【高校野球】天国の父のために…札幌日大・田中涼介は昨年亡くなった父との約束守る

７番・左翼でフル出場した札幌日大・田中涼介

◆第１０６回全国高校野球選手権南北海道大会　▽決勝　札幌日大６―４立命館慶祥（２１日・エスコンフィールド）

　悲願の初優勝で父との約束を守った。「７番・左翼」でフル出場した札幌日大・田中涼介（３年）は「約束を果たせてよかったです。『お父さんのために絶対甲子園決めるから』と今日も手を合わせて家を出たので」と天を見上げた。

　昨年５月、父・植次（しげじ）さんががんで亡くなった。５７歳の若さだった。日曜大工が好きだった父は野球未経験ながら「スイングを確認できるように」と自宅の車庫に専用の鏡を作ってくれた。「息子のために一生懸命な人でした」と母・直美さん（５３）。余命宣告から約４か月。別れは突然だった。「絶対レギュラーになるから。見といて」。棺（ひつぎ）にはそっと手紙を入れた。

　背番号は１７。それでも今夏は地区予選から全７試合で先発し主力としてチームを支えた。今もバッグに大切に忍ばせるのは、生前に父がエスコンＦで撮影した写真。田中は「鏡の前でバットを振り続けてきた。一緒に（甲子園に）行きたいと思います」と目を真っ赤にしてうなずいた。（堀内　啓太）