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【パリ五輪】“泣き虫なっちゃん”嬉し泣き 角田夏実、父と作り上げ「信じた」世界最強のともえ投げで金メダル

スポーツ報知 / 2024年7月28日 22時35分

金メダルを獲得し笑顔の角田夏実(カメラ・小林 泰斗)

 27日に競技が始まったパリ五輪、女子48キロ級で初出場の角田夏実(31)=SBC湘南美容クリニック=が日本選手団第1号で金メダルに輝いた。日本の夏季五輪通算500個目、日本柔道最年長&同級では2004年アテネ大会の谷亮子以来の金と記録ずくめのメダルにもなった。必殺のともえ投げを駆使し、5試合を勝ち抜いた強さの裏側を柔道担当の林直史記者が「見た」。

 表彰台の真ん中で君が代を聴くと、角田は涙が止まらなかった。「諦めないで良かったな」。52キロ級で届かなかった五輪の舞台へ48キロ級に変えて再挑戦し、日本柔道最年長の31歳11か月で立った。昨年6月の代表内定後、日本勢1号、夏季五輪通算500個…。メダルにまつわる数々の記録への期待を1年以上も受け続けた。「自分を保つために耳をふさいでいた。安ど感が強い」。重圧が、ようやく消えた。

 初戦から徹底的にともえ投げで攻めた。世界中に知れ渡った得意技。対戦相手からは当然警戒され、技の幅を広げることが長年の課題だった。だが、この日だけは決めていた。「五輪は自分を信じて。どれだけ対策されてきても、ともえ投げで戦う」。一発で決まらなくても、つぶれても、かけにいった。たとえもつれても、腕ひしぎ十字固めで仕留めた。寝技中心の異色スタイル。磨き上げた2つの武器が金メダルの原動力となった。

 必殺技は街の体育館で生まれた。高校時代、休日に親子参加の柔道教室に出かけた。「これ使えるんじゃないか」。父・佳之さん(64)が教えたともえ投げは競技用ではなく、演武の「投の形」で覚えたもの。左組みの選手は右足で蹴り上げる形が一般的だが、角田は当初左足で入っていた。通常とは逆の形から始まったことが、その後に両足で持ち上げて相手をコントロールする独自の技への進化につながった。

 独特な感覚は、技だけではない。小学校時代は“泣き虫なっちゃん”と呼ばれた。試合が始まると泣き始め、泣き終わる頃には勝っていた。周囲の保護者からは「なっちゃんは泣くと強くなるよね」と評判だった。中高大と進むうち、タイミングは試合前に変わった。

 試合前、コーチと会話をしている時にポロポロと涙がこぼれてくる。緊張か不安か、自分でも理由ははっきりしないが、泣くことで「すっきりして試合にいける」。この日は試合前、自ら涙を出そうとしたが、出なかった。初戦に向かう途中、負けて泣きながら引き揚げてくる選手にもらい泣きしそうになったが「今から試合だ」とグッとこらえた。もう、泣かないでも畳に立てた。「夏に実るように」と願いを込めて夏実と名付けられた。ためていた涙をこの夏、最高の瞬間に解き放った。(林 直史)

 ◆ともえ投げ 捨て身技の一つ。相手を前方に崩して下にもぐり込み、足を腹部付近に当て、自身はあお向けの体勢から後ろに倒れ込むように蹴り上げる。ともえの形で回転し、投げる技。

 ◆角田 夏実(つのだ・なつみ)1992年8月6日、千葉・八千代市生まれ。31歳。八千代高から東京学芸大、SBC湘南美容クリニック。52キロ級で2016年GS東京大会優勝、17年世界選手権2位、18年アジア大会優勝。19年講道館杯で48キロ級に階級を下げて優勝した。同階級では21年から世界選手権を3連覇。得意技は関節技、ともえ投げ。161センチ。家族は両親と姉。

 ◆谷亮子の04年アテネ五輪 03年にプロ野球の谷佳知外野手と結婚。「田村で金、谷でも金」の誓いを立てて臨んだ。大会前の練習中に左足腓(ひ)骨筋腱(けん)損傷、左足首のじん帯を伸ばすけがを負ったが、決勝でフレデリク・ジョシネ(フランス)に優勢勝ち。2大会連続での金メダルとなり、日本女子初の連覇を達成した。

 ◆柔道日本勢の五輪の最年長金メダル 21年東京五輪で、女子78キロ級の浜田尚里が30歳10か月で金メダル獲得。この記録を31歳11か月の角田が上回った。男子の最年長は2008年北京大会の66キロ級・内柴正人で30歳1か月。

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