり良くなかった。何か変えたいという意図を感じたし、阿部監督や二岡ヘッドをはじめ、チームのひとつのピースとしてかみ合うように、何とか策をひねり出してくれたのかなと。打つ打たないは別にして、チームを『いけるぞ、いけるぞ』という雰囲気にできればいいかなと思いましたね」
この試合で決勝打を含む3安打3打点の活躍を見せ、以降は阿部巨人のリードオフマンに定着。2割1分5厘だった打率は、リーグ2位の3割8厘に上昇した。だが指標にするのは打率ではなく、安打数だという。
「広島時代に率は上下するから、ヒット数にこだわれとよく言われました。ヒットを1週間に何本、1か月に何本、それでシーズントータルで何本打つみたいな。そういう目標にした方がブレなくていいぞと。例えば、1週間で6試合あれば7本ぐらい打てたら最高ですよ。1試合1本だと、四球をある程度とらないと、率的にはそんなに上がらないから。試合数よりちょっと多くというのを意識しています」
17年目を迎えたプロ野球人生において、2度のターニングポイントがあった。1度目は広島時代に新井宏昌コーチと打撃改造した12年の秋季キャンプ。2度目は今のヒッチ打法を取り入れた15年の秋季キャンプ。そして今年、3度目が訪れたという。交流戦直前の5月下旬、それまで2割前後と打てていなかった右投手への入り方、タイミングの取り方を変えた。
「今はその2つに並ぶと思います。見た感じ、打ち方は変わってないと思いますけど、新しい発見があった。今年、最初は右投手が全く打てなかった。いろいろ考え抜いて、右投手に対しての打席内での入り方を、今までと全く違う考え方にしたら当たった。相手があるので内容は言えないんですけど、こういう入り方もありなんだと。本当に不思議なもので、17年目でもそう思いますよね」
この変化を恐れない、むしろ楽しむ姿勢が、丸佳浩という男を支えている。昨秋に阿部慎之助監督が就任し、外野のレギュラーは白紙となり、一からの競争を強いられた。
「不安とかないんです、マジで。強がりとかじゃなくて。これまでボーンとダメな時が何回かあった。その度にダメなら練習するしかないって考えでずっとやっていたので、今もそれは変わらない。今年、競争してほしいと監督から言われましたけど、いわゆる背水の陣みたいな感じじゃない。ダメな時の方が新しいことに挑戦できる。どうせダメなら今までやってこれなかったことやろうみたいな。これまでも結果、変えたことでうまくいっているから。もうワクワク、ウキウキみたいな。本当そんな感じなんです」
普段から打撃について意見をかわし合う1学年上の坂本が、6月下旬からファーム調整となった。長年チームを支えてきた大黒柱の不在を、埋める覚悟はできている。
「勇人さんは一つしか違わないですけど、雲の上の人。巨人に入って、2000本をはじめ他の記録も見させてもらいましたけど、改めて僕とは残してきたものが違う。勇人さんがあまり数字がついてこなくて、いろいろ考えながらやっているのは僕も感じていた。でも悪い時の方がきっかけが見つかったりするし、勇人さんのことだから大丈夫だと思っています。当然、僕やチョウさん(長野)やベテランと言われる選手が、しっかりと支えてあげることで、若手も思いきってプレーできると思う。その間、しっかり僕たちがやれることをやっていきましょうということです」
全てをプラスに変えていく背番号8が、「1番」として先頭に立ってチームをけん引する。
岡本の打球直撃「まあ大丈夫」 〇…丸はチームと共に、2日の中日戦が行われる松本入り。30日の広島戦(東京D)では、初回に三塁に進んだ際、岡本和の強烈な打球が右太ももを直撃。一夜明け、状態が心配されたが「あれは手ではたいているから当たってません」と冗談を飛ばしつつ、「まあ大丈夫でしょう」と問題ないことを明かした。
取材後記
ある異変が気になっていた。丸と言えば、打席から帰ってきた直後、ノートに打席の感想や相手の配球などをメモする姿がおなじみ。だが今季、テレビ中継の画面からその姿が消えた。「今も書いてますよ。ただ今までは打ち取られた後にベンチですぐ書いていたので、カメラに映ることが多かったと思いますけど、書くタイミングが変わりましたね」。
ノートにメモすることは配球などを今後に生かすことに加え、もう一つの効果がある。「打てなかった悔しさやイライラだったり、負の気持ちをメモに書くことで消化しているんです。書くことで、つき物が取れたみたいにスーッとする。今年は打ち取られても狙いを持ってぶれずにできているので、『早く書こう、早く書かなきゃ』というのはなくなりましたね。言われるまで気がつかなかったです」。好調の証しはこんなところにも表れている。(井上 信太郎)
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