【ＤｅＮＡ】今季初の開幕１軍＆先発マスク＆プロ初安打 「準備」学んだ２２年ドラ１捕手は現在イースタン首位打者

練習で汗を流す松尾（カメラ・清水　武）

　各球団の担当記者が推す選手を紹介する「推しえて」第７回は、ＤｅＮＡ・松尾汐恩（しおん）捕手（２０）。２２年ドラフト１位の新星は、高卒２年目で開幕１軍をつかみプロ初安打も放ったが、現在２軍で鍛錬中。１軍の先輩たちから学んだ「準備の大切さ」を徹底し、成長した姿で横浜スタジアムに戻る決意を語った。（取材・構成＝内藤　菜月）

　少したくましくなった表情で松尾は３か月前の１軍の舞台を思い返した。

　「今までに感じたことのないプレッシャーや責任感を感じました。その中で結果を出さないといけない」

　今季は開幕１軍を勝ち取り１軍初出場。２試合でスタメンマスクもかぶった。４月２日の阪神戦（京セラＤ）では高校時代を過ごした大阪でプロ初安打もマーク。しかし、計８試合で１２打数２安打、打率１割６分７厘。４月１４日に出場選手登録を抹消された。

　「今は１軍で出た課題を潰している状態。実りのある１日を過ごしています。三浦監督からは『（２軍で）全体的にレベルアップしてくれ』と言われました」

　１軍捕手は山本、戸柱、伊藤など層が厚い。高卒２年目で与えられたチャンスは主に代打。６打数１安打と簡単にはいかなかった。それでも収穫は多かった。イースタンでは５６試合で打率３割５厘でリーグトップ、２９打点と日々成長につなげている。

　「一番学んだのは先輩方の試合に入る前の心構え、準備の仕方です。（スタメンで出ていた）２軍とは違って、途中から出る試合は準備の仕方も難しい。今までは『どうやって入ろう』というのがなかった。大田さんや関根さんとかベテランの選手は誰よりも準備が早い。大和さんはやっぱり本当にすごい。代打でも最高のパフォーマンスができている人。『行くぞ！』という心構えがすごい。万全なストレッチやエクササイズは自分も取り入れていきたいと思いました」

　２軍でともに汗を流していたメンバーが昇格しハマスタで活躍する姿を見て自身を奮い立たせている。２６歳外野手の蝦名、２２歳の森敬斗、昨年のドラフト１位・度会も２軍を経験して再び１軍に戻った。また、２軍でバッテリーを組んでいた育成左腕のディアスが支配下登録され１軍デビューした。

　「活躍しているのを見るのは非常にうれしい。僕も頑張ろうと思える。ファームで一緒にやってきた仲間。ディアスが登板すると『頑張れ！』と思いながら見ています。森さんたちもたくさん苦労して上がっていったと思う。自分もいろんな壁にぶち当たると思うので、それを乗り越えてまた昇格できたらいい」

　同じ２２年ドラフトで入団した旧友とのかけがえのない時間もまたプロで生き抜くために大切なものとなっている。

　「休みの日は同学年の森下（瑠大投手）と一緒にいることが多いです。地元も京都で一緒なので地元の話もしています。野球の話はあまりしないけど、森下もけがをしたりしたので『体どうや？』とか。でも、森下は最近、アイドルの『ＦＲＵＩＴＳ　ＺＩＰＰＥＲ』にハマっていて僕、置いていかれてるので…（笑い）」

　今はまだ２軍だが、いずれ１軍の舞台で森下とバッテリーを組むことも目標の一つだ。

　「中学生の頃は対戦する機会も増えて選抜チームも一緒になって仲良くなりました。ドラフトで森下が指名された時は自分の取材が終わったタイミング。最初はチームメートになった実感が湧かなかったんですけど『一緒に頑張ろうな』とすぐに連絡を取り合って常に一緒にいました。小学生の頃から対戦もしていたので、一番意識する部分はありますね」

　まだ２０歳。将来の正捕手候補として学ぶことは多いが、一方で一日でも早く１軍の舞台に戻る意志もある。

　「自分の成長もそうですし、早くあの舞台で活躍することは一つの目標。やっぱり自分も１軍のキャッチャーに肩を並べられるようにやらないといけないし、意識してやっている部分もある。早くそこで勝負できたらいい。チームを勝たせられるキャッチャーになりたいという思いで毎日やっている。そこを目指して頑張りたいです」

　◆松尾　汐恩（まつお・しおん）２００４年７月６日、京都・精華町生まれ。２０歳。川西小１年から精華アトムズで野球を始める。精華中では京田辺ボーイズでプレー。大阪桐蔭では１年秋からベンチ入り。甲子園は２年春から４季連続出場。Ｕ―１８Ｗ杯では捕手部門のオールワールドチーム（ベストナイン）。２３年９月６日のイースタン・リーグのヤクルト戦でサイクル安打を達成。１軍通算は８試合、打率１割６分７厘。１７８センチ、８２キロ。右投右打。年俸１１００万円（推定）。