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興梠慎三という男「男気」「桁違いのセンス」「言葉の重み」 38歳で引退表明…浦和選手が語るエース

スポーツ報知 / 2024年8月7日 17時55分

浦和・興梠慎三

 浦和の元日本代表FW興梠慎三(38)が7月31日、今季限りで現役引退することを表明し、20年間のプロ生活にピリオドを打つ決断をした。同い年のGK西川周作は「また1人、浦和レッズを支えた偉大な選手がやめてしまうのは寂しい」。一方、FW中島翔哉は「あと5年はできる、と本人に話した」と笑みを見せた。「男気」「桁違いのセンス」「言葉の重み」―。チームメートの言葉からエースの人間性や偉大さを紐解いていく。(星野 浩司)

 「男気」

 FW前田直輝は31日のニューカッスル戦後、興梠の魅力を「普段は男気があって、いい意味で嫌なものは嫌だと言える性格。すごくかっこいいなと思う」と声を弾ませた。興梠は会見で背番号30を背負ってほしい選手に「一番かわいがっている」と前田を指名。「即答ですね。そんな光栄なことはないと(本人に)言った。ああいう場で僕の名前を出してくれて、その発言一つも男気ですね。すごい照れ屋というか、ストレートなことは普段あまり言ってくれないけど、そういうところで期待してると言ってくれるのはうれしい」と笑みを浮かべた。

 今季、浦和に加入する前はほとんど面識はなく「一番最初に会った時は超・低姿勢に入りました。僕も人見知りなので…。最初は『なにしてんの? 飲みいこうよ』と(誘ってくれた)」と前田。毎試合前には「期待してるから、点を取ってこいよ」、練習時は「これができるからこうした方がいいよ」。かけられた言葉の1つ1つが前田の胸に刻まれている。

 MF関根貴大は長年、浦和でともにプレーしてきた興梠を「男気のかたまり」と話した。例に挙げたのは、キャンプ時のバーベキュー。「慎三くんが『バーベキューしよう!』ってお肉とか全部支払いをしてくれて、絶対に後輩には支払わせない。(17年に)ACLで優勝した時は酔っ払って吉野家でお客さん全員におごったとか、そういうことをできる人は意外といない。後輩にも慕われる偉大な先輩です」とかみしめる。

 自身が19年夏に欧州から浦和への復帰を考えていた時、興梠から受けた「帰ってこいよ」という一言にも決断を後押しされたという。関根のパスから興梠が決め、何度も観客を沸かせてきた。「慎三くんじゃなければアシストも半分くらい減っているかもしれない。一緒にプレーして、自分が良さを出せているのは慎三くんのポストプレーやいろんなプレーがあったから。数字以上のものがある」

 2人だけの秘話を求めると、昨年11月のルヴァン杯決勝・福岡戦(1●2)の前夜について話し始めた。「メンバー20人で国立に行って、外れるのは僕と慎三くんって分かってた。気を使ってごはんに誘ってくれて、鉄板焼きを食べながら『難しいね。決勝のメンバーに入りたかったけど、入れないね』と話したりした」。関根はケガから復帰直後で、万全ではないとしてベンチを外れた。「自分がヘコんでる時に声をかけてくれる。そこまで気を使ってもらっていいんすか…?ってね」と感謝した。

 「桁違いのセンス」

 MF小泉佳穂は数秒考えた後、興梠のすごさを語り始めた。「慎三さんは、まずセンスが桁違いでレベルが違う。センスがズバ抜けてる」。21年に浦和加入後、小泉がパスの出し手、興梠が受け手となる場面が多い。「気づいたらパスを出させられている感じ。動き出しが見えちゃう。自分が出せる瞬間に動き出すから、つい出しちゃう。走り出すタイミングを1人1人アジャストするのがすごく上手。だからみんな出しやすい」

 16年リオ五輪で興梠と共闘したFW中島翔哉は、引退を知る前から本人に「あと5年くらいできるんじゃないか」と告げていたという。「ゴール前に入って行くタイミング、スピード、嗅覚は本当にすごいものがある。一緒にやってて楽しい選手の1人。残りの時間、今季が終わるまで大切にやっていきたい」。中島の独創的なパスからの興梠のゴールは、まだまだ見られそうだ。

 FW松尾佑介は浦和ユース時代、埼玉スタジアムで見た興梠のプレーに「1人だけ異次元でした。細かい動き、タッチとか唯一無二ですね」と振り返る。本職のウィングのほか、1トップでのプレーも増え、興梠から学ぶことも少なくない。「シンプルに学びたい気持ちはあるけど、あの人がスペシャルなのはみんな分かってる。マネできることはマネしたいけど、感覚とか生まれ持ったものは大きい。あの人のプレーを練習中も僕たちは楽しめる。1選手として喜ばしい」。

 「言葉の重み」

 西川は「慎三の言葉には重みがある。多くは言わないけど、ここぞの時に『集中しよう!』とかロッカーで言ってくれる。言葉のチョイス、タイミングは若手にとって非常に大きい存在になっている」。特に強く感じたのは、昨年のACL決勝第1戦の敵地・アルヒラル戦(1△1)だった。「優勝した17年の経験があって、昨年アウェーの時に慎三が『1―1はOKだ。ホームでは違う雰囲気でできる』と強く伝えてくれて、非常に助かった」。興梠は第1戦で1得点、ホームの第2戦は1―0の勝利に貢献し、3度目のアジアの頂点をつかんだ。

 ヘグモ監督は興梠の性格を「常にユーモアがあるが、ピッチに立った時は非常にシャープ」。小泉は「人としておおらかで、大きい人。いつも余裕がある。(酒井)宏樹くんもそうだったけど、いつも自然体で人としての大きさを感じた」と話した。後輩がうまくいかずに悩んでいる時、興梠の何げない一言が士気を上げたというエピソードをよく聞く。小泉は「説教じみたことは言わない。自然体な感じはすごい。人としてああなりたいと思わせてくれる先輩です」と言った。

 30日のミーティング。引退を報告した後に興梠が紡いだ言葉は、チーム全員の胸に刺さった。「ACLに出る意味は、本当に成長のために大きな大会になる。ホーム&アウェーの経験がチームを強くする。残り14連勝しようと伝えてくれた」と西川は明かした。「14連勝する気持ちで戦っていきたい」。7日の柏戦(埼玉)から再開するリーグ戦。興梠とともに有終の美を飾るための戦いが始まる。

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