岡慎之助、日本男子52年ぶりの3冠 体操を通じてなし遂げたいことは2つのこと…パリ五輪
スポーツ報知 / 2024年8月6日 5時0分
◆パリ五輪 第11日 ▽体操男子(5日、ベルシー・アリーナ)
男子の種目別決勝は5日に行われ、団体&個人総合2冠で初出場の岡慎之助(20)=徳洲会=が鉄棒で14・533点をマークし、金メダルを獲得。1972年ミュンヘン五輪の加藤沢男以来、日本男子52年ぶりの3冠を達成した。平行棒でも15・300点で銅メダルをつかんだ。これは夏冬合わせて日本勢通算600個目のメダルとなった。1大会でメダル4個獲得は、84年ロサンゼルス五輪体操の具志堅幸司以来40年ぶりで11人目の快挙となった。
自分でも現実が信じられなかった。「奇跡ですね。最高です」。岡より高いDスコア(難度点)の選手たちに次々とミスが出て、思わぬ形で舞い込んだ鉄棒金メダル。日本男子52年ぶりの3冠を達成し、「想定外」と驚きっぱなし。だが、10日間の競技日程で全18演技、ミスなくつないだ先に、最高のご褒美が待っていた。“お家芸”の歴史に「岡慎之助」の名を刻み「記憶に残る大会になった」と誇った。
一級品の美しさ、質の高さに「フェラーリ」と称される逸材は、今大会を締めくくる鉄棒でもこん身の演技。離れ技を次々決め、E難度の降り技「伸身新月面」までピタリ。2位の選手と同点も、出来栄えを示すEスコアで上回った。武器の「美しさ」が勝敗を分け「評価されている」。得意の平行棒でも、ライバルたちが高得点を並べる中、最終演技者として登場し、強心臓ぶりを発揮。15点台に乗せ「自分らしい演技」と納得の銅メダルをつかんだ。
体操ニッポンに新たな歴史を刻んだ“日本の宝”は、異例とも言える15歳で名門・徳洲会の門をたたいた。坊主頭で139センチの少年は当初、コーチらが練習で「どうだった?」と聞いても答えられずもじもじ。日々、10歳近く年上の選手と切磋琢磨(せっさたくま)し、少しずつ体操も心も成長した。
3年前はどん底。手首痛で21年東京五輪の選考会を兼ねた全日本は60位で敗退。「気持ちで負けた」と一人で泣いた。部屋の鍵を閉めることもできないほど激痛。半年以上、体操ができずに「練習できないのが一番きつかった」。一方で、画面の向こうでは2歳上の橋本大輝が最年少で個人総合王者になり鉄棒も金。「橋本選手を超えたい」と燃えた。22年全日本で右膝前十字じん帯を完全断裂しても「パリがある」。困難にぶつかっても決して諦めなかった。
体操を通じ、なし遂げたいことは五輪の金メダルともう一つ。「自分の名前を覚えてほしい」。五輪はそのための場所。野球経験者の父・泰正さんは、プロ野球・巨人の阿部慎之助監督と同じ名前を息子につけた。当初は野球をやらせたく、キャッチボールなどしたが、別の道へ。岡は自ら選んだ競技で、世界へと羽ばたいた。これからは追われる立場。「(内村)航平さんのように、常に勝ち続けられる選手になりたい」。158センチ、小さな新王者は花の都で主役になった。(小林 玲花)
◆岡 慎之助(おか・しんのすけ)2003年10月31日、岡山市生まれ。20歳。4歳から競技を始め、19年5月、神奈川・星槎国際横浜高1年で徳洲会入り。18年アジアジュニア個人総合銅、19年世界ジュニアで団体&個人総合2冠、種目別はあん馬銀、平行棒銅。24年NHK杯優勝。得意種目はつり輪、平行棒。158センチ、58キロ。
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