【高校野球】聖光学院が３年連続甲子園出場…高野結羽が１失点完投…仲間からの自覚促す「荒療治」で真のエースに

優勝の瞬間、マウンドの高野（左から３人目）の元に集まる聖光学院ナイン（カメラ・秋元　萌佳）

◆第１０６回全国高校野球選手権福島大会決勝 　聖光学院４―１学法石川（２８日・県営あづま球場）

　決勝で聖光学院が学法石川に４―１で勝利し、３年連続１９度目の全国高校野球選手権（８月７日から１７日間、甲子園）出場を決めた。先発したエース・高野結羽（ゆう、３年）が２安打１失点で完投。メンタル面が課題だった春から、仲間に活を入れられて生まれ変わった姿をマウンドで披露した。東北６県の代表が出そろい、抽選会は８月４日に行われる。

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　　最終回をわずか４球で３者凡退に仕留めた聖光学院のエース・高野は、あふれる感情を抑えきれなかった。「勝利の報告ができて本当によかった」と仲間にもみくちゃにされると「泣かないと決めていたんですけれど…」と歓喜の輪の中で崩れ落ち、勝利をかみしめた。

　初回に４点と大きな援護をもらうと「楽な気持ちで投げられた」と堂々のマウンドさばきを見せた。秋春と学法石川打線に効果的だったスライダーは攻略されると分析し、冬場に磨いたカットボールを軸に組み立て５回１死まで完全投球。７回は先頭への死球から犠打で１死二塁とされると、適時二塁打を浴びて１失点も「同点になってもいいと切り替えた」と後続を断ち切り、８、９回は３者凡退。２安打１失点での完投に斎藤智也監督（６１）も「想定以上の踏ん張りで、よく投げてくれた」とねぎらった。

　昨秋も背番号１を背負ったが、東北大会初戦の日大山形戦は１回２／３を５失点で降板。成長したい気持ちが空回りし、自分本位の投球が目立つようになった。三振ばかりを狙い、マウンドで不満を態度に出す姿に、斎藤監督は「独り相撲を取るやつはいらない」と厳しい言葉を掛けた。

　それは仲間も同様だった。二枚看板を背負う古宇田烈投手（３年）は「２、３か月くらいまったく日常会話も交わさない時期もありました。これじゃいけないと分かってほしかった」。チーム全員が、エースに自覚を促すために決断した究極の荒療治。その劇薬が、効かないわけがなかった。

　夏の大会を前に、マウンドで声を積極的に掛けたり、日常でも仲間の意見に耳を傾けることが増えた。この日も奪三振は４つのみ。仲間を信じて、打たせる投球を目指した。古宇田が「高野が変わってくれたおかげで、負けないでここまで来られた。背番号１が高野で、素直に納得できました」と話すように、優勝の瞬間、仲間は笑顔でマウンドの高野に駆け寄った。高野は「正直、まだ自分ってどうなんだろうと感じていたけれど、最後の輪に自分が入れて、こんな仲間は本当にいないと思いました」。皆に認められた「本当のエース」としての喜びは格別だった。

　昨夏の甲子園は１回戦の共栄学園（東東京）戦に３番手で登板して２回２／３を無失点と好投。１年ぶりに立つ聖地のマウンドで「この仲間を絶対に負けさせちゃいけない。気持ちを出したいい投球がしたい」と、生まれ変わった姿で仲間のために右腕を振り続ける。（秋元　萌佳）

　☆聖光学院・佐藤羅天（らま）主将（３年、バッテリーを組んだ先発・高野の投球について）「インコースの真っすぐを多く使った。受けていて恐ろしいとさえ感じた」

　◆聖光学院（伊達市）１９６２年に創立された共学校。７７年から現校名。生徒数６３１人。野球部は創立と同時に創部。甲子園は今回を含めて春６度夏１９度出場。部員数１１６人。主なＯＢは船迫大雅（巨人）、佐藤都志也（ロッテ）、湯浅京己（阪神）、山浅龍之介（中日）。新井秀校長。

　初回に勝負を決められた。学法石川の先発・佐藤翼投手（２年）は「３年生のために自分が結果を残せなくて悔しい」と肩を落とした。

　初回、３安打３四球と乱調で一挙４失点。２回２／３を投げた後に１度左翼に回り、３回から再びマウンドに戻った。「緊張とかはないけど腕に力が入らなくなった。レフトに行った後に体に力が入って、そこから投げられたんですけど…」。３回以降は５イニングを無失点に抑えて挽回したが、チームが１点しか奪えず追いつけなかった。

　新チームでは、今夏もバッテリーを組んだ大栄利哉捕手（２年）と中継ぎで登板した菊池祥志投手（２年）を中心に、甲子園出場を目指す。「悔しい気持ちは自分たちが分かっている。３年生の悔しさも背負って、自分がしっかりエースになって絶対優勝して甲子園に行きたい」と１年後に向け、誓いを立てた。

（太田　和樹）