羽生結弦さん「理想はどんどん高く」 根幹にある「ファンのために」 プロ転向2年インタビュー最終回(後編)
スポーツ報知 / 2024年7月21日 4時1分
プロ転向を表明してから19日で丸2年を迎えた、フィギュアスケートの羽生結弦さん(29)の単独インタビュー最終回。アスリートとしての「全力」「心技体」「理想」を語った。(聞き手・高木 恵)
―本番前の集中力の高め方は?
「結局僕の場合は、理論的には、自分が熱くなれるとか、自分が楽しいと思える場面をつくれば、集中は自然とできると思っているんです。だから、声には出していないですけど、音楽に乗せたりとかするのが結局自分の集中のスイッチなんですかね。血がたぎるというか、脳のスイッチ自体が変わるみたいなのは、やっぱあります。曲が、音楽が、みたいな感じですかね」
―今も完全にアスリート。アスリートは「心技体」という言葉をよく使うが、羽生さんの中で心技体の位置付けは?
「結局バランスを取れないと意味がないのかなっていうのは思います。どこかに突出してしまうと…例えば、心がすごく強くなってしまった時があったとしたら、心の大きさに対して技術が足りなかったりすると、多分その心自体も破滅していくし、のまれていってしまうというか。だから、心を表現するための技術が間違いなく必要ですし。その心と技術がたくさん広まっていったとしても、体力がなかったら、体自体がうまく機能していなかったりしたら、逆に技術と心にのまれていってしまうというか。結局、本当にレベルアップしたいんだったら、全部大きくしなきゃいけないっていうのは思いますね」
―アスリートとは。
「今、本当にプロと言われる現場にいろいろいさせてもらって、自分が本当にこの人を尊敬できるなって思うような人たちと触れ合う機会が増えてきた中で思うのは、本当に超一流と自分が思う人間の人たちは、みんなアスリートなんだろうなって思うんですよ。例えば、NHKの番組で『プロフェッショナル』がありますけど、ああいう人たちも、もう本当にアスリートというか。ある一点に対して、目標だったり理想に対しての自分の時間の使い方というか、魂の使い方みたいなものが、アスリートなのかなっていうのは、自分の中では思っていますね。それをアスリートと呼ぶのかプロフェッショナルと呼ぶのかは分からないけれども、僕はそもそも競技時代からそういう性格でやってきたので。それを自分は、アスリートと呼びたいかなっていう感じはします」
―競技者時代の後半から「理想」という言葉をよく口にしてきた。そこは絶対に譲れないという決意表明のようにも聞こえる。
「競技者時代の後半に『理想』を言い始めたのは、結局その、自分が…。ぶっちゃけた話をすると…自分がこういう演技がしたいと思っていて、でも、それがやっぱり評価につながらないみたいなものがずっとあったので。その時にもう、自分の理想を追いかけるっていうことにシフトしたんですよね」
―オータムクラシックあたりか。
「一番番大きかったのは、オータムですかね。2019年、オータム…ですかね。あの時に、自分は自分がやりたいことをしっかりやって、点数どうのこうのではなくて、自分の目指している演技というものをしっかりやることが一番大切だ、みたいな感じに思い直すしかなかったというか。それがきっと、ファンの人たちも喜んでくださるみたいな感じで、イコールになったんですよね。そこから、今もその延長線上にいて。プロスケーターになったら余計それを追い求めて、やらないと。ファンの方々のために滑っているので。よりその理想はどんどん高くなっていくし、その理想を追い求めて、みたいなところはあります」
◆取材後記
羽生さんはプロ転向から1年が過ぎた昨年、スポーツ報知にファンへのメッセージを寄せてくれた。「これからも常に理想を目指し、そして、理想を常に更新し続けていきます」とあった。まさにその通りの、この1年だったように思う。
自分が進むべき道が、より明確になったのだろう。表情は明るく、充実感に満ちていた。3年目への意気込みを色紙に記してもらった。「『理想』を追い求めて」と書いてくれた。「ファンの方々のために滑っているので。よりその理想はどんどん高くなっていく」と言った。曲に溶け込んだ美しい滑り。高度な技術があってこそ成り立つ表現の幅。羽生さんが大切に育んできた「理想」のスケートを、これからも大切にしてほしい。(高木 恵)
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