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将棋界でお笑いバトル? M―1挑戦2組目 関西の「もぐら兄弟」

スポーツ報知 / 2024年7月15日 6時30分

M―1にエントリーした冨田誠也五段(右)と服部慎一郎六段(カメラ・瀬戸 花音)

 将棋界の話題を取り上げる「王手報知リターンズ」第12回は、漫才コンビを組み、将棋界からM―1グランプリ出場を目指す冨田誠也五段(28)と服部慎一郎六段(24)が登場。将棋界からこの夏のM―1出場を宣言するのは第9回で取り上げた「銀沙飛燕(ぎんさひえん)」に続き、2組目。将棋界には今、お笑いの才能も眠っている。(瀬戸 花音)

 異例の事態である。将棋界から漫才コンビがほぼ同時期に2組誕生した。東京所属棋士による「銀沙飛燕」のライバルは、関西所属棋士2人で結成された「もぐら兄弟」。東VS西。棋士である彼らはなぜか、盤上ではなく、舞台の上で戦うことになった。

 冨田(以下、冨)「銀沙飛燕のM―1出場は、本音をいうと、聞いてないよって感じですよ(笑い)公の場で漫才やってたのはこっちが先だったんですけど、まさかかぶる?って」

 関西弁で明るく、関西棋界の中でもムードメーカーのツッコミ・冨田と、将棋一筋に見えて意外にもお笑い愛にあふれているボケ・服部。コンビを組んだきっかけは2年ほど前。棋士のイベントの罰ゲームだった。だが、そこでのネタがウケにウケ、罰は快感になり、冨田は服部からのM―1出場の打診を快く引き受けた。

 冨「拍手もすごくて、鳥肌たつぐらい。将棋勝つよりだいぶ楽しかったですね。将棋に勝っても別に拍手ってもらえないじゃないですか」

 実は、高校時代に同級生とコンビを組んで、文化祭などの舞台に立っていた服部。路上ライブの経験もある。

 服「でも、高校の時、相方にM―1出たいっていったら、断られたんです。そこからもずっと人生で一度は出てみたいと思っていたので、今回はうれしいです」

 このコンビには、もうひとり、表舞台には出ないメンバーがいる。冨田の兄弟子・池永天志六段(31)がネタ作りの作家兼マネジャーとして参加。打倒・銀沙飛燕に燃えている。

 冨「本当は2人(冨田、服部)で書いた別のネタがあったんですよ。でも池永さんと自分がごはん食べてる時に『銀沙飛燕出てきてちょっとやばいな』って話になって。『前のネタじゃたぶん1回戦は突破できへん』って。池永さんが新しく本気で書いてきたネタでやることにしました」

 コンビを組んで、相方の性格もよく見えてきた。

 冨「服部くんはなによりも将棋を一番に置いてるなと。飲みにいっても将棋の話だし、時間があいたら将棋指したいとか。自分が尊敬してる部分ですね。自分は将棋指すよりしゃべるほうが好きなんですよ(笑い)将棋指してる間しゃべれないのがストレスすぎて(笑い)」

 服「(冨田は)しゃべりがめちゃくちゃ面白いですよね。声がすごい通るんですよ。20人ぐらいいる飲み会でも、トミーの声だけ聞こえてくるんですよ。それは才能ですね」

 棋士養成機関「奨励会」に入ったのが先なのも年齢が上なのも冨田だが、棋士になったのは服部の方が先。やや複雑な上下関係になるが、コンビを組んだ際、「敬語はやめにしよう」と冨田がいった。

 服「今はトミー呼びですね」

 冨「最近服部くんは自分にフランクに話してる勢いで、他の先輩にもフランクにいってるから、あぶないんすよ(笑い)」

 服「そうなんですよ…ちょっとあぶないですよ。自分でも驚きましたもん。無自覚で、他の先輩にもトミーに話しかける感じでつい話してしまうんですよ」

 良好なコンビの関係性。それでも、冨田には少しだけ、心に引っかかっていることがある。それは、若手棋士の二大登竜門である「新人王戦」「加古川青流戦」で優勝経験もあり、新時代を担う若手として注目されている服部が今、「お笑いをやっていていいのか」という疑念だ。

 冨「自分が服部くんをそういう道に引っ張ったとまでは思ってないですけど、服部くんの人生としてどうなんかなって。服部くんて、上に…自分が上に行かない人みたいな言い方になるんであれですけど、服部くんは(将棋で)上に行く人だと思うのです。上位に行くべき人が今お笑いをやるのはどうなのかなって。それこそ他の棋士から遊んでるって思われるんじゃないかとか…自分とは違うから」

