平野美宇と張本智和、敗れた準々決勝に成長を実感 団体戦に期待…石川佳純さん特別コラム「エースの思い」
スポーツ報知 / 2024年8月5日 8時0分
スポーツ報知特別コラムニストで卓球女子3大会連続メダリストの石川佳純さん(31)が初めて外から見て感じた五輪を語る「エースの思い」。第3回のテーマは女子で早田ひな(24)が銅メダルを獲得した卓球のシングルス。平野美宇(24)と男子の張本智和(21)が激闘の末に敗れた準々決勝を観戦し、メダルに王手をかける戦いの難しさと21年東京五輪からの2人の成長を実感した。
準々決勝というのは戦い方が難しい試合です。準決勝まで勝ち上がってメダルマッチに進みたいという気持ちもありながら、強い相手と戦う。そこの気持ちの作り方は私も現役時代、すごく難しさを感じていました。
平野選手も最初は少し硬さが見えました。五輪で0―3になればすごく焦りますし、挽回するには我慢や忍耐、駆け引きが必要です。その中で1点ずつ勝ち取って、3―3まで追い付いた。その粘り強い姿勢、そして試合後のインタビューでも平野選手の成長を感じました。試合に負けた後はなかなか言葉がすぐには出てきませんが、悔しい思いはあっても、自分のプレーの分析や支えてくれた周りへの感謝。言葉に詰まりながらも、しっかりと自分の思いを伝えてくれたなと感じました。
今回は初めてのシングルス代表でしたが、卓球は約2年をかけて五輪の選考レースを戦い抜いて、そこでシングルスの2枠を勝ち取っていきます、周りの支えも借りつつ、最後は自分がコートに立って勝つしかない。その厳しい枠を今回勝ち取った平野選手。準々決勝で負けてはしまいましたが、最初の3試合はすごくいい表情で、自分に打ち勝っていく姿勢が見えました。東京五輪からの成長を見られたことは私もうれしかったです。
張本選手は本当に惜しい試合でした。中国選手を相手に2―0とリードしていて、2―2に盛り返されたら、そこからまた盛り返していくことはかなり難しいです。でも今回は出足からサーブで先手を取って、台上のボールやバック対バックでも優位に進めることができていました。盛り返されてもまた盛り返して、最後にスーパープレーを決められて挽回されたという展開。あと一歩でしたが、素晴らしい試合でした。
試合後に張本選手にもインタビューをさせてもらいました。悔しいという気持ちが一番だと思いますが、その中でも自分の持っている力に改めて自信を持てる一戦にもなったと思います。東京五輪の敗戦から3年間。いろんなつらい思いや挫折に向き合い、一歩一歩乗り越えてきた彼の成長を感じました。ここで落ち込んでも、自分のプレーに自信をなくすことはありません。団体戦がまだあります。エースとして笑顔で帰れるかは団体戦のプレーに懸かってきます。男女ともに団体戦も期待したいです。
(卓球女子団体12年ロンドン銀、16年リオ銅、21年東京五輪銀メダリスト・石川 佳純)
◆平野と張本智のシングルス準々決勝 1日に平野は第4シードの申裕斌(シン・ユビン)=韓国=と対戦。先に3ゲーム(G)を連取され、3―3と追い上げたが、フルゲームで敗れた。張本智は第2シードで世界王者の樊振東(中国)から2ゲームを連取するなど3―2と追い詰め、第6Gは7―11。3―3で迎えた最終Gを大接戦の末に7―11で落とした。
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