「負けが僕たちを強くした」バレー・高橋藍、気持ち切り替えパリ五輪初勝利 チームを変えたのは「本能」

第３セット、味方の得点に両手を広げて喜ぶ高橋藍（カメラ・小林　泰斗）

◆パリ五輪　第６日　▽バレーボール男子１次リーグ　日本３―１アルゼンチン（３１日・パリ南アリーナ）

　３１日の男子１次リーグ（Ｌ）Ｃ組の第２戦で、日本は、２１年東京五輪銅メダルのアルゼンチンを３―１で下し、今大会初勝利を飾った。１勝１敗でＣ組２位に浮上し、２大会連続の８強入りに王手をかけた。１９７２年ミュンヘン大会以来となる５２年ぶりの金メダルへ、２日の１次Ｌ最終戦（日本時間３日未明）は五輪３度制覇で２戦全勝の米国と対戦。決勝トーナメント進出（同５日か６日）につなげる一戦で、主軸の高橋藍（らん、２２）＝サントリー大阪＝は「本能でやっていこう」を胸に奮闘した。

　９４７４人で埋まった会場で「ニッポン」コールが鳴りやまない。２―１で迎えた第４セット（Ｓ）。藍がレフトから痛烈なスパイクを決めてマッチポイントを握ると、最後は途中出場の宮浦が強打をたたき込み、粘るアルゼンチンをねじ伏せた。五輪が開幕して６日目にようやくつかんだ今大会初勝利だ。互いに抱擁を交わすと、安どの笑みがこぼれた。藍は「ここに懸けていた思いがあった。気持ちを切らさずできて、きょう１勝できてすごく自信になった」と白い歯をキラリと光らせた。

　第１Ｓでいきなりほえた。セッター・のワンハンドトスに藍がクロスに初得点。「ブラボー！」と雄たけび。セットポイントからエース。両手を広げ、満員の会場を感じた。昨秋の五輪予選でもエジプトに敗れてから奮起した日本。その教訓はあった。２７日のドイツとの初戦で２―３で負けた後、「悔しかった」とセッターの関田と話し込んだ。結論は「自分を信じて本能でやっていこう。楽しもう」。悩んでも仕方ないとばかりに振り切った。

　第２Ｓは１６―１８から石川が、今大会で初めてスパイクを打つふりをし、トスを上げるトリッキーなフェイクセットを出し、得点につなげた。「フゥ～」と大歓声。１点へ執着する粘りを見せ、最大７点差をひっくり返した。「負けが僕たちを強くした。きょうは楽しめた」と胸を張った。

　世界ランクは過去最高の２位で大会を迎え、ドイツ戦は大きな期待を集めたが、痛恨の黒星。１次Ｌ突破が確実なＣ組２位以上へ暗雲が立ち込めたが、下を向かなかった。翌２８日に全員で集まり、顔を見合わせた。

　「負けたことに引きずるのではなく、アルゼンチン戦に気持ちは向いていた」と藍。その日はオフに充て、山本や大塚らとお土産を買いに出かけ「家族にＴシャツやキーホルダーを大量に買った」と切り替え、アルゼンチン戦へ気持ちを作れた。元日本代表で日本協会の川合俊一会長（６１）からゲキもあった。２８日に訪れ「チームなのに一人になっている」と助言を胸に一つになれた。

　パリ大会初勝利は、２大会連続の８強を近づけるだけでなく自信をつけた。次戦は３度の五輪金を誇る米国との大一番。勝てば、第一関門の１次Ｌ突破が決まる。「もっともっと（本能を）出さないと。面白くて強い日本のバレーを出せる」と藍。５２年ぶりの五輪金メダルへ、ここからが勝負だ。（宮下　京香）