 その疑念に対して、隣の服部の答えに迷いはなかった。

 服「なんでも、挑戦してみたいなって思いがあるんです。当然将棋は本業なんで、将棋は大事ですけど、長い人生の中で、こういう経験も、大切なのかなと思う。自分が将棋で上のほうに行ったときにも、振り返ってきっといい経験だったと思えるのではないかなと。将棋で負けだすと『何やってんだ』て声もあると思うので、その分将棋も頑張りたい」

 将棋をやってから漫才を、が2人のスタンスだ。ネタ合わせの日は必ず、将棋の対戦から入る。夕方まで将棋に没頭してから、「さあ、漫才をやりますか」となる。

 服「(冨田は)普段はめちゃくちゃ面白いんですけど、将棋に対してはまじめなところがあって。コンビを組んで、一緒に将棋指すことも増えて…あんまりいいすぎると失礼になるか…(笑い)」

 冨「見直したってことやろ」

 服「いや(笑い)将棋もすごい真剣にやられているんだなって…いや、当然なんですよ、当然なんですけど」

 コンビを組んでから、将棋も好調だ。互いに刺激を受けている。23年度の順位戦で服部はB級2組に、冨田はC級1組にともに昇級を決めた。

 冨「服部くんが上がりそうだったので、自分だけ上がらなかったらちょっとさえないなって。服部くんが頑張ってるから自分も頑張ろうって思って、いい影響をもらいました。それはコンビ組んでるからこそだなと思いますし、(個人競技の)将棋界的には不思議な存在やと思います」

 今年度も順位戦では2人とも白星発進で連勝中。全体でみても今年度の服部は10連勝と負けなしで爆走中だ。今年度の目標は?

 冨「順位戦連続昇級ですね。今はそれが一番の目標です」

 服「昨年はあまり納得のいく成績ではなかったので、今年は自分もという気持ちでタイトル挑戦を目指せればと思います」

 では、この夏、舞台の上での目標は何になるか。棋士は、盤外でも負けず嫌いだ。

 服「ひとつでも多くネタをやることですかね。むしろネタがないなって困りたいくらいやりたい」

 冨「銀沙飛燕が1回戦抜けて、僕らが1回戦落ちたら、差がはっきりわかるじゃないですか。さすがにそれはいややなって(笑い)」

 棋士たちはこの夏、笑いの舞台でも戦いに臨む。将棋界で俺たちが、一番面白い。

 ★取材こぼれ話

 関西の先輩棋士たちももぐら兄弟の活動を応援している。

 冨「糸谷(哲郎)さんは応援してるかあおってるか微妙なラインですねえ。師匠(小林健二九段)はどんどん頑張れって言ってくれてます」

 服「だいたいあおってる人のほうが多そうな…。でも、山崎(隆之)さんは(第10回の王手報知で)推し棋士に(冨田を)あげてくれてたから」

 冨「ありがたいですね。たまたまあの日、山崎先生と研究会やったんですよ。研究会の昼に推し棋士迷ってんねんって言われて(笑い)推し棋士であげた人が不祥事とか起こしたりしてもやばいし、これを機にこの人に会いたいと思ってくれた人がいても、結婚しちゃったら…とか山崎先生色々気にされてて。『冨田くん近く結婚せえへんよな?』って。しないと思いますっていったら、『じゃあ冨田くんでいこか』って。だから、今度もぐら兄弟で取材してもらうんですっていったら、『じゃあ冨田くんだけあげるのもちょっとあれか』って服部くんの名前も出してて」

 服「山崎さんらしいですね」

 ★「ライバルへ」銀沙飛燕・山本博志五段

 「聞いてないよ」はこっちのセリフですよ(笑い)。Xでももぐら兄弟がネタ合わせしてるとか発信してるから「いよいよやばいよ」ってなって、こないだも谷合さんと集まってサンマルクでネタ作りしましたよ。

 まあでも、もぐら兄弟はもう人前でやってますし、僕としては芸人としてはその背中を追ってるって感じなんですけど…「もぐら兄弟はきっとしゃべりの勢いで押す漫才だろう。ネタのコアの部分はきっとこっちのが面白い」って谷合さんは言ってます(笑い)

 彼らはキャラも明るくて、陰と陽なら陽なんですよね。僕らはどっちかというとちょっと陰な方なんで、そういう違いがネタにも出てくるのかなと思います。

 将棋界でこんな突拍子もない挑戦をする人が自分たち以外にもいるというのは心強くもあり。つまり…今度4人でご飯にでも行きましょうということですね。

 ◆冨田 誠也(とみた・せいや)1996年2月13日、兵庫県三田市出身。小林健二九段門下。立命館大学経営学部卒。20年10月、四段昇段(プロ入り)。24年、順位戦C級1組昇級、五段に昇段。

 ◆服部 慎一郎(はっとり・しんいちろう)1999年8月2日、富山市出身。中田章道七段門下。20年4月、四段昇段(プロ入り)。21年、加古川青流戦優勝。22年、新人王戦優勝。

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