銀メダル・村尾三四郎の高校時代は異例の育成法 元五輪代表の高松正裕氏、チームより「村尾が一番強くなれるよう…」
スポーツ報知 / 2024年8月1日 17時58分
◆パリ五輪 第6日 ▽柔道(31日、シャンドマルス・アリーナ)
柔道男子90キロ級で初出場の村尾三四郎(23)=JESグループ=が銀メダルを獲得した。桐蔭学園高時代に監督として指導した2004年アテネ大会73キロ級代表の高松正裕氏(42)が、“村尾シフト”で鍛えた高校時代を振り返った。
高松氏は中3だった村尾にスカウトで声をかけた当時から、東京五輪への出場を明確な目標に掲げてきた。本人には伝えなかったが、入学してからの3年間は「チームとして、村尾が一番強くなれるように練習していこうと。団体戦で勝つための練習は一切なくて、村尾を中心に、とにかく個人を伸ばしていくという考え方で練習を組んでいた」と明かした。
その一つが、インターバルトレーニングだ。村尾は中学時代、ほとんどの試合が1分以内で決着させていたが、体力が上がる高校では同じように短い時間で仕留めきることは難しい。「1分を過ぎるとパフォーマンスがガンと落ちる。筋持久力がなかったので、そこが一番の課題だった」。そのため、200メートルを1分の休憩を挟んで10本ダッシュするメニューを導入し、全体で取り組んだ。
インターバルトレーニングは3年間続けたが、それ以外の時間も村尾に取り組ませたい練習を優先的に行った。個を伸ばす方針は結果的に、チーム全体の底上げにもつながり、2年時には団体戦での高校3冠(高校選手権、金鷲旗、全国総体)を達成した。
先を見据えて、戦い方も見直した。中学までは肩車や逆の一本背負いなど、変則的な技も含めて幅広く出していたが「結果的にかかっていても、将来的には生きてこない技」と封じた。大外刈りを軸に据え、稽古ではその技で投げきることを徹底させた。「柱となる技を3年間ひたすらやり続けた。相手が分かっていても投げられないと通用しない。最初にかからなかったら次は小外刈りから大外刈りだったり、いろいろなパターンを反復して、技にキレが出てきた」と振り返った。
東京五輪代表入りに向けて選考の流れやポイントを説明し、具体的なプランも練った。アテネ五輪に出場した自身の経験も伝えた。高校2年の12月にフランスで行われた国際大会から帰国した翌日。「全日本に入ると試合が続くし、どんなに調子が悪くても試合に出なくちゃいけなくなる。そういった状況の中で今、自分が出せる力を出す練習だよ」と時差ぼけが残る中で、国内の大会に出場させたこともある。
東京五輪には届かなかったが、世界で戦うことを具体的にイメージした取り組みは、パリへとつながった。(林 直史)
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