【パリ五輪】なでしこ救った19歳・谷川萌々子のロング弾は偶然ではない…憲剛育ての親・山口隆文氏が伸ばした個性
スポーツ報知 / 2024年7月29日 6時57分
◆パリ五輪サッカー女子 ▽1次リーグ第2戦 日本2―1ブラジル(28日、パルク・デ・プランス競技場)
サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」がブラジル代表に2―1で逆転勝ちし、2試合を終えて1勝1敗とした。後半アディショナルタイムに決勝のロングシュートを決めた19歳のMF谷川萌々子(ローゼンゴート)は、中高生時代を過ごした日本サッカー協会の育成機関「JFAアカデミー福島」で、山口隆文監督の指導を受けて育った。山口氏は元日本代表MF中村憲剛らを育てたことで知られる名指導者。山口氏がこのほどスポーツ報知の取材に応じ、谷川が遠目からでもシュートを狙う原点を明かした。(田中孝憲)
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「谷川の強みとは?」と聞かれたら、記者はロングシュートと答えたい。彼女は体幹が強くボール奪取に優れ、視野が広く好配球ができるボランチが主戦場だ。FWではないが、シュートは誰よりも迫力があり力強い。ボールが破裂しそうな「ボフッ」という音がする、強いキックができる。その能力が最大限に生きるのが、意表を突くロングシュートだ。
育ての親・山口氏は谷川の特長をゴールへの意欲と言う。
「常に狙っている。狙っているというとは、隙がないか見てるということ。どこからでも点を取りたいから」
山口氏によると、女子のGKは男子に比べると守れる範囲が広くない傾向があるという。だから谷川の得点を取りたいという意欲を伸ばすため、山口氏は男子であれば蹴らせない遠い位置からでもあえて狙わせ続けた。
「男子だったら『確率を考えろ』と、言いたくなる場面でも、女子の場合はそれが入ることがある。入るからそのままにしていたら、だんだんと狙うことが当たり前になってきた。そして、その確率も高くなってきた。『やめろ』と言わなくてよかったなと。そのままにしといてよかったなと」
だから19歳MFにとっては、ブラジル戦の決勝点はいつものプレーだった。谷川はボールをワンステップで蹴る直前、チラリとGKの位置を確認している。前に出ている―。相手に考える隙を与えず、すぐに右足を振り抜いた。狙い澄ましたシュートは弧を描いて相手GKの上を通過し、ゴール左上へと吸い込まれた。
そのプレーが注目されたのは、昨年10月の杭州アジア大会決勝の北朝鮮戦だ。2―1の後半24分に、今回と同じように強烈なロングシュートで3点目を入れた。
「パン、パン!とすぐに打ったでしょ。それは止めて、早く蹴るという習慣化を言われた通りにちゃんとやっているからだね」
強いボールが蹴れるのは、日頃から世界を意識した強度の高い練習を積み重ねていたから。基本に忠実に止める、蹴るを正確にできるように反復練習。そして筋力トレーニングも行い、元々蹴れた両足のキックのレベルも上がってきた。
谷川は昨夏の女子W杯にトレーニングパートナーとしてチームに帯同した。練習生として過ごした1か月は、大きな転機となった。谷川がその時の経験を後輩達に伝えた様子を、山口氏は回想する。
「卒業する前に、後輩の前で20~25分のプレゼンを毎年させているですよ。その時に(谷川)萌々子は『運動量は(長野)風花さんや(長谷川)唯さんにはかなわないけど、ボールを蹴る力とか飛距離は、負けてると思わない』というようなことを伝えていた」
五輪のメンバー入りを果たしたが、ここがゴールではない。谷川に続く後輩達のためにも、山口氏はエールを送った。
「(当初発表の)18人に入るということはすごいこと。でもそれが終わりじゃない。通過点に過ぎない。自分が望むサッカー選手になるために、なでしこジャパンが最後じゃない。ビッグクラブに行くことが最後じゃない。どういうサッカー選手になりたいか。19歳だから、まだまだこれから。どこまで自分が高まるかに挑戦するわけで、W杯や五輪という大会も手段。目的はそこじゃない。常に出られる状況を作るために、もっといいプレーをするために、貪欲にサッカー選手の完成度を追求する通過点に過ぎないから。僕は彼女たちを脅かす刺客を、送り込んでいきますよ」
* * *
谷川は2005年5月7日、愛知県生まれ。今年3月に高校を卒業したばかりの19歳。小学生時代はJ1名古屋の下部組織「グランパスみよし」で育ち、小学6年時には愛知県の年間最優秀選手に選ばれた。
小学校卒業と同時に、親元を離れてJFAアカデミー福島入り(当時は原発事故の影響で静岡県内で活動)。そして今春の高校卒業と同時に、WEリーグを経ずに、バイエルンと契約を結んだ日本女子サッカー界の逸材だ。現在はスウェーデンのローゼンゴートに期限付き移籍中だが、開幕戦から出場9試合連続ゴールで10得点の大活躍をしている。また22年にはU―17女子W杯に挑む日本代表に選出され、シルバーブーツ賞を獲得している。昨夏には女子W杯のトレーニングパートナーとして帯同。昨年12月のブラジル遠征でA代表初出場した。
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