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柔道混合団体、執念感じた決勝のオーダー 相手より下の階級3人も起用 攻めてつかんだ銀メダル…担当記者が見た

スポーツ報知 / 2024年8月4日 22時19分

◆パリ五輪 第9日 ▽柔道(3日、シャンドマルス・アリーナ)

 3日の混合団体決勝で日本は地元フランスに3―4で敗れて初優勝を逃し、2大会連続の2位だった。角田夏実(31)=SBC湘南美容クリニック=の白星などで3―1と先行したが、阿部一二三(26)=パーク24=、斉藤立(22)=JESグループ=らが敗戦。3―3からの代表戦で斉藤がテディ・リネール(35)に屈した。21年東京五輪決勝の雪辱は果たせなかったが、攻めの起用でつかんだ銀メダルの価値を柔道担当の林直史記者が「見た」。

 心を揺さぶる試合だった。3―3からスロット形式による抽選で階級が選ばれた代表戦。斉藤はリネールとの再戦に敗れ、汗まみれのまま畳に突っ伏して号泣した。王手をかけた3―1から1階級上の銀メダリストを追い詰め、惜敗した一二三も泣いていた。銀メダルでも、取材エリアで謝罪する姿に胸が痛んだ。

 斉藤「本戦で負けてしまって、代表戦でもう一度チャンスをもらえた。挽回するチャンスだと思ったけど、同じようにやられてしまった。今日勝たないと、いつ勝つんだっていう場面で勝てなくて、顔向けできない」

 一二三「日本の皆さんに本当にすいませんという気持ち。みんながつないでくれたいいバトンをものにできず、申し訳ない気持ちでいっぱい」

 決勝のオーダーを見た瞬間、日本の執念を感じた。2―4で敗れた21年東京五輪決勝で印象的だった場面がある。フランスは1番手の70キロ女王・新井千鶴に対し、63キロ級を制したアグベニェヌをぶつけてきた。柔道で階級差は当然大きいが、体格差をはね返した相手の気迫の前に初戦を落とし、流れが傾いた。

 今回、日本は女子78キロ超級の素根輝を負傷で欠いていた。厳しい台所事情で首脳陣は勝負に出た。6人のうち、相手より下の階級の選手を異例とも言える3人起用。高山莉加は見上げるほどの長身のディコから大内刈りで技ありを奪って金星を挙げ、48キロ級の角田夏実は2階級上の銅メダリスト・シシケに鮮やかなともえ投げで一本勝ち。一二三も約7キロ差を感じさせず攻め続けた。女子の増地克之監督(53)は「フランスは前回王者。まともに戦ったのでは勝てない。相手が嫌がることを考えた」と明かす。

 魂も込めた。リネールと戦う90キロ超級。100キロ級のウルフ・アロンを推す声もあったが、男子の鈴木桂治監督(44)は「斉藤立を信じさせてくれ」と懸けた。メダルを逃した個人戦を引きずる22歳を呼び出し、「お前はよく死ぬ気でって言葉を使うけど、今がその時じゃないのか。意地を出せ。死ぬ気でやるんだ。(父の)斉藤(仁)先生が見ていたらそう言っていたと思う」とカツを入れた。結果は2敗とはなったが、必死に立ち向かった。

 今大会、開催国フランスは個人戦で金1個に終わったが、金以外のメダルを獲得した選手たちは笑顔だった。一方で、女子57キロ級の3位決定戦の後、舟久保遥香が涙する横で、同じ銅メダルのシシケが跳びはねるように喜んでいた。「金メダルを取れなくて申し訳ない」、「情けない」。2度の五輪を取材し、日本柔道の誇りと重圧を背負う選手たちから聞いてきた言葉だ。チャレンジャーとして戦い、死力を尽くしてつかんだこの銀メダル。胸を張ってほしい。(林 直史)

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