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【パリ五輪】連覇の阿部一二三「新しい目標ができた」 妹・詩と28年ロス五輪で「一緒に金メダルを取りたい」

スポーツ報知 / 2024年7月29日 23時23分

五輪連覇を達成し、金メダルを手に笑顔を見せる阿部一二三(カメラ・岩田 大補)

◆パリ五輪 第3日 ▽柔道(28日・シャンドマルス・アリーナ)

 28日の男子66キロ級で阿部一二三(26)=パーク24=が五輪2連覇を果たした。兄妹(きょうだい)同日V2を目指した女子52キロ級の阿部詩(24)=パーク24=が2回戦で敗退。妹の無念さも背負い、決勝でビリアン・リマを下すなど全4試合を戦い抜いた。日本柔道通算50個目の金メダルで連覇は8人目。快挙を支えた一二三の努力と兄妹の絆を柔道担当の林直史記者が「見た」。

 相手に一礼し、顔を上げると、最高の景色が広がっていた。一二三は両手の人さし指を立てて2連覇を表現し、ぐるりと場内を見渡した。「360度、全員が祝福してくれていた。これが本当の五輪なんだな」。無観客だった東京五輪では味わえなかった喜びに浸り、ゆっくりと畳を下りた。

 自身の初戦前。詩が2回戦で衝撃の敗戦を喫した。一二三はアップ場のモニターに背を向け、表情一つ変えずに調整に戻ったが、妹が泣き崩れる姿に心はかき乱された。だが「泣くのは今じゃない。僕が金メダルを取らなくて、誰が取るんだ。兄として、絶対に妹の分までやり切る」。妹の思いも背負い、全4試合を戦い抜く覚悟を決めた。

 この3年間は東京五輪を上回る壮絶な努力を重ねてきた。五輪後初戦の22年4月の全日本選抜体重別選手権。以前のような燃え上がる気持ちが湧かないことに危機感を覚えた。決勝前。会場の外に出て深呼吸し、言い聞かせた。「今の状態ではダメだ」。パリへ、スイッチが入った瞬間だった。

 午前と午後で別の場所に出稽古に向かい、時には夜にトレーニングを行う3部練習を始めた。減量も食事も細心の注意を払い、調整の質も突き詰めた。約2週間前には“模擬試合”を行った。東京五輪王者の高藤直寿らに意見を求め、階級が上で苦手なタイプの3人を選んだ。道場に入る時間から全て五輪を想定し、最後の仕上げを行った。

 連覇を兄妹で、それも当たり前のように期待される苦しさは想像以上だった。「プレッシャーも2倍感じていた」。3年間無敗。勝ち続け、どれだけ練習しても不安は消えなかった。そんな時に支えになったのは妹の存在だった。「同じような状況で努力している姿は刺激になった。自分も頑張らなきゃいけないと思えた」と踏ん張れた。

 だからこそ、妹の悔しさを思うと胸が痛んだ。「練習やトレーニングは別でも思いは同じ。一緒に歩んできた3年間だった。こんなにも妹の負けが悔しく、つらいものなんだな」。詩はこの敗戦を糧に、さらに強くなると信じている。「また新しい目標ができた。もう一度同じ舞台に立って、ロスで一緒に金メダルを取りたい」と決意した。

 もし1人で柔道をやっていたとしたら。五輪前に2人に聞いた時、詩は「兄がいたから『一二三ができたら詩もできる』と思えた。1人でやっていたら途中で諦めていたと思う」と答え、一二三も「ここまでの結果は出せていなかった」と断言した。パリでは明暗が分かれたが、高め合う2人の関係性はこれからも変わらない。

 ◆阿部 一二三(あべ・ひふみ)1997年8月9日、神戸市生まれ。26歳。6歳で柔道を始め、神港学園高時代の2014年に66キロ級で男子史上最年少17歳2か月で講道館杯V。日体大を経て20年4月からパーク24所属。世界選手権は17、18年と22、23年に優勝。得意技は背負い投げ。168センチ。

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