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藤山直美が語る「演じ納めの覚悟」 7月は父・寛美さんの“指定席” 当たり役で連日沸かせる

スポーツ報知 / 2024年7月16日 14時9分

代表作のひとつ「はなのお六」に出演中の藤山直美(カメラ・頓所 美代子)

 東京・新橋演舞場公演「七夕喜劇まつり」(28日まで)で、上方喜劇の名作「はなのお六」に主演中の女優・藤山直美(65)が、このほどインタビューに応じた。

 花道から直美が姿を見せると、場内の雰囲気は一変する。その沸き方から、直美を待ちわびている人がどれほど多いかが伝わってくる。「はなのお六」は直美の父で、喜劇王といわれた藤山寛美さん(1990年没、享年60)の代表作「はなの六兵衛」の六兵衛を、直美がお六として演じている。「7月の新橋演舞場」といえば、寛美さんが松竹新喜劇で座長公演を行ってきた“指定席”だ。

 直美の舞台上での伸びやかな姿を見れば、天性の女優と思われがちだ。しかし、芸能活動を本格化させるのは父亡き後。本人の意志というより、周囲に引っ張り出されるようにして始まった。最初にお六を演じたのは90年で、今回が14回目になる。「大阪ぎらい物語」に並ぶ親子での当たり役だ。浮かれた言葉は一切出てこない。

 「喜劇って、やっぱり飛んだり、跳ねたりは避けられませんのでね。花道から出てきて、本舞台に着くまでに肩で息していることもあります。前はそんなことなかったのに。何歳までできるかというのは、難しい課題やと思っています」。客を笑わせ、ときに泣かせる「熱い喜劇」に、どこまでも冷静だ。演じるだけでなく、大入りにしなければならない、というプレッシャーを一身に背負ってきた。

 「いまは千秋楽の28日まで無事に舞台をつとめるのが、こんなにも大変だったんだ、ということも感じたりします。この年齢になって、“お六”も最後かな、と思うことがあります。現実に、去年10月の『大阪ぎらい物語』(京都・南座)でも、あれでやり納めかな、と思ってさせてもらっていましたし」。常に見納めの覚悟との闘いであることを明かす。

 しかし、「お六」を演じ続ける理由がある。いまも役が変化し、新たな発見に出会えるからだ。「現実離れした物語です。おとぎばなしのように見てもらえれば。でも(劇中での)妹や弟を思う気持ちは、震えるように分かるようになってきました。そして人の情け。優しい言葉が胸にジーンときて。すごくディープに感じるんですね」。この言葉が芸の進化を裏付ける。

 寛美さんとは、この演目について話した記憶はないという。しかし、頭をよぎることがある。クライマックスでお六が御殿に招かれる場面。粗末な着物姿で、ぽつんと1人で演じなければならないところがある。

 「あんな広いところに放り出されて。『一人で一体どないすんねん』。そんなことを思うときがあるんです。そして『お父さん、しんどかったやろな』とか。やっぱり役者って、孤独なものやと思いますね」

 57歳までの約四半世紀、1年の大半を座長公演が占めていた。多少の体調不良も気力ではねのけ、気持ちを奮い立たせ、命を削るような日々。一度の休演もしたことがなかった。一見、華やかで順調に見えるが、壮絶な中を生きていた。

 そこへ転機が訪れる。58歳のときに見つかった初期の乳がん。闘病から約7年になる。仕事のペースは以前より緩やかになった。しかし、極限までの役への追い込みは、より増しているように映る。「6月27日にも病院には検査に行ってきました。全部、大丈夫でした。おかげさんで。でもいま思うと、病気したことは、転ばぬ先のつえ、だったのかもしれませんね」。

 還暦を過ぎて、直美はよくこう言う。「私が唯一、親孝行したといえるのは、父親より長生きできたことでしょうね」と。重い言葉だ。太く、濃く、60歳で逝った寛美さんは、人生を喜劇に捧げた。直美は今年12月で66歳になる。父より長く生きる中で揺るぎないものにした親子2代での当たり役。喜劇の喜怒哀楽の深淵に触れながら、舞台に立ち続ける。(内野 小百美)

 ◆はなのお六 主人公のお六は、江戸で出世すれば貧しい家族が助けられると信じ、故郷・大和吉野から出てくる。ようやく江戸の芝・増上寺にたどり着く。ちょうどそのころ、佐賀藩有馬家の江戸屋敷では、ご宝物の三つ葉葵の白旗が行方不明になり、一大事になっていた。実は、お六は鼻ききの名人で一里四方のものなら、嗅(か)ぎ出せる特技の持ち主。果たして白旗の行方を嗅ぎ当て、立身出世できるのか。共演は中村亀鶴、春本由香、大津嶺子、市村萬次郎ら。

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