映画「先生の白い嘘」で物議醸したインティマシー・コーディネーター問題 現場の実情とジレンマ
スポーツ報知 / 2024年7月22日 11時30分
今月5日に、女優・奈緒(29)が主演を務める映画「先生の白い嘘」(三木康一郎監督)の公開初日舞台あいさつを取材した。
本作は、主人公が抱える「性に関する矛盾」「男女間の性の格差」などに切り込んでいる。公開前に三木監督が総合ニュースサイト「ENCOUNT」の取材に、奈緒からの「インティマシー・コーディネーター(=IC、性的描写の撮影で精神面などをサポートする専門職)を入れてほしい」との要望を断ったという発言が物議を醸していた。
イベントは定刻より約15分押して、プロデューサーが事態を陳謝する異例の形でスタート。続けて監督や出演陣が謝罪や、IC不在の撮影への思いを語った。客席からすすり泣きも聞かれた。それでも奈緒らは気丈に、思慮深く言葉を続けた。その真摯(しんし)な態度や作品への並々ならぬ覚悟はまっとうに伝え、受け取られるべきだと感じた。
後日、芸能事務所関係者に、IC発注の実情を聞いた。「ドラマの現場では台本が上がってくるのが遅く、ICを調整する余裕がない」「ICの費用は制作側、事務所のどちらが負担するのが公正か」「日本で有資格者は数人しかいない」などのジレンマもあるようだ。
同イベント時、上映直後の会場に漂う張り詰めた空気が気になった。本作は若手アイドルも出演しており、会場には若い女性の姿が目立った。普段であれば雑談やメイクを直すファンらも、この日は作品性の影響か、ぐったりと放心状態のような姿も少なくなかった。イベントに登壇した風間俊介(41)が、「気分が悪い方がいらしたら、お気になさらずに退出して休んで」と促したのも、うなずける。
記者も本編を観賞したが、性暴力のシーンは想像以上に衝撃的であった。「R15+」(15歳以上が鑑賞可能)指定付きであるものの、未成年には重たい作品でもある。自分が執筆した記事は「観賞を検討する15歳にも届けること」を想定したものであったか、考え直す余地はある。原作漫画の存在の周知や、ネタバレに抵触しない範囲であらすじの伝え方、型にはまった表現に終始していないかなど再点検する必要を感じた。
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