「清宮フィーバー」２年後から７年間神宮の呪い…「ほっとした」第１回大会出場名門が甲子園１００周年の節目に帰還

９年ぶりの甲子園出場を決めた早実ナインは応援席へ向かって駆け出す（カメラ・竹松　明季）

◆第１０６回全国高校野球選手権西東京大会▽決勝　早実１０ｘ―９日大三（２８日・神宮）

　西東京では早実が日大三との名門対決を１０―９のサヨナラで制し、９年ぶり３０度目の夏切符をもぎ取った。９―９の９回裏無死満塁、内囿（うちぞの）光太二塁手（３年）が左前打を放ち、乱打戦に終止符を打った。甲子園１００周年を迎える節目に、夏の甲子園大会に連なる１９１５年の第１回全国中等学校優勝野球大会で４強入りした伝統校が帰ってくる。

　紺碧（こんぺき）の空の下、２万人の歓声と悲鳴が入り乱れた。９―９の９回無死満塁。打球が三遊間を抜けると、内囿はヘルメットを投げ、本塁に広がる歓喜の輪に駆けた。「抜けた瞬間はあまり覚えていない。人生で味わったことのない経験ができた」。９年ぶり３０度目の夏の選手権出場。甲子園１００周年の節目に、第１回大会にも出場した名門がサヨナラで聖地への切符をつかんだ。

　日大三との壮絶な打撃戦を制した。初回に３点を先制したが、３点リードの３回に日大三・岡本弦士一塁手（３年）の３ランで追いつかれた。激しいシーソーゲームの末、最後はサヨナラ勝利。夏決勝で日大三に勝つのは全国制覇した０６年以来で、和泉実監督（６２）は「ほっとした」と感極まった。

　栄光と苦難の９年間だった。２０１５年夏、清宮（日本ハム）が１年時から活躍し「清宮フィーバー」に沸くと、部員は１００人に迫り過去最大規模になった。１７年にはセンバツにも出場。招待試合や取材も増えて注目度が増す中、夏は決勝で東海大菅生に敗北。そこから７年間、神宮で勝てない“呪い”に苦しんだ。

　昨年は慶応が「エンジョイベースボール」で甲子園を席巻する中、早実は神宮での西東京大会準々決勝で日大鶴ケ丘にコールド負け。中心選手に世田谷西シニア出身を多く抱えていた昨年のライバルの躍進を見て、同シニア出身の内囿は「自分たちがあそこにいないという現実を突きつけられた。（甲子園に）出て活躍したいという気持ちが芽生えた」と悔しさを力に変えた。

　早実は１９１５年の夏の第１回全国大会、初めて甲子園で開催された１９２４年大会の両方に出場した。「生徒を成長させてくれる場所。まだ心配な面はあるが甲子園は解放してくれる」と指揮官は言った。昨年は「陸の王者」が甲子園でＶ。今年は「覇者・早稲田」が王座をつかむため、聖地へ向かう。（浅岡　諒祐）

　◆早実（国分寺市）１９０１年創立。６４年に早大の系属となり、２００１年に校舎を新宿区から国分寺市に移転。０２年共学化。野球部は１９０５年創部。部員４８人。春は２１度出場で優勝１度。主なＯＢにテリー伊藤（演出家）、小室哲哉（音楽家）らがいる。