【番記者の視点】終盤２失点で悪夢の逆転負け 浦和に欠けていた「時間の使い方」「必要なファウル」

浦和のヘグモ監督

◆明治安田Ｊ１リーグ▽第２２節　浦和２―３湘南（６日・浦和駒場スタジアム）

　【浦和担当・星野浩司】　敗戦後の浦和駒場スタジアム。選手が場内を一周して、数か所で頭を下げる度、客席からブーイングが飛んだ。終盤の２失点で逆転負け。わずか２分間で勝ち点「３」が「０」になった。主将ＭＦ伊藤敦樹は「ピッチ上でコントロールできなかった自分の責任。非常にもったいない試合になってしまった」と悔いた。

　勝ち試合だった。途中出場のＦＷチアゴサンタナが０―１の後半１７分に同点、２９分に逆転ゴール。浦和サポーターのボルテージは最高潮に上がった。だが、悪夢は終了間際のわずか２分間で起きた。

　２―１の後半４５分に自陣右を湘南のルーキーＦＷ石井久継にドリブル突破され、同点ゴールを浴びた。ＤＦ佐藤瑶大とＭＦ安居海渡の間をスルリと抜けた石井を止められず、ペナルティーエリア手前でフリーの状態でフィニッシュを許した。伊藤は厳しい表情で振り返った。

　「あの位置でファウルをしても何も怖くなかったし、（石原）広教は警告をもらっていたので行けないのは分かるけど、（前田）直輝くんや（佐藤）瑶大とかがまずファウルであそこにいければ、シュートまでは行かれていなかったと思う。そういう判断のところを、自分を含めて１人１人が細部を突き詰めていければいいと思う」

　さらに２分後。自陣左サイドでパスを５本、６本とつながれ、最後はＭＦ田中聡が出したパスをＦＷルキアンに逆転ゴールを決められた。蓄積した疲労もあってか、パスを出された後に相手のマークについていけず、前進を止められなかった。ヘグモ監督は「最後の５～６分を、試合の締め方の教訓として、しっかりと学ばなければいけない。１対１の場面では、命をかけて戦わなければいけない。最悪の場合、相手にＦＫを与えてでも止めなければいけない」と語気を強めた。

　１点リードして迎える試合終盤。必要なファウルで相手を止めるなど、時間の使い方への共通認識が欠けていたように感じた。２得点と躍動したチアゴサンタナも「自分たちがボールを持つこともそうだけど、逆に相手のプレスを逆手にファウルをもらったりして時間を使うこともそう。試合の進め方がまだ自分たちには足りない」と嘆いた。

　後半１５分から出場したスウェーデン代表ＭＦグスタフソンは、負傷明けで明らかに球際の激しさや運動量が万全ではない印象だった。同３２分頃、ベンチの指示によりボランチからトップ下に移った後もプレス強度は上がらず。３失点目の場面は、自身の背後へ走る相手へマークをつき続けなかったことで、ＤＦホイブラーテンが１対２の状況を作られ、ボールホルダーへ寄せきれずにパスをつながれたことも一因となった。

　前線から守備ができるＭＦ関根貴大、松尾佑介、小泉佳穂、大久保智明が負傷で離脱。是が非でも同点、逆転を狙う敵に圧を与え、ビルドアップで相手プレスいなしたり、試合をクローズさせる選手が少ないのも現状だ。であれば、ＤＦ井上黎生人やＭＦ堀内陽太を投入して守備を強化するのも一案だが、ヘグモ監督は後半１５分以降に交代を繰り出さなかった。酒井宏樹、ショルツ、岩尾憲ら主軸の移籍に伴ってベンチ入りの機会を得た選手に対する「信頼」が、指揮官の求める水準にまだ達していないのかとも思えた。

　今季は２２戦で３０失点。そのうち、後半３０分以降の失点は「１０」に上った。これまでも課題ではあったが、ゲームのコントロールにはショルツや岩尾らを中心に安定をもたらしてきた印象がある。点差や時間帯、ベンチとの連係など、試合の終わらせ方はリーダーシップとチーム力が重要。伊藤は「自分はキャプテンですし、ボランチとして真ん中にいる以上、そこはコントロールしなければいけない」と肝に銘じていた。

　伊藤や安居、渡辺凌磨、ホイブラーテンや石原広教ら、酷暑が続く中でスタメンで出場し続けている選手の疲労が顕著だ。さらに、次戦の１４日・京都戦（サンガＳ）は石原が累積警告のため出場停止。ヘグモ監督は酒井が移籍してサイドバックが少ない現状について４日の会見で「いくつかのプランはある」と語っていたが、選択肢がさらに減る厳しい中での采配となる。

　浦和は現在９位。首位・町田と勝ち点１４差に広がった。２２戦３６得点はＪ１で２位タイと一定の成果が出ている一方、上位陣と比べると守備の安定感は劣っている。ピッチでのゲームコントロールが上位浮上のカギを握りそうだ。