犬ぞりで極地を自分の庭に 芦別市出身の探検家・角幡唯介さん…北のチャレンジャー
スポーツ報知 / 2024年7月8日 6時10分
命懸けの探検や冒険を活字で表現し、数々のノンフィクション賞を受賞して来た芦別市出身の探検家・角幡唯介さん(48)。先月、北極漂泊の旅から生還して約半年ぶりに帰国した。今回は犬ぞりによるグリーンランドからカナダへの往復1350キロ(推定)の旅。その書籍化はまだ先になりそうだが、いったいどんな体験をして来たのだろうか。将来の北海道での活動の構想と合わせて聞いた。(取材、構成=甲斐 毅彦)
地球上に人類未到の地がほぼなくなった今、角幡さんは極地の旅にゴールを設定しない。だが、今回はどうしてもたどり着きたい地があった。カナダ領のエルズミア島。出発点となるグリーンランド最北端の集落シオラパルクから片道でざっと600キロの距離だ。
「最初は近いから簡単に行けると思ったんですよ。でも2015年の夏に(初めてカヤックで)計画して失敗したんです。気象が悪かった。あとは完全に実力不足ですね。どんな地域なのかもあまりよく分かっていなかった。カヤックの実力自体もなく、行けませんでした」
極地を自分の庭にしていく―。これが角幡さんの現在の大きなテーマだ。庭にするためには、機動力のある犬ぞりの技術を習得する必要があった。命綱となるパートナーだが、愛撫(あいぶ)するのは禁物。かわいがれば走らなくなってしまうことは、経験で知った。6回目となった今回、連れていった犬は13頭。悪戦苦闘しながらも1か月以上かけて念願の地にたどり着いた。だが、予想を上回る乱氷帯(海氷がぶつかりあって積み上がった状態が続く地帯)に苦戦。腰痛持ちの角幡さんにとっては、極地での負傷は致命的になりかねない。
「犬と一緒だと自分のペースでなかなかできないんで。乱氷はやはり危険ですね。犬は自分が思ったとおりのところには行ってくれないんで。途中でそりを降りて道を作ったりしても、そこから全然外れた方に行ったりもする。何かの間違いで足をひねったり、ぎっくり腰を起こしたり…。常に突発的な不慮の事態が起きる危険性はありますね」
約半年ぶりに帰国した時には「もう力尽きた、大きな旅は引退だ」と感じた角幡さんだが、その2週間後、冒険研究所書店(神奈川県)で活動報告しているうちに、また意欲が高まってきたという。
「立ち上がれないぐらい一つのことをやっても、やりたいことは次から次と出てきてキリがない。50歳が近づくと体力や気力は落ちてきますが、悔いが残るところはある。またやりたいと思っています」
北極での活動が一段落したら角幡さんは、故郷の北海道に戻り、犬ぞりでヒグマを追いかける生活を思い描いている。
「スケールは小さくなりますが、春のヒグマ狩りが解禁されたら犬ぞりでやりたいと思います。誰もやったことないし、めちゃくちゃ面白いと思いますよ」
◆角幡 唯介(かくはた・ゆうすけ)1976年2月5日、北海道芦別市生まれ。48歳。早大政治経済学部卒。同大探検部OB。2010年に「空白の五マイル」で開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞。12年「雪男は向こうからやって来た」で新田次郎文学賞受賞。13年「アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極」で講談社ノンフィクション賞受賞。18年には「極夜行」で本屋大賞ノンフィクション本大賞などを受賞。
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