国学院久我山・矢野丈太郎の打席でＧ党おなじみの応援歌 父はスタンド観戦「変な感じがした」

７回、ヘッドスライディングで生還する国学院久我山・矢野（カメラ・中島　傑）

◆第１０６回全国高校野球選手権　西東京大会▽４回戦　国学院久我山５―０世田谷学園（１８日・Ｓ＆Ｄ昭島スタジアム）

　西東京では、国学院久我山が世田谷学園に５―０で勝利し、５回戦に進出した。巨人・矢野謙次打撃コーチ（４３）の長男・丈太郎外野手（３年）は「２番・中堅」でスタメン出場。スタンドから見守った父の現役時代の応援歌を背に、３打数２安打２盗塁と躍動した。

　Ｇ党にはおなじみの応援歌を背に、矢野が躍動した。初回、無死一塁で迎えた第１打席。スタンドから「矢野丈太郎　気合の戦士…」と演奏が始まった。３球目のバントファウルで追い込まれたが、引きずらない。「打席の中ですぐ切り替えてサイン通り打てた」。ヒッティングのサインに切り替わった５球目を中前にはじき返し、一塁上でガッツポーズ。この回２点の先制劇につなげた。

　ハッスルプレーは続く。走っては７回にはヘッドスライディングで生還し、守っても８回２死一、三塁では気迫のスライディングキャッチ。３打数２安打２盗塁で２得点の大活躍。父の現役時代を彷彿（ほうふつ）とさせる気合のこもった熱いプレーの数々で、ユニホームは真っ黒だった。

　この日は父の巨人・矢野謙次打撃コーチも応援に駆けつけ、赤いＴシャツにはちまき姿で熱血応援。メガホン片手に全力で声を張り、得点が入ると周りとハイタッチ。父は「（自分の応援歌を聞くのは）変な感じがした」と笑ったが、息子のプレーに「いいところが出たんじゃないかな。一番良かったんじゃないですかね」と目尻を下げた。

　丈太郎にとって、お手本の父親だ。中学２年生になるまで、自宅の庭や公園でキャッチボールやバッティングを行った。父の引退試合となった日本ハム時代の１８年１０月１０日のロッテ戦（札幌Ｄ）。７回に代打で登場し、左前安打を放った姿が今でも印象に残っている。「グラウンドに早く来て、素振り、試合前のアップとか、いつもと変わらない準備をちゃんとして試合に臨む。そういうところは見習っていきたい」。準備の大切さを思い知った。

　父は今は「息子は息子なりにいろいろ考えてやったりしてると思うので」とあえて何も言わず、温かく見守る。丈太郎は「目の前の一戦一戦をしっかり戦いきって、最後に優勝が見えたらいい」と意気込んだ。父が果たせなかった甲子園出場をつかみとる。（大中　彩未）

　◆矢野　丈太郎（やの・じょうたろう）２００６年８月２７日、東京都生まれ。１７歳。小学１年で野球を始め、市ケ尾シャークスでプレー。市ケ尾中では東京城南ボーイズに所属。国学院久我山では１年春からベンチ入り。高校通算１５本塁打。５０メートル６秒０。趣味は映画、音楽鑑賞。１８３センチ、８９キロ。右投右打。