1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

パリ五輪代表榎本遼香に本紙記者が体験入門 水泳・板飛び込みの極意に触れる

スポーツ報知 / 2024年7月16日 5時4分

体験で榎本遼香選手と立ち飛び込みシンクロに挑戦した大谷翔太記者(右) (カメラ・越川 亘)

 パリ五輪に向けたウェブ連載「Messages for Paris」の第20回は、水泳担当・大谷翔太記者の飛び込み体験記。飛び込みは、空中でひねりや回転技を繰り出し、入水では水しぶき一つ立てない「ノースプラッシュ」で観客を魅了する。日本代表選手から直接指導を受け、体験した大谷記者が、その魅力をレポートする。

******

 サッと跳んで、サッと入水を決める。パリでメダル獲得の期待がかかる玉井陸斗(17)=JSS宝塚=や女子3メートル(M)板の三上紗也可(23)=日体大大学院=らの演技を見ていると、洗練された技術が詰め込まれていることは分かっていても、“簡単”に演技しているように見える。ただ、言わずもがな実際にやってみると、想像を超える難しさがあった。

 6月14日、日本代表選手の直接指導のもと、栃木・日環アリーナで飛び込み体験会に参加した。水着に着替えて、ウォーミングアップ。水深5Mのプールの深さに慣れる(深く潜ると、最初は耳が痛い)ところから始まり、女子で3M板代表の榎本遼香(栃木トヨタ)“先生”の後を追って、高さ1Mの板に乗った。

 板の先端で、最初に感じた。「なんか、高くない…?」。水が透き通る5Mプールを上から見ると、水面との境目がわかりにくく、より高さを感じる。3M、5M地点からプールを見下ろした時も同じように感じた。その点、玉井らが得意とする10Mは、底から泡が出ていて水面が識別しやすい。選手が必要以上の高さを感じないための措置だと、教えてもらった。

 板競技は、踏み込んだ板の反発を利用して高く跳ぶ。これが難しい。気をつけの姿勢で足から入水する「棒跳び」で、榎本とシンクロに取り組んだ際、私が前方に跳び出してしまい入水がそろわない。シンクロでは「せーの」というかけ声から「1、2、3」と合図を送ってから跳ぶ。教えてもらった流れはこうだ。

 1手を横に広げ、1回軽く踏み込む。

 2手を上→耳の後ろから回しながら、より深く踏み込む。

 3回した手を下から上に振り上げると同時に、板の反発も使いながら飛び出す。

 2→3の流れの中で、飛び出すタイミングがとても難しい。理想は、踏み込んだ板の跳ね返りが最も強くなるフラット(180度)の地点で飛び出すのだろうが、何回やっても板が戻る途中で飛び出してしまう。板が斜めの状態で飛び出すから、前に跳んでしまう。榎本先生からは「2でためて、手を振り上げると同時に板の力をもらいながら跳ぶ」と助言をもらったのだが、思ったより柔らかいジェラルミン製板の取り扱いで頭がいっぱい。考える余裕すらなかった。

 跳んで、体をひねって回って、入水の美しさを競う競技。2秒弱の試技から水面に吸い込まれる様なノースプラッシュを決めれば、水中にも響くような大歓声に包まれる。男子高飛び込みで日本初の五輪メダル獲得に挑む玉井によると、10メートルから跳んで入水で受ける手首の衝撃は約1トン。少しでも着水を失敗し体を水面に打ち付ければ、皮膚が裂けるような痛みを伴う。一瞬の緩みさえ許されない、究極の2秒間。選手は刹那の勝負に、膨大な時間をかけ、努力を積み重ねる。

 体験会の前、囲み取材で榎本が言っていた。「板の跳ね返りをもらっているタイミングがずれていると最近気づいて、はね返るタイミングを細かく、センサーみたいに感じながらやっている」。ただ聞いているだけでは、正直理解できない。だが板に乗ったからこそ、今ならかすかに分かる。選手がいかに、繊細な感覚で跳んでいるか。板の上では、上下の揺れだけでなく横揺れも感じる。あの不安定な板の上で跳びながら助走し、先端でピシャリ、板の力を正しく受けながら跳ぶなどまさに神業に思える。

 体験会の最後には、馬淵崇英コーチ、安田千万樹コーチらジャッジのもと、シンクロ板飛び込み対決が行われた。選手と記者がペアを組んで5組。榎本―大谷組は、大谷の技術不足で4位だった。懇切丁寧に教えてくれた榎本先生には申し訳なかったが、真っ先に頭に浮かんだのは「飛び込み、めちゃくちゃ楽しい」ということだった。水に飛び込む瞬間は心地よく、少しでもうまく踏み切れたと感じればうれしい。

楽しく教えてくれた選手には、感謝を伝えたい。パリでは、8月5日の女子高飛び込みの荒井祭里(JSS宝塚)から出場する日本勢。ともに跳んだ“仲間”として、今度は選手の雄姿をペンで届けたい。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください