【高校野球】太田西山のプロ注目右腕・関が散る 不登校乗り越え急成長「ノー・ベースボール、ノー・ライフ」

投球する太田西山・関景介投手（カメラ・中西珠友）

◆第１０６回全国高校野球選手権　茨城大会　▽２回戦　太田西山１－８水城＝７回コールド＝（１６日・ノーブルホームスタジアム水戸）

　９日に創部６年目にして劇的な夏初勝利を挙げた太田西山（せいざん）は甲子園出場経験のある水城に７回コールドで敗れた。プロ注目の最速１４５キロ右腕の関景介投手（３年）が１回戦に続いて先発したが、７回を９安打８失点で最後の夏が終わった。

　１回戦で１４４球を投げた疲れを見せず、初回に自己最速タイの１４５キロをマーク。２つの空振り三振を奪うなど順調な立ち上がりを見せた。「３回までは球数少なく凡打や三振がとれる”自分らしさ”が出た」と納得の出来だったが「４回は乱れてしまった」とうつむいた。「いつものこと」という爪が割れ、足もつるアクシデントに加えて「呼吸が荒くなり、自分１人で修正できなかった」と課題だったメンタルの乱れも出た。ベンチから“深呼吸”のプラカードも出されたが、１点の先制を許し、なお２死満塁から３者連続押し出しを与えるなどこの回、２安打４四死球で４失点。７回にも３長短打を集められ３失点してコールドでの敗戦が決まった。

　関は１年時から大きく成長した。中学、高校で不登校になった時期もあった。肥田慎平監督（３４）は「（関は）体調が安定せず、休みがちだった。学校に来るのがやっとだった」と話す。本格的に高校に行き始めたのは１年の７月で「お父さんに無理やり部屋から出され、車に乗せられて学校に放り込まれた」と関は笑った。野球などの実績が求められる特色選抜で同校に入学するも「野球の道を諦めて通信に行こうか」と消極的になったことも。それでも「久しぶりにボールを投げて、こんなに楽しいんだ」と初心に帰り、野球を続けることを決意。今でも学校に連れて行ってくれた父に感謝していると言い、今でも大好きな野球の存在について聞くと「Ｎｏ　Ｂａｓｅｂａｌｌ，Ｎｏ　Ｌｉｆｅ」と照れくさそうに笑った。

　父・勝仁さん（６１）は息子の成長について「野球に関しては自分で考えて、準備してできるようになった」と感慨深げだった。私生活でも自分の意志のまま動く少年だったといい「４歳か５歳の時、家に家族が誰もいなくて（住んでいる常陸太田市から）１５キロ離れた隣の常陸大宮市にある商業施設に自転車で１人で行こうとした」とエピソードを明かす。

　その行動力は高校野球でも発揮されている。チームが指示を仰いだ外部コーチによると、関自ら試行錯誤を重ね、新球・チェンジアップを覚えるなど、６種類の変化球を操り、球速も１年時の１１３キロから１４５キロに３２キロアップ。毎食米２合を食べ、ウェートトレーニングも重ね、体重も２５キロ増えた。

　高校最後の夏の終わりにも、涙はなかった。試合終了時のあいさつが終わると、真っ先に頭付近にデッドボールを当ててしまった水城・大須賀悠哉内野手（３年）に歩み寄り、左肩に手をかけて何度も謝罪。「（中学時代に）心が弱くて、人の目を見て話せなかった」という部分を全く感じさせない一面も見せた。

　大きく成長した３年間を終え、今後について「高卒でプロに行きたい」と明言した。１回戦では巨人ほか４球団のスカウトが視察。１９年の統合以前に、佐竹から金沢次男氏（８１年大洋ドラフト５位、元日本ハム、ヤクルトなど４球団で活躍）がプロ入りした例はあるが、同校ではまだプロ野球選手はいない。肥田監督は「今日のピッチングでは難しいのでは」と漏らしつつも「本人は『育成でもプロに行きたい』と言うのでドラフトまでトレーニングを続けて、ご縁があれば」とエースの背中を押す。関は夢をかなえるため「今日の４回みたいな時に自分で修正して、投げ込める投手になりたい」と課題をあぶり出した。また次のステージへ向けて、走り出す。（中西　珠友）

関景介（せきけいすけ）

生まれ　２００７年３月５日（１７歳）

出身　常陸太田市

家族構成　父、姉、兄、祖父、祖母

サイズ　１７５センチ、７５キロ、右投げ左打ち

球歴　常陸太田学童野球スポーツ少年団（小２～二塁手、小４～投手）→常陸太田市立水府中学→太田西山高校（１年夏～ベンチ入り、２年茨城県選抜）

最速　１４５キロ

持ち球　ストレート、カーブ、カットボール、スライダー、スプリット、フォーク、チェンジアップ

憧れの選手　オリックス・宮城大弥投手

趣味　ゲーム（ＶＲＣｈａｔ）…不登校時は昼夜逆転でやるほどの”マニア”

ニックネーム　ケニー